原材料の安全性と品質、どう担保する JIHFSが新規事業、「令和6年通知」対応支援
腎機能障害の健康被害を訴える消費者が続出した「紅麹サプリ」問題の再発防止を図るため、健康食品GMP(適正製造規範)第三者認証機関の(一社)日本健康栄養食品規格協会(池田秀子理事長。以下、JIHFS)が新たな取り組みを始める。
輸入品を含め、サプリメントなど健康食品に配合する「原材料」の安全性と品質を事業者自ら確保できるようにする認証事業やサポート事業を、7月を目途に開始する。この新たな取り組みの基盤には、健康食品の安全性と品質確保を目的に行政機関が今年定めた最新の指針(ガイドライン)を置く。
輸入原材料GMP規範を本格運用へ
JIHFSは2005年設立。健康食品の「GMPガイドライン」とも呼ばれる行政通知(平成17年通知)を厚生労働省が取りまとめたのを受け、同年から、健康食品の最終製品及び原材料の製造工場の他、輸入最終製品に対するGMP認定を行ってきた。現在、国内に2つ存在する、健康食品GMP第三者認証機関の一つ。
JIHFSが新たに始める各事業は、厚生労働省が今年3月11日付で発出した通称「令和6年通知」(旧平成17年通知)を踏まえたものとなる。
令和6年通知は、錠剤やカプセル剤などサプリメント形状の健康食品を主な対象とするかたちで、原材料に関する自主点検、最終製品の製品設計、最終製品の製造・品質管理(GMP)に関する各指針(ガイドライン)を示したもの。健康食品関連事業者全般に対して、指針の実行が推奨されている。
食品衛生基準行政の組織移管に伴い、現在、同通知を所管するのは消費者庁。GMP指針(令和6年通知の別添2)の内容を事業者(届出者)が遵守することは、今後、サプリメント形状の機能性表示食品の届出及び販売開始後の要件となる見通しだ。
JIHFSは、輸入原材料に関するGMP認証事業(GMP-IM認証。IM=Imported Material)を7月から新たに開始する。15年までにJIHFSで策定していた輸入原材料GMP規範に基づき、国内で製造販売される健康食品に配合される場合が少なくない輸入原材料に対して、GMP認証を行う。輸入原材料に対するGMP認証システムが国内で運用されたことは、これまでになかった。
JIHFSの輸入原材料GMP規範には、認証を受ける輸入販売事業者に対する要求事項の1つとして、受け入れロットごとに国内での分析試験の実施を盛り込んである。品質管理のための社内体制構築や製品標準書の作成などといった基本的な事項の他に、メーカー側で安全性や有効性を確認した原材料との同等性や同質性を国内で改めて確かめ、サンプルを一定期間保管しておくなどの品質管理業務を要求事項として実地監査を行う。これにより、原材料としての安全性と品質を客観的に担保できるようにする。
国のGMP指針は、原材料を対象にしていない。ただ、「本ガイドラインに従った製造工程管理を行うことが望ましい」としている他、令和6年通知に「別紙」として盛り込まれた「原材料の安全性に関する自主点検フォローチャート」は、GMP指針に基づいて「適正な製造工程管理下で、一定の品質で常に製造すること」を原材料に対して求めている。JIHFSの輸入原材料GMP認証は、この要請に対応するかたちとなる。
令和6年通知踏まえた原材料安全性自主点検認証も
JIHFSはまた、原材料の安全性自主点検に対する認証事業も新たに始める。
令和6年通知別紙の「原材料の安全性に関する自主点検フローチャート」に則した安全性自主点検が実行されているかどうかを、JIHFSが第三者として評価し認証するもの。
特徴的なのは、これに関連したサポート事業も始めることにしており、同フローチャートに従った安全性自主評価のステップの要所で求められる網羅的な文献検索などを支援する。認証とサポートの両方をJIHFSとして行うことになるが、それぞれ独立したかたちで対応に当たる組織体制を構築する。
ウェルネスデイリーニュースは今後、「紅麹サプリ」問題でクローズアップされることになった原材料の安全性・品質の担保、レベル向上に取り組む事業者を支えるJIHFSの新規事業の中身を詳しく伝える記事を、複数回にわたり掲載していく。
【石川 太郎】
(冒頭の画像:JIHFSが間もなく開始する新認証のマーク。上=輸入原材料GMP、下=安全性自主点検認証)
関連資料:令和6年3月11日通知の全文(消費者庁ホームページへ)
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