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健康食品リスク管理、現状改善に本気 厚労省、健康被害情報の収集体制を強化(後)

 指定成分等含有食品以外の、いわゆる「健康食品」との関連が疑われる健康被害情報の収集はすでに始まっている。今月からは、保健所などから上がってきた健康被害疑い情報の概要が、厚生労働省のホームページ上で公表されている。現在公表されているのは、2020年6月から22年12月の約2年半に寄せられたもので、その数は「18」(製品数としては17)。

 厚労省によると、この18事例について医学有識者らは、緊急の対応が必要な状況ではないと判断。因果関係の否定こそできないものの、それが強く疑われるような事例もないという。加えて、情報不足のため因果関係を判断できないものも少なからずある。因果関係が不明にもかかわらず健康被害情報として公表することに業界関係者からは疑問の声も上がる。

 一方で、2年半で18という件数は、果たして実態に即しているのかどうか──厚労省が健康食品のリスク管理体制を見直し、健康被害情報の収集を強化しようとしている背景にはそうした懸念がある。「報告するほどの被害ではない」や「健康食品が原因と断定できない」などといった理由で、保健所に報告しない医療従事者や消費者も少なくない可能性を、厚生労働科学研究が示している。また、厚労省の諮問委員会に関わる医学の学識経験者は、「現場実感としてはもっと高頻度だ」と指摘する。

被害情報が積み上がれば指定成分候補として検討も

 29日にオンラインで開かれた「指定成分等含有食品等との関連が疑われる健康被害情報への対応ワーキンググループ」の会合で厚労省は、消費者などから寄せられた健康被害疑い情報を報告すべきかどうかの判断を統一的に行えるようにするため、因果関係を評価するためのアルゴリズムを検討した厚生労働科学研究の結果を踏まえて作成した「報告要否確認シート」の検討も有識者らに求めた。

 確認シートは、大きく3つのステップで報告要否の判断を導き出すもので、保健所での使用が想定されている。医師が因果関係を否定したり、健康食品の摂取後に出現した有害事象ではなかったりする場合以外は、ほとんどが「要報告」に至ると考えられる。健康被害疑い情報を広範囲に捉えようとするものだ。会合で有識者らは、確認シートがより使いやすいものになるよう、ステップの順番を変えることなどを提案した。

 この日の会合ではほかに、健康被害疑い情報に対する対応の流れについても検討した。厚労省が考える対応は、①緊急措置、②集積情報に基づく措置、③継続的な情報収集──の3つ。緊急措置とは、食品衛生法に基づく注意喚起や改善指導、販売禁止などの措置を指す。一方、集積情報に基づく措置について、同省は、「指定成分候補としての検討→指定成分への指定→(必要に応じて)注意喚起、改善指導、販売禁止等の措置」の流れを示しており、健康被害疑い情報が蓄積されていくような製品や成分などがあれば、指定成分等含有食品として規制する方向性を提示している。現在までに公表されている18件の健康被害疑い情報の中には、異なる人物から、似たような健康被害が訴えられているものもある。同様の報告がさらに積み上がっていくようなことになれば、指定成分候補として検討される可能性も高まることになる。

 厚労省はまた、健康被害疑い情報への対応にあたり、指定成分選定の考え方も踏まえて「総合的に判断」する方向性を示している。指定成分選定の考え方については、厚労省の諮問機関、薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会の新開発食品調査部会が以前まとめており、成分そのもの及び成分に含有される化合物の生理活性、国内外における市場流通実態、食経験、国内外における健康被害・アラート情報、加工方法や含有化合物の濃度──などを挙げている。指定成分等含有食品以外のいわゆる「健康食品」のリスク管理のあり方は今後、指定成分等含有食品に対するそれに近づいていく可能性がある。

【石川太郎】

(下の画像:厚労省が示した健康被害要否報告の要否確認シートの案。有識者らの意見を踏まえて一部変更される見通し。厚労省公表資料から)

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