ブランドと消費者ニーズをマッチング 【周年記念商品&企業2023】ネスレ日本『キットカット』50周年
1935年にイギリスで生まれた『KITKAT(キットカット)』。日本で発売されたのは半世紀前の1973年9月。その後、2000年代からは受験生のゲン担ぎアイテムとして、さらに現在では家族や同僚、友人間で応援や感謝の気持ちを伝えるコミュニケーションツールとしても親しまれている。長年にわたる取り組みや新商品について、ブランドマネジメントを担うコンフェクショナリー事業本部インツーホームマーケティング部部長の村岡慎太郎氏に話を聞いた。
重視しているのは消費者インサイトの深堀り
「キットカット」と言えば、おいしいチョコレートと、サクサク食感のウエハースが作り出す絶妙な味わいが特徴。現在では、紙パッケージの大袋・箱・パウチなどに収められたレギュラー商品のほかにも土産商品や、素材や製法にこだわった「キットカット ショコラトリー」など、商品構成も広がりをみせる。
1990年代後半には、若者層にも認知を広げる出来事があった。九州地方の方言で「きっと勝っとお(絶対に勝つよ)」という言葉が「キットカット」と同じ語呂のため、九州の受験生がゲン担ぎとして購入するケースが増えているというのだ。
「同時期にブランドスローガンである『Have a break, have a KitKat®』の定義の見直しを進めており、“ブレイク”の意味を深掘りしていくと、受験のストレスからの解放(心のブレイク)に『キットカット』がマッチしているのではないか、という考えに至りました。そこから受験生応援キャンペーンなどの取り組みを始めるようになりました。
昨年、『キットカット』が前向きな一歩のきっかけとなったエピソードを募集したところ、2,000以上の応募数があり、私たちも勇気づけられる事例が多くありました。昨今の不安定な社会のなかで、前に進むことに躊躇している方や大切な人に応援や感謝の気持ちを伝えたい方に、『キットカット』を通して背中を押すようなサポートもしたいと考え、2022年春から『きっかけは、キットカットで。』をブランドのコミュニケーションに掲げています。」
現在ではコミュニケーションツールとしても使えるよう、個包装に「ありがとう」「ごめんね」などのメッセージもデザイン。これも消費者インサイトを深掘りした結果だ。
2つの味が1度に楽しめる同社史上初のコンビ商品誕生
今年3月1日には日本発売50周年で初となる、2つの味が1度に楽しめる『キットカット ミニ よくばりダブル 全粒粉ビスケットin & オリジナル』を発売。『キットカット ミニ 全粒粉ビスケット in』と、赤いパッケージでお馴染みの『キットカット』の2つの味を組み合わせた製品だ。
「“全粒粉ビスケット”によるザクザクとした食感と香ばしい風味はそのままに、『キットカット』のミルクチョコレートによる、ほどよい甘さを楽しめる商品となっています。また、商品特徴の”2つの味の組み合わせ”を分かりやすく楽しく伝えるため、ピコ太郎さんを商品の公式アンバサダーに起用し、ピコ太郎さんと一緒に“PPAP キットカット よくばりダブル ver.”が踊れるTikTok『#キットカットチャレンジ』も開催。多くの皆さんに楽しんで参加してもらいたいです。」
製造や宣伝の工夫もさまざまに行ってきたこの50年。「次代の若い人たちにも、先達や自分たちの思い、培ってきた『キットカット』ブランドを大切に伝えていきたい」と話す村岡氏。長年続くブランドになっているのは、「ブランドとして精力的に消費者をサポートしよう」との姿勢で臨んできたからこそだろう。
(聞き手・文:堂上昌幸)
(冒頭の写真:1973年発売当時のキットカット。下の写真:現行の箱入り商品)