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安全性に対する意識、厳しく問う 小林製薬、外部調査委員会の80ページ報告書

 自社製の紅麹原材料を配合した機能性表示食品のサプリメントに腎機能障害を中心とする健康被害報告が相次いだ問題を受け、小林製薬㈱(大阪市中央区)は23日、外部の弁護士3人で構成する調査委員会がまとめた報告書を公表した。小林章浩社長など経営トップ2人の経営責任を明らかにするとともに、引責辞任が余儀なくされた背景でもある80ページ超に及ぶ同報告書は、健康被害疑い情報の公表や商品自主回収が遅れた理由をはじめ、サプリメントの安全性確保に対する同社の姿勢を厳しく指摘する内容になっている。

通常とは異なるピーク、気づかず出荷

 報告書によれば、小林製薬は、健康被害が生じた可能性のある紅麹原材料の出荷前検査のHPLC分析において、通常とは異なるピーク(事後にプベルル酸であることが分かる)がチャート上に検出されていたにも関わらず、気づかずに出荷していた。報告書はその理由として、有効成分である「モナコリンK」の含有量を行う目的でHPLC分析を行っていたことなどを挙げている。

 また、同原材料の製造や品質管理の現場は「人手不足が常態化していた」と説明している。そうした中で、衛生・製造・品質の各管理がおろそかになっていた可能性を指摘。今回の健康被害問題の「原因であるか否かは不明」だとしつつ、健康被害が生じた可能性のある原材料の製造時に、「乾燥機が壊れて当該原料ロットの紅麹が一定時間乾燥されないまま放置」されていたことがあること、紅麹の培養タンクのふたの内側に「青カビが付着していた」ことがあり、そのことを品質管理担当者に伝えたところ、同担当者から「青カビはある程度は混じることがある」と言われたことがある、などといった従業員の声を伝えた。

 大阪工場から紀の川工場(大阪工場から紅麹原材料の製造ラインが移管された小林製薬のグループ会社、梅丹本舗の工場)に製造ラインを移す際、「乾燥工程の設備の一部である排気ダクトの深奥部が目詰まりしていることが発見され、それまで適切に排気できていなかった可能性がある」と調査委員会に対して語った従業員もいたという。しかし同社は、今回の健康被害問題を認識し、3月22日に公表するまでの間、「直接製造担当者に製造過程の問題を尋ねる等して製造の実態を把握するという積極的な試みを行わなかった」

現場任せの品質管理体制

 また、品質管理体制が「一部、現場任せ」になっていたのが実態だったとも指摘した。人手不足の中で、製造ラインの品質管理を含めた業務は「現場の担当者にほぼ一任」され、通常業務では「何か異常が生じない限り、当該担当者から工場長も含めた上司に対して特段の情報共有はなされていなかった」。さらに、「小林製薬の本社部門においても、製造本部を含め、現地視察その他の方法により、大阪工場及び紀の川工場の実態を的確に把握していた状況は認めらない」としている。

 調査委員会は報告書で、同社は健康食品の安全性に関する意識が欠けていたと指摘。「重大な健康被害に関する症例の報告を受けた際に、健康食品を摂取する消費者の安全を最優先に考えることができていなかった」。それが問題公表や自主回収の遅れなどにつながった。

【石川太郎】

(冒頭の写真:23日に小林製薬が公表した外部調査委員会による調査報告書の一部)

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