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行政処分取消訴訟「だいにち堂」「ティーライフ」(前)~【2回連載】健康食品広告・表示の「判例」解説

堤半蔵門法律事務所 弁護士 堤 世浩(つつみ せいこう)

 ㈱だいにち堂、ティーライフ㈱、大幸薬品㈱の3社が、商品広告表示に対する措置命令の取消または差止を求めて提訴し、いずれもすでに裁判所の判断が確定している。いずれも景表法7条2項により表示が「優良誤認表示とみなされたこと」を理由とする措置命令の適法性が問題となった。ここでは健康食品の広告表示が対象となった2つの事件の概略を紹介し、判決に至る経緯を検証する。

第1 ㈱だいにち堂「アスタキサンチン アイ&アイ」

概 要
 ㈱だいにち堂(以下「だいにち堂」という。)は、「アスタキサンチン アイ&アイ」というサプリメント(以下「本件商品」という。)を販売しているところ、2016年6月27日から30日までの3日間、本件商品の新聞広告において次のとおり表示した(一部抜粋。以下「本件表示」という)。
 ・「ボンヤリ・にごった感じに!!」
 ・「60代でも衰え知らずが私の自慢!!ようやく出会えたクリアでスッキリ!!」
 ・「クリアさに納得できない毎日・・放っておけないその悩み 40代を過ぎた頃から急激に増え始める気がかり。『読書に集中できない』『パソコンや携帯の画面が・・』などの悩みを抱える方々が、高年齢化と共に増加中と言われる。そんな悩みをケアする、天然成分アスタキサンチンにクリア感を助ける7つの栄養成分を濃縮高配合した「アスタキサンチン アイ&アイ」が、くもりの気にならない、鮮明な毎日へと導きます。」

 これに対し、消費者庁長官が、本件表示は優良誤認表示とみなされるとして2017年3月9日付で措置命令を行ったため、その取消を求めて提訴されたのが本件である。

争点・判断
 ⑴ まず景表法(以下「法」という。)7条2項(不実証広告規制)の説明を簡単に行う。①消費者庁長官は、事業者がした表示が優良誤認表示に該当するかを判断するため必要があると認めるときは、事業者に対し、期間を定めて、その表示の裏付けとなる合理的根拠資料の提出を求めることができ、②これが提出されないとき、その表示は優良誤認表示とみなされる(法7条2項)。
 つまり、次の要件を満たす場合には、事業者のした表示は優良誤認表示とみなされるので、これを理由とする措置命令も適法となる。

 ① 消費者庁長官が、事業者のした表示が優良誤認表示に該当するかを判断するために資料提出要求をする必要があると認めたことが相当であること

 ② 事業者が期間内に合理的根拠資料を提出しなかったこと
そこで、本件では①②が認められるかが主な争点となった。

 ⑵ 東京地裁(2020年3月4日判決)は、①②いずれも認め、措置命令は適法であると判断した。特に、①に関して、だいにち堂は、消費者庁長官による資料提出要求が認められるのは「表示が具体的な効能・効果を訴求する」場合であることなどを要すると立論した上で、本件表示は本件商品の原材料であるアスタキサンチンが目に良い成分であるという点を強調したにすぎないから、具体的な効能・効果を訴求するものではないなどと主張した。これに対し、裁判所はこの立論を否定し、本件表示内容の捉え方についても「事業者のした表示が優良誤認表示に該当するか否か、あるいはその疑いがあるか否かについては、一般消費者が当該表示の内容全体から受ける印象又は認識に基づいて判断すべき」(下線筆者)と述べ、「本件記載の内容は『ボンヤリ・にごった感じ』という目の見え方が不良である状態が、本件商品を1日1粒摂取することにより、『クリア』、『スッキリ』、『くもりの気にならない、鮮明な毎日』という目の見え方が良好な状態になることを表示したものと認識するであろうことが明らかなものであり、全体として、視覚の不良感が改善されるという効能・効果を有する本件商品の優良性を強調するもの」と認め、特定の文章・図表・写真等でなく、表示全体から受ける印象・認識を基準とすべきことを明確にした。

 ⑶ 本件はだいにち堂により控訴・上告されたが、いずれも棄却された(東京高裁20年10月28日判決、最高裁第三小法廷22年3月8日判決)。なお、だいにち堂はアンケート調査結果も用いて本件表示が具体的効能・効果をうたったものではないことの立証などを試みているが、この点については別稿に譲る。(⇒つづきは会員専用ページへ)

<筆者プロフィール>
堤半蔵門法律事務所代表(東京弁護士会所属)
一橋大学大学院法学研究科修了。2008年弁護士登録。経歴・所属:東京簡易裁判所司法委員、東京弁護士会食品安全関係法制研究部会。取扱分野:企業法務・ベンチャー法務、契約法務、労務、M&A・アライアンス支援、上場準備支援
講師・執筆:東京弁護士会主催「食品企業コンプライアンスの実務・最前線」講師、コラム「健康食品広告・表示の『判例』解説」執筆(Wellness Daily News)。

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