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唐木東大名誉教授が受託2社に問う(4) 【座談会】受託製造から見た機能性表示食品の今

機能性表示食品に寄せる大きな期待

唐木 では、最後に将来展望についてお聞かせください。

和田 機能性表示食品というのは、どんどん増えていくべきだと思いますし、消費者の方がサプリメントをなぜ摂取するかとなった場合に、当然、有効性を期待するからです。それが今、有効性が表示で謳えるようになったというのは大きいと思いますから、これからますます増やしていかなくてはならないと考えいます。そういう中で、どういうかたちで増やしていくかとなった時には、もう話はすでに出ていましたが、やはり明確な基準がないというのは大きな問題だと考えます。今後は業界団体が中心となって、すでに取り組んでいるチェックチェックリストのようなものを消費者庁に提案していかなくてはならない。私どもは受託製造メーカーの立場から、業界に対して協力していきたいと考えております。
それと、唐木先生の講演でもありましたが、規格基準型ですね、これはぜひ一緒になってやり遂げたいと思います。今一番のデメリットは、商品を世に出したくても受理されるまでに時間がかかることです。相当に大きな実績を持っているものが何アイテムかありますから、規格基準型を業界と一緒になって作ることで、発売時期の短縮、それと、事後チェックにおけるリスクも低減できることと思います。また新たなカテゴリーであったり、新たなヘルスクレームの挑戦を続けながら、今より多くの製品に対して機能性が謳えるような商品作りをしていきたいと考えます。

萩生田 全く同感です。ガイドラインについても、今後、明確な基準を示していただくような働きかけというのは大きな課題として残ってはいるので、それも業界団体というレベルにはなりますが、企業の1担当者として続けていくということを常に考えています。

又平 機能性表示食品に関しては今後も発展させていきたいと思っています。発展させるためにも、業界全体がしっかりと自浄機能も含めてブラッシュアップしていくことが必要だと思います。同制度は届け出制ですから、本来、業界側が育てていかなければいけないと思います。ここは1社1社というよりも、全体がどう育てていくのかということは、今だからこそいろいろ課題が上がってきている。あるいは制度自体が変わってきている。今だからこそ考えていかなきゃいけない時だと思いますね。
 もう1つは、機能性表示食品だけではなくて、トクホですとか栄養機能食品ですとか、さっきおっしゃった規格基準というところの全体の制度設計というところも非常に大事だと思います。この辺りも行政だけに任せるのではなく、業界としてしっかりした考え方、アイデアを募って提案していくべきではないかと思います。
先ほど先生がおっしゃっていましたが、これがアメリカ型にどうやって近づいていくのかなというところが非常に将来展望の中で、我々ビジネスの面でも注目してるところでして、日本の場合は健康食品の市場というのはほとんど通信販売が主体で、おそらく全体の7割程度を占めています。ところがアメリカは逆です。なぜそうなってるかっていうと、パッケージにそれなりのことを書くことができるのですね。健康リテラシーも日本以上に高くて多くの教育が行われています。

唐木 サプリメント教育法がありますからね。

又平 サプリメント教育法があって、一般の消費者もかなりのレベルでいろいろなそういう問題に通じていて、保険制度の関係で自分の体を自分で守らなければならないところも徹底しているとは思うのですが、いずれにしてもそういう表示制度があって、消費者はそれを自分で選択できる。日本も少しずつそうなってきているのですが、なかなかそれが覆らないというのは何か。機能性表示食品といってもまだ全体のマーケットの2割強ぐらいしかありません。残りの7割8割はまだいわゆる健康食品ですから、そういったものをとにかく大量の宣伝広告をもって消費者に買っていただいてる部分もあるわけです。それがこの機能性表示食品制度をもっと育てていくことで変わっていく、売り方も変わっていく、売る場所も変わっていく、そういったところに注目しながら、将来展望を考えているところです。

サプリメントの一本化による法制定が必要か

唐木 大事なポイントを全部挙げていただきました。今お話しいただいた繰り返しになりますけれども、問題点としては、1つは「トクホ」、「機能性表示食品」、「いわゆる健康食品」という分類が本当にいいのかどうかという点です。私はむしろアメリカみたいにサプリメントを一本化して、法律の下に1つの存在とし規制すべきではないか。それが消費者の分かりやすさや消費者教育にとっても宜しいのではないか。今の状態で消費者教育と言ったって、トクホといわゆる健康食品の違いさえも消費者は分からない。それでどう教育するかということです。
健康食品でいろいろなものが混在している状況をどうやって解消していくのかというのは今や1つの大きな課題で、消費者庁のやり方を見るとどうも、機能性表示食品をトクホに持ってこうというような意図が見えないことはありません。

