プラズマ飲料、対前年42%増めざす
キリンビバレッジ22年事業方針 「ヘルスサイエンスを成長ドライバーに」
キリンビバレッジ㈱(東京都中野区)は、20日に都内で開いた2022年事業方針発表会で、人びとのヘルスケアに貢献するヘルスサイエンス事業を、既存飲料事業と並ぶ柱事業に成長させる方針を鮮明にさせた。キリングループの独自素材・プラズマ乳酸菌を配合した機能性表示食品などヘルスケア飲料の市場拡大をさらに加速させ、22年のプラズマ乳酸菌配合飲料の販売数量を前年比142%の760万箱まで引き上げる計画を公表。ヘルスサイエンス領域全体としては、同114%の2,320万箱の達成をめざす。2,320万箱は、22年の全体販売数量目標のおよそ1割。早期に2~3割まで引き上げたい考えも示した。
21年、166%で着地 販売数量534万箱
22年事業方針発表会では、今月1日付で就任した吉村透留社長自らが新たな事業方針を説明。『生茶』や『午後の紅茶』など既存飲料事業の再成長と収益強化に取り組むと同時に、ヘルスサイエンス領域をもう1つの事業の柱に育成して「健康に貢献する飲料企業」への変革を図る方針を示した。「この2つを両輪で回すことで持続的成長を実現する」。吉村社長は、21年について、同社の『生茶』など清涼飲料水全体の21年販売実績(数量)は前年比97%とマイナスだった一方で、機能性表示食品にリニューアルした『iMUSE』シリーズなどプラズマ乳酸菌配合飲料は同166%、販売数量としては534万箱にまで急拡大したと振り返った。
その上で、「2022年もコロナの影響が続くと考えられる。市場、お客様は、すでにニューノーマルの生活様式に突入した。健康に対するお客様の意識は一層高まる」との予測を示し、脱炭素化などサスナビリティへの意識の高まりも含めた「ニューノーマル」を前提にした持続可能な事業展開の必要性を強調した。「中長期的な人口減少で国内市場の縮小は避けられない。そのような環境下で、従来の『箱数主義』の飲料ビジネスを続けていたのでは、価格競争がさらに激化し、業界全体の収益を損なうことになる」との危機感が背景にある。
習慣化がカギ 消費者接点の広さ強みに
キリンビバレッジは22年以降、「ヘルスサイエンスをドライバーとする新たな価値創造への転換」を推進する。その中でヘルスサイエンス事業に関しては、①プラズマ乳酸菌を配合した機能性表示食品飲料など「免疫領域」のさらなる拡大、②小型ペットボトル機能性飲料による「〝朝の習慣〟領域」市場の獲得、③キリングループの独自素材・βラクトリンを活用した脳機能ケア飲料などの展開及び、キリングループと資本業務提携関係にある㈱ファンケルとのシナジー創出による新たな市場開拓──の大きく3施策に取り組む。
免疫領域の拡大では、清涼飲料水の消費者との接点の広さを生かし、効果感や即効性を感じづらく、そのため習慣化もしづらい課題の解消を図り、「(ヘルス)ケアの大切さをお客様に理解していただく」(同社)ことで、市場の創出と拡大を図る。
その一環で、〝朝の習慣〟領域市場の獲得にも絡む施策として、昨年12月に首都圏のコンビニエンスストア限定で発売していた100mLペットボトル飲料の機能性表示食品『朝の免疫ケア』の販路を3月末から全国に広げる。これにより、〝朝の習慣〟領域市場で定番の『R1』に代表される機能性ヨーグルトと同様のポジションを確立し、免疫ケアの定着を実現したい考えだ。
【石川 太郎】
(冒頭の写真:20日に開催されたキリンビバレッジ22年事業方針説明会で撮影。写真左が吉村透留社長、同右は山田雄一マーケティング本部長)