健康食品の新型コロナ便乗広告、根拠はニュース記事?(後)
新型コロナウイルス対策として、サプリメントが有効とする科学的根拠についてはどうか。取材に対し、同社は2本のニュース記事を根拠に挙げた。
その1つである「1日3gのビタミンCが新型コロナ予防に効果的/国際オーソモレキュラー医学会」というニュースは、健康食品業界紙の記事。3月3日に開かれた国際オーソモレキュラー医学会の記者説明会の内容を報じたものだ。
実は記者も、この記者説明会に出席していた。同医学会の関係者は、過去のいくつかの研究で、ビタミンCの風邪やインフルエンザなどに対する効果が確認されたと説明。また、中国のいくつかの病院で、新型コロナウイルスによる肺炎患者を対象に、ビタミンC点滴を併用した臨床試験が開始された旨を報告。そうしたことから、新型コロナウイルス対策にビタミンCが有効であると主張した。
(※ウェルネスニュースグループは、この記者説明会の模様を報道しなかった。ワクチンも治療薬もなく、世界中の多くの人が死亡したり、不安を抱えていたりする状況下で、裏付けが明確でないニュースを報道することはメディアとして無責任な行為であり、通常の健康食品に関する学術発表とは、性質が大きく異なると判断した。)
もう1つの「コロナウイルス患者を大量のビタミンCで治療するニューヨークの病院」というニュース記事は、米国の報道機関によるもの。米国の一部の病院で、ビタミンC静脈を併用して治療に当たっているという内容だ。
健康食品業界紙などのメディアが垂れ流したニュース記事は、合理的な根拠になり得ない。このことは、過去に行われた行政処分からも明らかと言える。
さらに言えば、同社の『イースペシャル メガビタミンC500[120カプセル]』は、「1日2粒で500㎎のビタミンCを配合」という。一方、国際オーソモレキュラー医学会は1日3gの摂取を推奨し、摂取量に大きな隔たりがある。この観点からも、表示を裏付ける根拠とならない。
(国研)医薬基盤・健康・栄養研究所では、「ビタミンDやビタミンCが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対しても効果があるようにうたう宣伝が見受けられますが、現時点ではそのような効果は確認されていません」と注意を呼びかけている。
消費者庁も、「新型コロナウイルス 感染予防サプリメント!! ビタミンCとビタミンD」、「ビタミンCはコロナウイルスから体を守る」といった表示には根拠がないと判断。健康食品販売業者の指導に乗り出している。
(了)