プレスリリース、「広告になり得る」 景表法、顧客誘引目的の表示全般を規制
消費者庁が㈱山田養蜂場(岡山県苫田郡)に下した景品表示法に基づく措置命令。業界関係者からは、景表法違反(優良誤認)と認定された表示媒体にプレスリリース(ニュースリリース)が含まれていたことに驚きの声が上がる。プレスリリースは広告に当たるのか。同庁では、「景表法は、顧客を誘引するための手段として行われる表示全般を規制する。本件もそれに従った」としている。
山田養蜂場への措置命令 業界にインパクト
山田養蜂場への措置命令が行われたのは9日。違反対象とされたのは、『ビタミンD+亜鉛』、『1stプロテクト』、『2ndプロテクト』のサプリメント3商品。あたかも新型コロナウイルスの感染予防、重症化予防の効果を得られるかのように示す表示を行っていたなどとして、優良誤認を認定された。
3商品のうち、プレスリリースが違反表示媒体に認定されたのが『ビタミンD+亜鉛』だ。このリリースは、山田養蜂場が同商品の新発売に合わせて昨年11月、同社のウェブサイトに掲載したもの。また、プレスリリース配信代行サービスを行う㈱PR TIMESのウェブサイトに掲載された同一内容のリリースも違反認定された。
このプレスリリースは、「新型コロナウイルス“第6波”に警戒を」、「<感染>と<重症化>どちらも予防したい…お客さまの声に応えて」などとタイトル部分でうたい、同商品を発売する意義を、新型コロナ対策の観点から強調する内容だった。「プレスリリースが違反とされたことには驚いたが、記載の内容は誰がどう考えても行きすぎだ」。措置命令の公表を受け、同プレスリリースの内容を把握した業界関係者はそう指摘する。
原則として、一般消費者ではなく報道関係者向けに発信されるプレスリリースの広告該当性について消費者庁では、「一般消費者の目に届くような状態で広くなされているものについては広告になり得る」(表示対策課食品表示対策室長)とする。また、同課ヘルスケア表示指導室長は、「基本的に景表法は、顧客を誘引するための手段として行われる表示全般を規制する」とし、「本件もそれに従った」に過ぎないと強調。プレスリリースも、景表法の規制対象となる広告・表示に該当するとの解釈を示した。
プレスリリースが景表法違反の対象媒体に認定されたのは今回が初とみられる。表示規制に詳しい業界関係筋は、「プレスリリースも広告だと見なし、行政処分を行ったインパクトは大きい」と指摘。「今後、プレスリリースの打ち方が変わっていく可能性がある」と推測する。
表示の裏付けとなる根拠資料、提出するも認められず
山田養蜂場は、当該プレスリリースに、海外の学術誌に2020年以降掲載された論文を引用するかたちで、新型コロナウイルス感染者に対するビタミンDと亜鉛の有用性を記載していた。
ビタミンDについては、2つの論文に基づき「新型コロナウイルスに感染した方や、重症化した方は血中のビタミンD濃度が非感染者と比較して低いことが報告」されていると紹介。亜鉛については、1つの論文に基づき、「新型コロナウイルスに感染した人のうち、血中の亜鉛濃度が高い人は回復するまでの日数が早く、死亡率も低かったとの報告」があると伝えた。
消費者庁は同社に対する調査で、景表法第7条第2項の規定(不実証広告)に基づき、表示の裏付けとなる合理的な根拠資料の提出を要求。これに対して同社は、同3論文を同庁に提出したとみられる。
これを認めなかった理由について同庁では、「いずれも、本件商品を健常人が摂取すれば、新型コロナウイルスの感染を予防できる、あるいは、重症化を予防できるということを立証できる合理的根拠とは認められなかった」(ヘルスケア表示指導室長)と説明した。「個々の論文の良し悪しを言っているわけではない」とも述べた。
【石川 太郎】
(冒頭の画像:山田養蜂場への措置命令について記者レクを行う消費者庁表示対策課)