又平 ありますね。

唐木 しかし消費者庁がやるべきことは、いわゆる健康食品を機能性表示食品に底上げして、トクホと機能性表示食品を一本化することではないですか。そうすると、健康食品法(サプリメント法)1本で行くことができるのではないか。私はそれが将来の夢ではないかなと思っているのですが、その辺のところについてのご意見と、それから、アメリカのサプリメント教育法にならって日本で法律を作るというのがその先にある。それについてどう思われるか、それから今お話になった業界団体、それから消費者を巻き込んだ運動をどうしたらいいのかというようなことについても、皆さんのご意見を伺いたいと思います。

又平 あまりにもスケールが大きな話になりましたが、我々事業者側としては当然、マーケットが大きくなっていただきたいというのがあります。まだまだその予防という分野において伸びる要素はある。いろんなものがある中でも、健康食品というのはその1つだと思ってますので、そういうマーケットを増やすという観点においても、結果として平均寿命に健康寿命を近づけていくという観点においても、健康食品をもっと利用していただきたい。その利用の仕方というところで教育といいますか、さまざまなかたちの周知活動というのも、業界全体でやっていくべきだと思います。こういう制度ができると、当然、規制も一方で強くなるのは当然のことなので、先ほど自浄作用と言いましたけれども、自らを律して今回のような売る側の問題も起きないようにしていただきたいですし、作る側も引き続き品質面、あるいは表示関係の制度面をしっかり守り、そんな中でもブラッシュアップしながら、拡大していけたらいいなと思います。

和田 いまだかつてトクホにはカプセル剤がゼロなのです。基本的には食品における機能を謳うというかたちで、相変わらずそのカプセル剤は医薬品的形状であると、昔の46通知じゃないですが、未だにそれが生きてるようなかたちです。決してカプセル剤がダメと言っているわけではないですよという話はあっても、実際は形が形だからなかなか取得しにくいという現実がある。そのような意味で、機能性表示食品は私どもにとっては、やっとここまで来たかという思いがあります。良いものは良いと認めて、皆さんが分かりやすい表示をして出すということが非常に大事じゃないか。
改正ガイドラインでは、スティックの一包はダメ、1本にしなさいと。一包は医薬品的な見方だからというのですが、普通の人が見たらこれ一緒じゃないかと思います。あとは食前食間、食後に関する表示の問題もあります。いまだにこのような問題が取り沙汰されている中、先ほど先生がおっしゃったサプリメント法。サプリメントとして1つの新しい法律を制定する。食品ではなく医薬品でもない、法的にサプリメントを定義した法律の制定が不可欠だと思います。

実現のために待たれる強力なリーダーシップ

唐木 そうですね。機能性表示食品がなぜできたのか。これはアベノミクスという政治的な動きがあったわけです。その裏には業界の動きもあった。そして有権者の動きもあった。やはり次の食品、健康食品法はその延長線上にある。セルフメディケーションが大きな動きになっているので、私は非常にいいタイミングだと思います。では誰がどの政治家を動かすのというと、その辺のところ、業界団体がバラバラだというところでも共通の利益というのはあるわけなのですね。そこを一本化して、何とかそういった政治的な動きに持っていき、サプリ法案ができないか。そのためには業界の強力なリーダーが必要ですね。

萩生田 サプリメントの一本化という話に関して、トクホと機能性表示食品を比べるとやはり機能性表示食品の方が勢いがある。なので全て機能性表示食品にしよう、一本化しようというのは全面的に賛成です。ただ1事業者として、そのためにどうできるかということを考えると、機能性表示食品は質が低いのではないか、エビデンスがまともになってないのではないかという指摘は絶対出ると思います。そこに対応できるように、1企業としてエビデンスをしっかりするというのが必要かなと感じています。

唐木 問題は消費者の受け取り方ですが、機能性表示食品はエビデンスが少ないと思っている消費者がどのぐらい存在するのか。しっかりした製品であることの広報をどうするのかという点が大きな問題ですね。

又平 いわゆる健康食品がすごくグレードが低いものみたいに言われますが、消費者が選んで買っているのは圧倒的にいわゆる健康食品が多いわけです。それを何かいけないもののように扱っては良くないのではないか。冒頭申し上げたとおり、安全なものであって、品質がしっかり担保されたものであって、それが何らかの理由でもって長く食べ続けられてきたものであって、それに関わるエビデンスはもしかしたらプラセボ対照二重盲検試験ではないかもしれないけれども、一定のエビデンスもあるかもしれないというところはしっかり判断するというか、認めてあげる必要もあると思うのです。いわゆる健康食品の全部が全部、機能性表示食品には行けないと思いますし、その中でも良さがあるわけなので、そういったものをどういうふうに活用していくかというのも我々はしっかり見ていかなければならないと思います。

唐木 そうですね。その辺の仕分けをどうするのか。基本的なアイデアができないと、なかなか健康食品法(サプリメント法)にはならないというところがあるので、関係者が集まって頭をひねり、考え出す必要があるだろうと思いますね。その法律がないおかげで、医薬品の難しい試験を押し付けられて、食品の機能を十分に証明できないことになっている。これが消費者にとっても業界にとっても一番の悩ましい問題ですね。

(了)
【文・構成:田代 宏】

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