小林製薬、健康被害情報の報告遅れまた 武見厚労相「もう小林製薬だけに任せられない」
小林製薬㈱(大阪市中央区、小林章浩社長)が健康被害情報の報告遅延問題をまた起こした。武見敬三厚生労働省は6月28日午後2時半頃に行った会見で、「もう小林製薬だけに任せておくわけにはいかない」と憤った。健康食品業界にも驚き、落胆、憤慨が広がる。
6月28日午後3時ごろ、小林製薬が3月29日までに公表していた5人の死亡疑い事例とは別に76人の死亡疑い事例が生じていることが報道された。ほぼ同じ時刻、同社もニュースリリースを出し、報道内容を追認する発表を行った。同社の発表によれば、死亡が関係する問い合わせがこれまでに170件寄せられているという(公表済み5件除く)。ただし、170件のうち91件は、同社の紅麹関連製品を摂取していなかったことが分かっているという。
新たな死亡疑い事例を小林製薬が把握していたことは、厚労省が同社に問い合わせたことで発覚した。厚労省によると、6月13日、死亡者数の確認を同社に対して行ったところ、翌14日、公表中5人の他にも調査中の事例のあることが伝えられた。そのため、より詳細な報告を同社に求めたところ、「(同)27日の朝まで確定的な数字の報告はなかった」(武見大臣)。
厚労省は、同27日の同社からの報告で170事例を把握。そして、「喫食をしていないことが確認された91事例を除く79事例について、製品の使用期間や使用量、医療機関受診の有無、主な症状等について分類して翌28日までに報告するよう指示」(同)していたという。
厚労省は、同社に対し、新たな死亡疑い76事例に関する調査計画を同29日までに報告するよう指示。また、調査のうち医療機関への照会やその後の分析については、「厚生労働省が詳細に指示を出し、厚生労働省において進捗管理をしっかりと行う」(同)としている。
業界関係者「速やかに報告しない態度、明らかに問題」
小林製薬が販売した機能性表示食品のサプリメント『紅麹コレステヘルプ』の摂取で健康被害が生じている疑いのあることの報告を同社が最初に医師から受けたのは1月中旬。しかし、国への報告は3月下旬と、約2カ月のブランクが生じた。この報告遅滞によって、食い止めることも出来た可能性のある健康被害が拡大したと専門家らが指摘している。
新たな死亡疑い事例をめぐる報道に、ある健康食品業界関係者は頭を抱える。「(機能性表示食品)制度の見直しが進められている中で(新たな死亡疑い事例の発覚は)頭が痛すぎる。なぜもっと早く報告しなかったのか」と嘆き、憤る。別の業界関係者は、「中にはクレーマーも存在するのかも知れないが、速やかに報告しない小林製薬の態度に明らかに問題がある」と指摘。「驚きと落胆と憤慨の気持ちが同時に押し寄せている」と話した。
【石川太郎】
関連資料:6月28日武見厚労相会見内容の詳細
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