定期購入・SNSのトラブル過去最多に 2023年版「消費者白書」を閣議決定
政府は13日、2023年版「消費者白書」を閣議決定した。2022年の消費生活相談件数は87万件で前年より1万1,000件増加した。定期購入トラブルに関する相談は7万5,000件超、SNS関連の相談件数は6万件を超え、共に過去最多となった。
商品・サービス別上位件数で見ると、全体では「商品一般」、「不動産貸借」、「工事・建築」に続き、「基礎化粧品」が4位、「エステティックサービス」が6位で、美容関連の相談が増加している。「他の健康食品」は2万724件で、商品・サービス別上位件数で5位となった。
65歳以上では、基礎化粧品が3位、他の健康食品は4位だった。
ここでいう「他の健康食品」とは、国民生活センターがこれまでに分類している「高麗人参」、「クロレラ」、「ローヤルゼリー」、「プルーン」、「プロテイン」、「カルシウム剤」、「酵母食品」、「酵素食品」、「ビタミン剤」、「プロポリス」、「にんにく食品」、「きのこ粉末」、「深海ザメエキス」、「海藻食品」、「キチンキトサン」などを除いた食品を指す。
危害・危険情報、PIO-NETに1万3,726件
22年度にPIO-NETに収集された消費生活相談情報のうち、危害・危険情報は1万3,726件だった。このうち、危害情報は1万1,850件で21年度の1万1,295件を上回ったが、危険情報は1,876件で21年度の1,941件から減少した。
危害情報を内容別にみると、22年度は「皮膚障害」が最も多く、次いで「消化器障害」の順で、合わせて全体の5割を超えた。
主な相談内容は、「皮膚障害」では、「化粧品等によりかゆみや赤み、湿疹が出た」、「健康食品を食べたらじんま疹や湿疹が出た」など。「消化器障害」では、「健康食品を食べたら吐き気や下痢等の体調不良になった」、「飲食店で食事をした後、購入した食品や配達された食事をとった後に腹痛や下痢になった」などがある。
定期購入トラブル、化粧品・健康食品が上位占める
通信販売における「定期購入」に関する消費生活相談件数が7万5,478件と、過去最多となった。年齢層別にみると、30歳代以上の各年齢層で相談件数が増加しており、特に50歳代以上で大きく増加。また、「定期購入」に関する相談に占める65歳以上の割合は33.3%に上昇。
商品・サービス別で見ると、化粧品や健康食品が上位を占めており、特に化粧品の相談件数が多くなった。具体的な事例としては、「SNS広告から1回限りのお試しで500円のシャンプーを購入したが、2回目が届き定期購入と知った。解約したいが電話がつながらない」など、消費者が定期購入であることを認識しないまま商品を注文しているケースがみられ、解約したくても事業者と連絡が取れないトラブルが発生。
また、「いつでも解約可能、定期縛りなしという広告を見てダイエットスムージーを購入したが、解約しようとしたら6回購入が条件だと言われた」など、解約をめぐるトラブルが発生している。
高齢者・若年例層ともに健康食品の相談件数が上位に
今回、高齢者の消費と社会貢献の取組に着目し、「高齢者の消費と消費者市民社会の実現に向けた取組」を特集テーマとして取り上げた。高齢者を取り巻く社会環境の変化を踏まえ、近年の高齢者の特徴的な意識について分析。現在の行政の取組を踏まえて、高齢者の「消費者被害の防止」に向けた提案を行った。
高齢者の相談件数は1年間で25万件程度、全体の約3割を占める。商品・サービス別では、高齢者全体で「健康食品」が上位に。65歳~74歳の女性では「化粧品」が上位という結果になった。
若年層(15歳~29歳まで)の消費生活相談件数を商品・サービス別にみると、男女共に美容やもうけ話に関する相談、「出会い系サイト・アプリ」に関する相談が上位に見られた。15歳~19歳までは、男女共に、「脱毛剤」や「他の健康食品」などの美容に関する相談が上位に見られ、その中には、定期購入に関する相談が含まれていた。
河野大臣「高齢者の見守り、消費者教育に取り組む」
閣議後の記者会見で河野太郎消費者担当大臣は、「高齢になるにつれて、トラブル時に事業者への相談を控える傾向がある。消費者庁としては、高齢者の見守りを含め、消費者教育に取り組む」と発言した。
また今回、消費者意識基本調査(2022年度)において初めてダーク・パターンに対する消費者の経験を調査した結果について、河野大臣は「これらの分析結果を踏まえ、しっかりと消費者行政に取り組んでいく」とし、具体的には、「現在、経済協力開発機構(OECD)が進めているダーク・パターンの実証実験に、日本も副議長国として参画する。また、景表法など現行の法律で規制できるものもある。具体的な事案がないかどうか点検し、対応していく」と話した。
購入をあおる表示に困惑する高齢者
「消費者意識基本調査」では、「インターネットでの商品・サービスの予約や購入」をしている人に、「これまでに実際に目にしたり、経験したもの」を聞いた上で、そのうち「実際に商品・サービスの予約や購入、会員登録等につながったり、困ったりしたもの」について聞いている。
高齢者、全体共に、実際に購入につながったり困ったりしたものは「特にない」が35%以上と最も高く、「解約までの手続やページが分かりにくい」が2番目だった。
65歳~74歳までと75歳以上を比較すると、75歳以上が、より高い割合で「勝手に不要な商品やオプションがセットになっていた」ことを経験。「虚偽やステルスマーケティングと思われる口コミや評価」、「『〇人が閲覧中』や『〇人が購入済み』など、他人の動向の表示」、「『残りわずか』など、売り切れ間近のような表示」に困惑するケースが多いという結果となった。
高齢者のインターネット通販の利用が増えていく中で、購入をあおる広告やユーザーインターフェース、解約方法を分かりにくくする仕組みなどによって、実際に購入したり、困ったりしている高齢者が一定割合いることが明らかになっている。
【藤田 勇一】
※ダーク・パターンとは
ウェブサイトの表記やデザインを利用し、ユーザーにとって不利な決定に誘導する手法のこと。「勝手に不要な商品やオプションに申し込まされる」、「解約するメニューが見当たらない」、「定額購入でありながら、定期購入ではないと誤認させる表示」などの消費者を欺く行為。
(冒頭の画像:消費者庁の発表資料より加工転載)