一からわかる!化粧品広告規制~上級編(後)
今村行政書士事務所所長(化粧品薬事コンサルタント・MBA)
今村 彰啓 氏
後編:毛髪補修の表現について
<「恒常的に補修できる」という誤解を与えないように>
「化粧品等の適正広告ガイドライン」によれば、頭髪化粧品における毛髪の損傷部位などへの物理的補修表現は、化粧品の効能効果を逸脱しないように、以下の定義や範囲内で行う。あくまでも、その効果は当該化粧品を使用するときに限定するものであって、恒常的に補修ができるとの誤解を与えてはならない。
毛髪の損傷とは、物理的刺激または化学的処理により、毛髪からその構成成分が損失し、毛髪表面や内部組織の物性変化、剥離、空隙などが発生して傷んだ状態のことである。
毛髪の補修とは、損傷毛髪に対して、化学反応や薬理作用を伴わない補修成分を表面被覆させたり、内部浸透させたりして、表面や内部の損傷部位の空隙の密着などにより、物理的に損傷を補い繕うことであり、治療的な回復ではない。
認められる表現の範囲は、“化粧品の定義の範囲内の毛髪の損傷などの物理的な補修表現(事実であるものに限る)”とされている。具体例を以下に示す。
(1)一般的な補修表現
・髪を補修して髪の質感を整える
・傷んだ髪の毛先まで補修してなめらかに
(2)枝毛等の傷んだ髪の補修
・枝毛・裂毛・パサつきなどの傷んだ髪を補修
・枝毛をコートして補修
(3)髪の表面の補修表現
・髪の表面の凸凹を補修し、自然で美しいつや髪を
・補修成分がたんぱく繊維の隙間を埋めて補強し、キューティクルをコーティング補修
(4)髪の内部の補修表現
・○○成分が髪の内部まで浸透し、髪のダメージを補修します
(5)成分の特記表示の配合目的としての表現
・毛髪補修・保湿成分「○○」配合
・毛髪補修コート成分配合
<治療的回復表現は認められない>
一方、認められない表現の範囲は、“化粧品の定義の範囲を逸脱した、毛髪の損傷などの治療的回復表現”とされている。具体例を以下に示す。
(1)補修という用語を用いた不適切は表現
・毛髪補修成分が傷んだ髪を再生
・傷んだ髪を補修して健康な髪の再生を促す
・毛髪補修成分が髪の内部に浸透し、傷んだ髪が回復する
・毛髪を補修し、バージンヘアが甦る
・傷んだ髪を補修して本質から髪質改善
・ダメージヘアを補修(広告全体として治療的に回復する内容である場合)
(2)補修という用語と類似した、毛髪の損傷部分が治療的に回復するような表現
・傷んだ髪を修復します
・傷んだ髪が回復します
・健康な髪が甦ります
「治癒」、「回復」、「改善」、「快方」、「治る」、「治療」、「毛生」などの表現は、全て医薬品に対して使う言葉であるため、化粧品などでは使わないこととされている。
(了)