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完全施行間近「消費者裁判手続特例法」 活発な消費者団体の活動、最新の動きを見る

 「消費者契約法及び消費者の財産的被害等の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律」は、すでに6月1日に先行施行されている消費者契約法の不当条項や不当勧誘に関する改正に加え、消費者の財産的被害等の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律(以下、特例法)における消費者団体向けのガイドラインの整備や政・府令などの準備を終えた後に、10月1日から完全施行されることになっている。

2016年10月施行から一定の成果

 特例法は、企業・団体を相手に個人で取り戻すことが難しい消費者被害について、内閣総理大臣が認定する特定適格消費者団体が間に入り、法的に被害の回復を行う制度として2016年10月1日に施行されてから一定の成果を上げてきた。
 例えば、東京医科大学入試における共通義務確認訴訟では入学検定料などの損害賠償を求めた被害回復訴訟では、和解後に返還が実現。同様に、順天堂大学医学部入試における不当な得点調整に関する損害賠償請求においても返還義務を認める判決が確定している。
 提訴事案だけでなく申入れ事案についても、痩身効果を標ぼうする機能性表示食品に対する措置命令を受けるかたちで、これらの商品を広告宣伝した15社に対し、その広告を不実告知とする返金を申入れ、結果として1万6,000人を超える購入者への返金が実現している。

特例法の限界も浮上

 しかし、このような成果を上げる一方、さまざまな課題も指摘されてきた。東京医科大学入試における被害回復訴訟では、入学検定料などの返還などの他に、慰謝料請求も想定されたが、制度上、その対象範囲に限界があるとのことで断念せざるを得なかった。
 また、販売預託商法などの悪質な事件では、黒幕的な人物に資産が流出していることが分かっていても、現行法では対象消費者と被告の間に契約関係があることを原則としているため、事業者の責任しか問うことができなかった。
 その他、消費者被害をめぐる端緒情報の入手や手続きの煩雑性、消費者団体の体制および財政面における過重なコスト負担の問題など、消費者救済においては今も多くの問題を抱えている。

検討会開催、改正法案を国会に提出

 これらの問題を受けて、消費者庁は2021年3月から9月にかけて「消費者裁判手続特例法等に関する検討会」(以下、検討会)を開催し、最終報告書を取りまとめた。そして報告書の内容を踏まえた特例法の改正法案を22年3 月1 日に国会に提出。5 月25 日に成立し、6 月1 日に公布された。その後の経過は前述したとおりである。
 改正法案には、「制度の対象範囲の拡大」、「手続の柔軟化」、「消費者への情報提供方法の充実」、「消費者保護の充実」、「消費者団体訴訟の支援法人を認定する制度の導入」、「団体の負担軽減の措置」などが盛り込まれている。

増える適格消費者団体とその活動

 現在、わが国には、(特非)消費者機構日本(東京都千代田区)、(特非)消費者支援機構関西 (大阪市中央区)、(特非)埼玉消費者被害をなくす会 (さいたま市浦和区)、(特非)消費者支援ネット北海道(札幌市中央区)の4つの特定適格消費者団体が存在する。この他、適格消費者団体は全国に21団体あり、消費者市民ネットおきなわ(沖縄県那覇市)、やまなし消費者支援ネット(山梨県甲府市)の2団体が今年になって相次いで認定された。認定団体は増加傾向にあり、これらの中から将来にわたり、消費者の財産的被害を回復するための業務の遂行力を持つ特定適格消費者団体が生まれてゆくことが想定される。
 消費者裁判手続特例法の完全施行を前に、消費者庁は8月4日、消費者団体訴訟制度の愛称を「COCoLiS」に決定した。これは「Consumer Organization Collective Litigation System」の略称。同時に、リスを真似たマスコットキャラクター「ココリス」も公表するなど、検討会報告書で「消費者被害全体の規模や分野の広がりに照らせば、被害回復制度施行後に取り組まれた事案は、訴訟外の取組を含めても、事案の数や種類、救済の規模のいずれにおいても広がりを欠いている」とされた問題の解消に向け、消費者啓発に力を注ぐなど着々と布石を打ち始めているようだ。

 今年に入っても、消費者団体による活動は活発に行われている。その中でも、消費者団体の活動が事業者にとって無視できない重みを持ち始めていることを示すエピソードが起きた。8月2日付で健康美人研究所㈱(東京都渋谷区、風間強司社長)が消費者ネットおかやまに対して送った回答書である。文面には、「貴団体が運営しているホームページ上では、他社の回答書は記載しているものの、弊社の回答書が掲出されておりません。そのため、弊社が貴団体の申入れを軽視しているように捉えられ、弊社の商取引にも影響しています」とあった。消費者団体の指摘に対して真摯に答えようとする企業にとっては、公表されること自体はもはやリスクではないという実状を反映した事案ではないか。

 本年1月以降、ヘルスケア業界における団体の主な活動について下表に紹介しておく。

【田代 宏】

※健康美人研究所への消費者ネットおかやまの申入れについては、2023年7月13日、11月16日の申入れを経て、12月13日に健康美人研究所から回答が寄せられ、その後、消費者ネットおかやまが調査の結果、2024年3月13日に申入れを終了したと発表している。

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