小林製薬前会長ら取締役7人を提訴へ 株主のオアシス、約110億円の損害賠償請求訴訟を準備
香港系投資ファンドのオアシス・マネジメントは28日、㈱小林製薬(大阪市中央区)が販売した機能性表示食品のサプリメント『紅麹コレステヘルプ』(=写真)に生じた健康被害問題を巡り、同社創業家の小林一雅前会長と章浩前社長ら被害発覚当時の取締役7人に対して、約110億円の損害賠償を求める株主代表訴訟の提起準備を進めていると発表した。オアシスは、小林製薬の株式を現時点で10.1%保有する大株主。
問題発覚当時の取締役を追求、善管注意義務違反を主張
オアシスが訴訟対象として示している当時の取締役は、一雅前会長、章浩前社長、山根聡専務聡取締役(現社長)のほか4人の社外取締役を含む7人。
この発表でオアシスは、一雅前会長ら当時の取締役に善管注意義務違反があったと主張。品質管理体制の構築、それを機能させる義務をはじめ、消費者の生命・身体・健康に対する危害の発生および拡大を防止する義務に対する違反の他、社外取締役による監督機能の不全を指摘している。
具体的には、品質管理体制について、人的管理体制及び設備面における管理体制の不備を指摘。危害発生・拡大の防止については、関係法令等の「不合理な解釈」による健康被害情報の報告及び公表の遅れなどを指摘している。
オアシスの創業者で最高投資責任者のセス・フィッシャー氏は、当時の取締役は「紅麹事件の被害者及び小林製薬に対して甚大な被害を与えた」と指摘しつつ、株主として「小林製薬の取締役らの善管注意義務違反に対する責任の追及を通して、再発防止の徹底を促す」などとするコメントを出した。
オアシスは昨年11月、小林製薬の監査役に対して、一雅前会長ら当時の経営陣に約110億円の損害賠償を求める訴訟の提起を要求していた。小林製薬は、健康被害問題を巡って、少なくとも24年1~9月期に100億円超の特別損失を計上している。
一方、監査役4人は今月20日までに、「取締役としての善管注意義務違反を含む法令違反は認められない」などとして提訴しないと判断。それに対してオアシスは今回の発表で、監査役らが同社に示した不提訴理由通知書の内容を引き合いに出し、「極めて重大な事案であるにもかかわらず、経営判断を根拠として、(当時社長の)の小林章浩氏らに責任はないとする監査役らの判断は、株主の立場からしても、また常識的に考えても、到底承服できるものではない」と強い不満を示した。
オアシスはまた、小林製薬に対して、オアシスが推薦する社外取締役の選任の他、健康被害問題を再調査するための弁護士の選任を求める株主提案も行っている。
それに対して小林製薬の取締役会は、いずれも反対することを決議。
ただ、オアシスの提案を諮る臨時株式総会を来月19日に開く。同社はまた、今月21日、章浩前社長の辞任に伴い昨年8月に専務から社長に昇格したばかりの山根氏の他、社外取締役3人の退任予定を発表している。山根氏の後任に豊田賀一執行役員(国際事業本部長)を昇格させる他、取締役会長として、京セラ出身で日本航空の経営再建に関わった大田嘉仁氏を当てるなどして経営刷新する考え。
【石川太郎】
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