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女性向けサプリ普及、後押し期待 【フェムテック特集】一方で立ちはだかる薬機法の高い壁(前)

 そもそもフェムテック・フェムケアとは何なのか。注目度が高まった背景には何があるのか。思春期から老年期まで、女性が各ライフステージにおいて向き合うことになる健康課題の解消を目指す新たなヘルスケア・セルフケアの概念が、サプリメント・健康食品産業にどのような影響を及ぼすのかを考える。

サプリメントはフェムテックか否か

 フェムテック(FemTech)は「Female(女性)」と「Technology(技術)」を掛け合わせた造語だ。欧米では10年ほど前から使われていたとされる。同じような造語として、2000年代前半から欧米の金融サービス市場で使われるようになったフィンテック(FinTech)がある。それに倣い、生理日を管理するためのアプリを開発したドイツの企業が使い始めたといわれる。

 フェムテックに定義はあるのか。今のところ確立したものはないとされる。しかし一般的には、テクノロジーを活用し、女性に特有の健康課題を解決したり、女性のクオリティ・オブ・ライフ(QOL)を向上させたりするための製品やサービス、あるいはソリューションを指す、などと説明されている。

 それに照らせば、スマートフォンなどのデジタルデバイスを通じて排卵日や基礎体温などの管理を行うアプリ、ビデオ通話やチャットなどを通じて産婦人科医など医療従事者に直接相談できるオンラインサービスなどが、フェムテックに該当すると考えられる。

 一方、フェムテックと並行するかたちで、フェムケア(FemCare)という用語も使われている。

 それぞれの違いについては、テクノロジーを使用するのがフェムテック、使用しないのがフェムケア──そのようにざっくりとした整理がなされている。だが、一口に「テクノロジー」と言っても解釈の余地がある。それぞれを厳密に区分けすることは難しく、フェムケアはフェムテックに内包される概念だとする説明もあれば、フェムテックとフェムケアを並列的に論じる言説も見られる。

 では、女性の健康維持・増進に資するサプリメントや健康食品はどちらだろうか。テクノロジーの使用・不使用の観点から「フェムテックではなくフェムケアの方が馴染む」とする意見が業界内からは聞こえてくる。

 一方で、経済産業省が2020年度に委託事業として実施したフェムテック産業に関する調査報告書の中には、「フェムテック製品・サービス」の1つとしてサプリメント(大塚製薬のエクオール含有食品)がしっかり取り上げられている。

 考えてみれば、植物などの天然物から健康維持・増進に有効な物質を高濃度に抽出・精製すること、生体内の代謝によって得られる物質を発酵などによって生み出すこと、そのようにして得られる物質の構造などに変化を加えて有効性をさらに高めること、そうした物質についてヒト試験で有効性を確認し、その有効性を維持した状態で最終製品化し消費者に提供すること──いずれも「技術」といえる。サプリメントや健康食品もフェムテックに位置付けることができる。

政府の骨太方針に「フェムテック推進」

 「日本のフェムテック元年」と言われている年がある。2020年、あるいは21年だ。「元年」とされた背景には、フェムテックに着目した政治家らの動きがあった。

 20年、自由民主党が「フェムテック振興議員連盟」を立ち上げる。音頭を取ったのは鹿児島1区を選挙区とする若手政治家の宮路拓馬衆院議員。フェムテックの旗振り役として議連の事務局長を務める。一方、会長には、女性活躍、少子化対策、男女共同参画の各担当大臣を歴任した野田聖子衆院議員が就き、フェムテック関連製品の普及推進などを求める提言を行っている。

 それもあってか議連発足の翌21年、政府は「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)」に「フェムテックの推進」を初めて盛り込む。成長戦略フォローアップにおいても、フェムテック製品・サービスの利活用を促す仕組み作りを支援し「女性特有のライフイベントに起因する望まない離職を防ぐ」と表明。女性特有のライフイベントとは、月経や妊娠・出産、更年期障害などのことだ。いわゆる「女性版骨太方針」(女性活躍・男女共同参画の重点方針)にもフェムテックの推進を掲げ、成長戦略フォローアップと同様の方針を示した。

 そのようにして21年の終わり、新語・流行語大賞にノミネートされた30の用語の中に「フェムテック」があった。

 その意味を含めた認知度は決して高いとはいえないものの(矢野経済研究所が22年に実施した調査によると5.8%にとどまる)、フェムテックの推進を掲げる政府方針をはじめ、ジェンダー平等や女性の活躍促進の機運の高まりなどを受け、チャンスあり──と見た産業会が関連製品・サービスを展開し始めたのが21年だった。

 アパレル大手のユニクロも参入。「フェムケアニーズに寄り添う」として生理用ナプキンを不要とする吸水機能付きサニタリーショーツを発売し、話題を集めた。

 サプリメント・健康食品業界でも注目が高まり、翌22年2月の展示会『健康博覧会』に「フェムテックゾーン」が新設されたのをはじめ、同3月には通信販売大手の新日本製薬㈱(福岡市中央区)がフェムケアを掲げたブランドを立ち上げ、チェストツリーエキスなどを配合したサプリメントのテスト販売を開始。食品大手の㈱明治(東京都中央区)も5月、ラクトアルブミンを配合したサプリメントやグミ、飲料で構成される新たな食品ブランド『フェムニケアフード』の立ち上げを発表、10月から販売を始めている。

(つづく)

【石川太郎】

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