1. HOME
  2. 健康食品広告の「判例」
  3. セルナーゼ事件(1) 【7回連載】健康食品広告・表示の「判例」解説

セルナーゼ事件(1) 【7回連載】健康食品広告・表示の「判例」解説

赤坂野村総合法律事務所 共同代表 弁護士 堤 世浩 氏

<受託製造業者にとって参考になる判例>

今回紹介する判決は、痩身効果をうたった健康食品の製造業者について、医薬品の無許可製造による刑事責任が問われた事案である。本判決が「医薬品」の該当性について示した判断は、健康食品事業者、特に受託製造業者にとって非常に参考になるだろう。

まず登場人物を確認する。(株)X研究所(X社)は、ダイエット食品などの製造業者。X1は、X社の代表取締役。Yは、ダイエット食品などの企画・卸売業者。

この事案は、X1とX社が『セルナーゼ』と称する医薬品を無許可製造したとして、薬事法違反に問われた事件である。X1は本件以前から、Yの依頼を受けて、主にダイエットや美容に関する食品を製造していた。もっともYは成分に関する知識がなかったため、Yは大まかな商品コンセプトをX1に伝え、X1がそのコンセプトに見合った成分を組み合わせて商品化していた。

2010年6月、X1はYから、ダイエットを目的とした新商品(『セルナーゼ』)の製造を依頼された。商品コンセプトについて、カプセル形状であり、成分として「体温を上昇させるもの、排尿を促すもの、便通が良くなるもの、尿が黄色くなるもの」を入れてほしいと伝えられた。X1はこれを承諾し、ビタミンB2などの成分の組み合わせを考案した。

翌7月にX1はYから、「『セルナーゼ』の機能性を持った成分の簡単な詳細をいただけると助かります。これからページに組み込みますので!」との依頼を受け、『セルナーゼ』の説明資料(本件企画書)を作成し、Yに交付した。

<製造業者が作成した説明資料>

本件企画書の表題には「Cellnaze 460mg」の記載があり、その下の太枠の中で主に次のように記述していた。

・「“脂肪燃焼”“体温上昇”“排出”3つのアプローチでダイエットを実現!!」

・「セルナーゼはダイエットで難しいとされる“脂肪”“冷え”“便秘”の3難題に立ち向かう方のために開発されました」

・「体の脂肪代謝を促進→脂肪の減少」、「血管拡張・血流UP→内蔵体温を上昇(基礎代謝UP)」、「腸内環境を整える→宿便やむくみを解消」、「この3つの働きを1度に体内で行うことで、あなたの理想の体系に近づけます」

本件企画書の2ページ目以降には、『セルナーゼ』に使用される素材を紹介。ビタミンB2(リボフラビン)、コーンシルクなどの各原材料の名称とともに、主に次のように記述していた。

・「主に血管を拡張する働きをもち、血流アップによる体温を上昇させることから、冷え性の改善に注目されています」

・「この成分が体外排出を促進して便秘の解消に役立ちまた利尿効果もありますのでデトックス(排毒)効果が得られます」

・「利尿薬として使われており、むくみに効果を発揮します」

・「血管拡張作用・血流改善効果が注目されダイエット時の冷え性改善と基礎代謝エネルギー増強、さらに老廃物排出機能に注目があつまっています」

本件企画書の各ページの右上には、本文より小さな文字で「社内資料」と記載されていた。X1はYに対し、本件企画書の内容を販売の宣伝に引用することを禁じるような言動を行わず、またYもそのような確認をしなかった。(つづきは会員専用ページへ)

TOPに戻る

LINK

掲載企業

LINK

掲載企業

LINK

掲載企業

LINK

掲載企業

INFORMATION

お知らせ