大豆の機能性をフェムテックに生かす 【フェムテック特集】補完医療からのアプローチも模索
大豆に由来する機能性素材を活用したフェムテック・フェムケア関連製品の開発を提案する企業がある。サプリメント・健康食品向け原材料の開発から販売までを手がけるニチモウバイオティックス㈱(天海智博社長)だ。京都大学やハーバード大学など国内外の大学研究機関や医療機関との共同研究を通じて積み上げてきた科学的知見を背景に、主に成熟期から更年期の女性が抱える健康課題を解消しようとしている。
アグリマックス(AglyMax)とイムバランス(ImmuBalance)。ニチモウ(株)の100%子会社であるニチモウバイオティックスが現在、フェムテック・フェムケア食品向けに提案している機能性素材だ。どちらも健康的な食品素材として馴染みの深い大豆を原料にしたもので、同社の主力製品。特許権の存続期間をすでに満了しているが、大豆の胚芽に含まれるイソフラボンを独自の麹菌発酵技術でアグリコン化し、吸収率を高めた素材がアグリマックス。
一方、イムバランスは、同様に独自の麹菌発酵技術を使い、味噌用麹菌を用いて脱脂した大豆を発酵させた麹菌発酵大豆培養物。発酵によって新たに産生された特定の麹多糖成分を規格化しつつ、「ホール(全体)」としての大豆の機能性が発揮されるように開発したもので、乳酸菌などのプロバイオティクス、食物繊維などのプレバイオティクス、さらに発酵によって新たに産生された多糖類やペプチドといったバイオジェニックスといった3つの働きを合わせ持つ、という。
妊娠めぐる悩みの解消 食品機能にも役割ある
これら大豆由来の機能性素材が、女性、とりわけ成熟期や更年期の女性に特有の健康課題の解消が期待できる科学的知見を、これまでの研究を通じて同社は得てきた。補完医療的な有効性を食品素材に見出し、それを生活者に提供していくことを基本的な研究方針としているため、健常者が摂取することが原則とされるサプリメント・健康食品には馴染まない研究への投資を、同社はあえて進めている。その中で、国内の医療機関などとの共同研究を通じ、両素材に共通して見出されたのが、妊娠を望む女性患者のサポートに関わる知見。RCT(ランダム化比較試験)ではなく症例報告にとどまるため、強いエビデンスとは言えないが、両素材とも、不妊に悩む女性の妊娠率を高める可能性が示唆されている。特にアグリマックスは、イムバランスに先んじて不妊への有用性が見出されたこともあり、配合サプリメントの取り扱いが産科婦人科にも広がっている。
作用メカニズム等の説明は省略するが、同社がまとめた研究レポートなどによれば、アグリマックスについては、長期不妊などの不妊患者35人が3カ月間継続摂取したところ、12人が妊娠した。他方、イムバランスに関しては、妊娠を阻む要因ともなる子宮内膜炎の患者20人が約2週間摂取したところ11例に妊娠が認められたほか、免疫機能不均衡による不妊患者の妊娠率の改善が確認されたという。それぞれ国内の産婦人科クリニックによる症例報告だ。
「子宮内膜炎など、正常な妊娠の妨げとなる疾患の原因や発生機序は十分に解明されていない部分がある。解明されていたとしても、薬剤による治療に対して抵抗性を示す人や、副作用を懸念する人もいる。だから、妊娠を望む不妊患者のために、アグリマックスやイムバランスで医療を補完することを目指して研究を行っている」。医学博士号を持つ同社の天海社長は話す。
大豆イソフラボンを更年期女性のために
一方、更年期に特有の身体的な不調に対する有用性が、米ハーバード大学と共同で実施した大規模RCT(試験参加者190名)の結果から示唆され、その旨が論文発表されているのがアグリマックスだ。プラセボ群との比較で、ホットフラッシュの頻度と度合を有意に抑えたと報告されている。
未病域の人も対象に含めた補完医療としての活用推進を目指して食品機能研究を進めている同社だが、そうは言っても、サプリメント・健康食品原材料メーカーとしては、機能性表示食品への対応を求める声を無視するわけにいかない。フェムテック・フェムケア関連製品として、アグリマックスを配合した更年期女性のための機能性表示食品を開発することができないか──「現在、検討を進めているところだ」(天海社長)という。
【石川 太郎】
<COMPANY INFORMATION>
所在地:東京都港区浜松町1-6-15 VORT浜松町I 7階
TEL:03-6478-5051
URL:https://nichimobiotics.co.jp/
事業内容:健康食品素材、健康食品および化粧品の製造・販売
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