胎盤から得られるプラセンタエキスもフェムテック・フェムケアに活用できる──そう提案するのは、プラセンタエキス製造販売大手のスノーデン㈱（明壁正英会長）だ。プラセンタエキスの用途は幅広く、注射薬が更年期症状の治療目的で利用されているが、症状が軽い場合には、一般用医薬品やサプリメントも選択肢の1つになり得るのではないか。有用性に関して一定の科学的な根拠もある。

更年期の軽微な不調と睡眠の質をケア

　2017年と20年、スノーデン製のブタプラセンタエキス（食品用）を使用したRCT（ランダム化比較試験）に関する論文が海外学術誌にそれぞれ掲載された。一方の論文は、軽度の更年期症状を有する更年期女性（日本人）に対して有効かどうか検証したもの。もう一方は、更年期に低下することもある睡眠の質が改善するかどうかを、主に20歳以上の女性（同）を対象に解析したものだ。

　これらのRCTが行われた背景には、同社が製造販売するプラセンタエキス配合一般用医薬品の購入者を対象にしたアンケート結果があるのだが、まずは２つのRCTの結果を見てみる。

　軽度の更年期症状を有する更年期女性にブタプラセンタエキスの摂取が有用かどうかを検証したRCT論文は17年、『Climacteric』誌に掲載された。このRCTは、（一財）日本胎盤臨床医学会に所属する医師を中心に実施したもので、医療機関にかかっていない更年期女性50人が試験に参加。更年期症状の有無や程度を調べるのに使われる簡略更年期指数（SMI）などを指標に有用性を調べた。

　試験期間は12週間。ブタプラセンタエキス摂取群には、健康食品として一般的な1日あたり300mgを摂取してもらった。その結果、摂取開始前との比較で、ブタプラセンタエキス摂取群のみ、SMIの総スコアが8週、12週で有意に改善。また、試験開始前からの変化量で見ると、プラセボ群との比較で有意な改善が12週目に認められた。その一方で、血中のエストラジオールなどの濃度に変化は認められず、ホルモンのバランスには影響を与えてはいなかった、という。

　他方、睡眠の質改善を検証したRCT論文は20年、『Frontiers in Nutrition』誌に掲載された。RCTに参加したのは睡眠の質に不満を持つ20歳以上の男女32人で、脱落者などを除き、女性を中心とする20人のデータを解析した結果を論文にまとめた。試験期間は2週間。1日あたり摂取量は、前のRCTと同じ300mgとした。

　試験の結果、睡眠時間などの客観的指標では、摂取前後比およびプラセボ対比のいずれについても、有意な改善は認められなかった。ただ、セントマリー病院睡眠質問票を用いた主観的な評価では、「睡眠の深さ」と「熟睡感（どれくらい眠れたか）」がプラセボ群との比較で有意に改善。また、「睡眠満足感」に関しては、ブタプラセンタエキス摂取群のみ、摂取前後比で有意な改善が認められた、という。

「疲れがとれた」、「目覚めスッキリ」

　このように2つのRCTでは、軽度の更年期症状にせよ、睡眠の質にせよ、ブタプラセンタエキスの継続的な摂取によって主観的な改善が見られた。つまり、ブタプラセンタエキスの継続的な摂取によってそれらの改善を「体感」できることが、RCTで示唆されたことになる。

　一定の体感を得られることは、前述のアンケート結果からもうかがわれていた。

　アンケートは、同社が製造販売する第2類医薬品『プラセントップ錠』（滋養強壮剤）の購入者に購入目的や体感などを尋ねたもの。約2千人から寄せられ回答をまとめた。

　その結果、体感の第1位は「疲れがとれた」。次いで「朝の目覚めがスッキリ」（2位）、「ヤル気が出た」（4位）、「寝つきが良くなった」（7位）、「肩こりが改善」（9位）、「生理痛軽減、生理不順改善」（15位）──などと続き、「更年期女性に見られる代表的な症状の改善を示唆する結果を示すものだった」と同社。それもあり、2つのRCTを実施することになった。

　動物由来の「エキス」を機能性表示食品の機能性関与成分とすることが可能になれば、プラセンタエキスは、フェムテック・フェムケア市場でさらなる飛躍を果たすこともあるのではないか。なにせ女性によく知られている素材。軽度の更年期症状に及ぼす機能性に関する科学的な知見の積み上げと、機能性表示食品の届出ガイドラインの改正が期待される。

【石川太郎】

＜COMPANY　INFORMATION＞
所在地：東京都千代田区岩本町3-7-16 井門岩本町第2ビル
TEL：03-3866-2828
URL：https://www.snowden.co.jp/biz/（企業向け）
事業内容：健康食品原材料・化粧品原材料・医薬部外品原材料
の製造販売、健康食品・医薬品の製造販売

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