健康被害情報の報告義務化、詳細示す 報告期限は「15日以内」、制度改正説明会で厚労省
消費者庁と厚生労働省が機能性表示食品制度の見直しに関する説明会を全国で進めている。16日の九州を皮切りに、29日の関東・信越まで全国7エリアで行う今回の説明会は、会場とオンラインのハイブリッドで開催。説明に使う資料は同庁のホームページ上で公開しており、これまで明確でなかったところを詳しく解説している。来月1日からの実施が決まっている、健康被害情報の収集及び報告義務化に関する規定の内容が具体的に見えてきた。
医師の診断が前提、因果関係不明でも報告義務
機能性表示食品を届け出ている企業のほか、特定保健用食品の表示許可を受けた食品を販売している企業が義務付けられることになる健康被害情報の収集と、行政機関への報告に関する規定は、一義的に、食品衛生法に基づく食品衛生法施行規則(省令)に定められる。
規定を定めた改正食品衛生法施行規則は来月9月1日に施行、即日実施のスケジュールが以前から示されていた。ただ、どのような健康被害情報に報告義務がかかるのか、いつまでに保健所など行政機関に報告すればいいのかなど、義務のかかる事業者にとって重要になる規定が曖昧なままだった。
食品衛生法施行規則を所管するのは厚労省。同省健康・生活衛生局食品監視安全課の説明によると、報告対象となる健康被害は、「医師が診断した症例」のうち、製品の摂取との「因果関係が否定できないもの」とする。「因果関係が不明」なものも含む。
一方、医師の診断が前提になるため、健康被害を訴える消費者などの情報提供者が診断を受けた医療機関の名称を明らかにしない場合は、報告対象にしない。また、因果関係を否定する診断を医師が行っている場合のほか、「明らかに当該製品を摂取していない」、「喫食時期と症状の発生時期から当該製品による症状と無関係と考えられる」などといった場合も、「報告対象とはならない」とする。
同一症例が「概ね30日以内」に2例以上の場合
健康被害情報の収集については、厚労省が定める所定の様式(情報提供票)に基づき、義務のかかる企業が、情報提供者や診断を行った医療機関から症状、診断名、重篤度などを聴取することになる。その上で、報告義務が「生じる場合」については、「健康被害の発生及び拡大のおそれがある旨の情報を得た場合」との認識を示した。具体的には、同一製品による健康被害情報のうち、「同じ所見の症例が短期間で複数発生した場合」と説明。「短期間で複数」とは、「概ね30日以内」の間に、同じ所見の症例が「2例以上」発生した場合と規定する。
ただし、死亡事例のほか、医師が重篤と判断した症例については、たとえ1例であっても報告義務をかける。重篤事例が発生した場合、それ以降は、重篤度に関わらず同一所見の症例に報告義務をかける。行政機関への報告期限は、企業が、健康被害を診断した医療機関の名称を知った日から「15日以内」と定める。
こういった健康被害情報の収集及び報告義務に関わる細かな規定は、改正食品衛生法施行規則の関連通知で示すという。同通知は、今月23日に発出の予定だ。
情報は厚労省に集約、分析・評価の上で公表
厚労省は説明会で、報告された健康被害情報に、同省としてどのように対応するかも説明している。情報は、厚労省に集約の上、専門家が分析・評価を行った上で、「定期的に結果を公表する」という。分析・評価を担当するのは、厚労省の厚生科学審議会食品衛生監視部会の下に設置される「機能性表示食品等の健康被害情報への対応に関する小委員会」。月に1回のペースで会合を開き、健康被害情報の分析・評価にあたる。健康被害情報の報告を不要とするタイミングを判断するのも同小委員会になる。
同小委員会は、機能性表示食品や特定保健用食品以外の健康食品の健康被害情報も取り扱うことになる。厚労省は以前から、通知に基づき、健康食品全般の健康被害情報を収集し、専門家による分析・評価の上、定期的に情報の公表を行っていた。今後も公表の仕方を変えないのであれば、製品名や成分名などは公表されない。
説明会で消費者庁と厚労省が説明している内容は、今後、動画にまとめてYouTube上に公開する予定という。時間の制約がある説明会よりも詳しく説明する動画になる見通し。
【石川太郎】
(冒頭の画像:消費者庁と厚労省の公表資料から。資料は同庁のホームページで閲覧できる