消費者庁は30日、個別評価型疾病リスク低減表示トクホをはじめ2件の特定保健用食品を許可したと発表した。
　許可したのは、マルハニチロ㈱（東京都江東区）のフィッシュソーセージ『DHA入りリサーラソーセージω』とサントリー食品インターナショナル㈱（東京都港区）の茶系飲料『特茶s』の2品。

　関係者の関心を集めていたのはマルハニチロのフィッシュソーセージ。同品は、個別評価型疾病リスク低減表示トクホとして初となる保健用途を表示する。
　今年2月14日、「茶カテキン」を関与成分とする花王㈱（東京都中央区）の茶系飲料と「桑の葉由来イミノシュガー」を関与成分とするサントリー食品インターナショナル㈱の茶系飲料の商品とともに、消費者庁が消費者委員会に諮問していた疾病リスク低減表示トクホの1つ。3月3日に消費者委員会で審議を開始し、10月2日に許可する旨の答申を出していた。

　許可される表示は「この食品はドコサヘキサエン酸（DHA）とエイコサペンタエン酸（EPA）を豊富に含みます。日頃の運動とDHA及びEPAを含む健康的な食事は、将来、心血管疾患になるリスクを低減する可能性があります」。一方、パッケージには「一般に疾病は様々な要因に起因するものであり、DHA及びEPAを過剰に摂取しても心血管疾患になるリスクがなくなるわけではありません」との注意事項を記載しなければならない。

　消費者委員会では、5月29日に第55回新開発食品評価第一調査会（新開発食品調査部会）、8月4日に第57回新開発食品評価第一調査会（同）を開き、同品について審議を行った。
　最初の会合では、「血清中性脂肪を低減するのを助ける食品の1つです。血清中性脂肪が高いこ とは心疾患発症のリスクの1つです」といったEU型の2段階表示も提案されたが、観察研究や介入研究のメタアナリシスに基づいた科学的根拠について、健常者・境界域者に的を絞ったタイムテーブルを申請者に求めるなどし、結果として現在の表示に落ち着いた。
　
　議事録を見ると、カルシウムを関与成分とするトクホにおいて「歳をとってからの骨粗鬆症になるリスクを低減するかもしれません」などという表現が使われているが、委員の中から「歳というのはいつからか」、「30代などで心筋梗塞を起こす場合もあるの で、高齢者に特化するのはちょっとおかしい」などの意見も出されたことから、結果として「将来」という文言が用いられたという経緯が明らかになっている。

　疾病リスク低減トクホのマークのあり方にまで話が及んだ第57回会合では、ある委員の次の言葉で結ばれている。
　「この新しい分野のトクホというものをどのような形にするのかというのが1つの課題なのかなと感じている。おそらく企業はどんどん申請をしてくると思うが、（許可後に）大きな臨床研究をやって長期的に見るようにしていった方が、今後、疾病リスク低減の価値を高めると思うので、そこは少し明らかにした方が申請者にも分かりやすいと思う」

　他方、今回の許可に東京大学名誉教授の唐木英明氏は、「EPA・DHAの効果はすでによく知られ、豊富な使用実績があることから疾病リスク低減表示トクホとして問題はないと考える。茶カテキンも同様の理由で許可すべき。イミノシュガーもこれらと同様と考えるが、トクホとして許可実績のない成分という理由で食品安全委員会で安全性の審査が行われることになった。しかし、機能性表示食品としての多くの使用実績をなぜ認めないのか、トクホと機能性表示食品の安全性に違いがあるかのような仕組みに消費者は違和感を感じるだろう」とコメント。また、食品にプラセボ対照試験を用いていることに対して異議を唱える同氏は専門家の視点から、「効果の程度は確認できない試験法を使っているのだから、ヒト臨床試験を義務化しているトクホの方が効果が大きい、あるいは効果が確実などとは言えない点を消費者委員会は議論すべき」と、保健機能食品制度のあり方そのものに疑問を呈している。

【田代　宏】

〇議事録
・第55回 新開発食品評価第一調査会
・第57回 新開発食品評価第一調査会

〇これまでの経緯
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