協議会「消費者庁は質問に答えただけ」 9月7日開催の情報交換会、話に齟齬
6月29日に消費者庁が改正した「機能性表示食品の届出等に関する質疑応答集」問21をめぐり、多くの事業者が混乱に陥っている姿が当事者からの情報提供もあり、日を追うごとに浮き彫りとなってきた。消費者庁の木で鼻をくくったようなコチコチの回答に不満も出始めた。
ある読者は、「適切なデータベースと言っても世の中にはそれほど多くのデータベースは存在しない。pubMedやJDreamIIIなどで検索したと記入するしかなく、そうするとSRレベルの広範な話になり本項目に適切かどうかわからないのでは?」消費者庁にそう聞いたところ、「データベースの名前について消費者庁側で何か判断することはない」、「事業者側で適切と判断したDBを使用し、安全性を確認することが必要。そういう制度になっている」と、マニュアル一辺倒の回答に終始したという話も。
ウェルネスデイリーニュース編集部の取材に対して消費者庁は、9月上旬に開かれた業界との懇談会で、質疑応答集問21の改正について「事前に相談した」としているが、健康食品業界を取りまとめているとされる(一社)健康食品産業協議会(以下、協議会/橋本正史会長)は、「相談は受けていない。業界団体からの質問に対して消費者庁がコメントしただけ」と食い違いを見せている。
この懇談会は、消費者庁と業界5団体とが1~2カ月に1度程度の割合で話し合いの場を持つ「情報交換会」で、9月7日に開かれたことが協議会によって分かった。その場には、協議会の他にも(公財)日本健康・栄養食品協会、(公社)日本通信販売協会、(一社)日本チェーンドラッグストア協会、(特非)日本抗加齢協会の4団体が参加したことも明らかになっている。理由は分からないが、編集部の取材に対し消費者庁は、当日の正確な日付や参加団体名についてなぜか明確な回答を控えていた。
編集部は、協議会に対して10月18日午前、①情報連絡会が開かれた月日、②質疑応答集問21に基づき届出の差し戻しが行われている事実確認、③問21改正について会員企業ならびに業界への周知。周知していないとしたらその理由、④問21に関する会員企業からの質問の有無とその数、⑤今後の対応策――などの5項目にわたる質問書をメールで送付した。回答は即日戻されたが、追加・関連質問を同日、回答期限を20日として送付したところ、昨夕、返信されてきた。
「消費者庁から相談を受けた時には、問題の重大性を認識していなかったという理解で宜しいか?」との編集部からの2度目の質問に対して協議会は、「消費者庁から相談を受けてはいない。業界団体からの質問に対して消費者庁がコメントしただけ」と、驚きに値する回答を示した。消費者庁の「事前に相談している」という話と食い違っているのである。
消費者庁は「相談した」との回答について、上司に確認した上、折り返しの電話で記者に伝えてきた。また、情報交換会の開催日については、日をまたぎ、”資料”を確認した上で翌日に回答している。ただし先述したとおり、開催日をピンポイントでは知らせず、「9月上旬と答えさせてもらう」と、奥歯にモノが挟まったような不可解な物言いだった。現在、編集部は19日、消費者庁と業界団体の間でどのようなやり取りが交わされたのか、当日の配布資料や記録などについて消費者庁に情報開示請求を行っているところである。
今回の問題を「重要な問題と認識している」とする協議会は現在、業界やメディアに対して「誤解を与えないよう精査の上で、リリースの準備を行っている」という。
編集部はきのう(20日)協議会に対して3度目の質問を送ったが、問21の改正前後、協議会がいつ問題を察知し、どのような対応を取り、今後どのような方針で動こうとしているのかを網羅的に把握するため、対面取材の可能性を打診しているところである。
他方、(国研)医薬基盤・健康・栄養研究所(国立栄研)に対しては先方の求めに応じるかたちで、18日の取材を書面で申請していたところだが、17日に国立栄研側から取材内容を詳しく知りたいとの申し出があったので、詳細を知らせている。研究所内で検討の上、週明けには回答するという。
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国立栄研に対しては、消費者庁が行っている差し戻しに対する所感、国立栄研の利用規約の内容の再確認、ナチュラルメディシン・データベースの版権をめぐる交渉の経緯、進展状況、消費者庁との話し合いの状況、今後の方針や所感について聞いている。
これまでにも書いたが、編集部は今年の5月、国立栄研側と4度にわたり質疑を重ねている。その中で同研究所は、「当サイトの利用対象者は、あくまで医療機関等で一般者の相談応需にあたる専門家でありますが、近年のインターネット普及も鑑み、今回のリニューアルにて一般者も対象とした次第でございます。よって、企業様向けの発信サイトではございません」などと述べている。
また、質疑応答集の問20・問21などで、「既存情報を用いた食経験の評価及び既存情報による安全性試験の評価における1次情報2次情報の参考にすることができる公的機関データベース」として機能性表示食品制度発足時から取り上げられており、これまで多くの事業者が国立栄研のデータベースを参考にしてきた。したがって、企業様向けの発信サイトではないと一概に言い切れないのではないかと反問したところ、「当サイトは商用での利用は厳禁。しかしながら、企業様において閲覧ができないということではない。また、『機能性表示食品に関する質疑応答集』においては例示のみであり、当サイトの利用が必須とは記載されていない」と実にそっけなかった。
いわばこれらのデータベースは、研究開発成果の最大化を目指すために血税を原資とする運営費交付金によって運営されている。ならば消費者庁に相談の上、NMDBと調整し、必要なロイヤリティを支払うなりして情報公開することこそ、公共の福祉にかなうことではないか。
5月の時点でナチュラルメディシン・データベースの東アジアにおける版権を握る(一社)健康食品・サプリメント情報センターは編集部に対し、「国立栄研に利用規約の重大な違反があったため、米国と協議の上、データベースを削除してもらい、その間、当方のコンテンツ(国立栄研の全体の80%)がこれから無断利用されないように、また、現在まで無断で使用されたものの適正化を図ってもらうための具体策を話し合っている途中。(第三者に無断で使わせないはずだったのに、データベースなどであまりにも多くのところで無断利用されているため)時間がかかっている状況」と説明している。しかしそれ以来、同センターは固く沈黙を守っている。
国立栄研は1人の責任者を10日の停職処分にして事を済ませたつもりでいるようだが、問題はそれだけでは収まらないだろう。そもそもこれは担当者1人の問題ではなく、もはや国立栄研全体の責任、いや消費者庁も含めた業界全体の課題、さらに機能性表示食品を享受する国民も含めた大問題として捉え直した方が適切ではないか。
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