原材料メーカー兼OEMメーカーの強み 備前化成、機能性関与成分「SAC」で発揮
健康食品の原材料メーカーであると同時にサプリメント・健康食品のOEMメーカーでもある備前化成㈱(岡山県赤磐市、清水富江社長)。最近の同社には、原材料事業とOEM事業の両輪を同時に回転(拡大)させる新たなエンジンが搭載されている。機能性表示食品の機能性関与成分として複数の企業で届出が進み始めた「SAC(サック)」である。「BIZEN-Technology」と名付けた、独自に開発した3つの製剤技術からも両事業を加速させようとしている。
ニンニク由来成分が成長エンジンに
「脳疲労にSAC」。各地の主要駅でそう訴えるデジタルサイネージ広告を目にした業界関係者もいるかもしれない。現在までに終了したが、東京では品川駅の自由通路をはじめ、大阪駅、岡山駅、博多駅の4ターミナル駅で今春から展開された広告だ。同じ広告がYouTube上でも9,000万回を超えて配信されたという。仕掛けたのは備前化成。SACの成分認知度拡大とともに、同社の認知を社会的に得る目的で投資した。
同社はSAC(S-アリルシステイン)を高含有するニンニク素材を2020年までに開発し、自社の健康食品原材料GMP認定工場で製造をスタート。有効性を検証するヒト試験も行い、22年秋から機能性表示食品に応用できるようにした。現在可能な訴求機能は、日常生活で生じる身体的および精神的な疲労感の軽減。届出件数はじわりと増えていて、複数の大手通販企業からの届出も見られる。初登場から1年程度の機能性関与成分にしては、順調な立ち上がりと言える。
機能性表示対応素材として原材料供給を行うとともに、最終製品(サプリメント形状)の受託製造も手がける。国内に生産拠点を保有する原材料メーカー兼最終製品受託メーカーである強みがここで発揮される。いわゆる「一気通貫」だ。最終製品の製造を同社で行うことを原材料供給の条件にしているわけではないが、同社に製造委託しているケースが多い。それもあって「広告投資額が大きいものの、収益化は十分に見込めると判断している」と同社の市場企画部は話す。
SACの需要をグローバルに広げようと、今年から海外展示会への出展を活発化させている。国内外で普及啓発を進めて原材料としての拡販を図り、その成果をOEM事業拡大の糧にする。そのようなシナジーを創出できるポテンシャルがSACにはあると同社では見る。そのため原材料専用の生産工場を新設するための投資を決めた。工場建設用地はすでに岡山県内に取得済み。将来的にはOEM用の最終製品製造工場も併設させる計画だ。
それに加え、来年1月にも、研究開発・品質管理の拠点となる「イノベーションセンター」を稼働する予定。本社敷地内に竣工させるもので、機能性食品素材から製剤技術までの研究開発のほか、成分分析などを行う品質管理の拠点として運用する。総勢で約30人の各部門担当者が在籍することになるという。
3つの独自製剤技術、新たな強みに
OEM事業をテコに原材料事業を拡大させる動きも見せている。そのためのツールとして活用しているのが、「BIZEN-Technology」と名付けた独自の製剤技術だ。
競合他社との差別化も目的に開発したもので、現在までに、機能性成分を消化管の狙った場所に届けるとともに溶出タイミングをコントロールできる錠剤技術『B-ReC』、オーラルケア効果を持つ機能性成分を口腔内に長く留めることができる顆粒技術『B-MoG』、機能性成分を高含有化させる打錠技術『B-HiT』の3つを開発した。
このうちB-ReC技術は、ニンニク由来のSACを最終製品化する際にも活用。低臭化しているとはいえ気にされることがある戻り臭を防止できるといい、「SACとB-ReCは最適な組み合わせ」(同)だとしている。
【石川太郎】
(冒頭の写真:東京・品川駅自由通路で行われた機能性関与成分「SAC」のデジタルサイネージ広告の一部。企業プロモーションの側面も)
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