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ニッピ、世界的な需要伸長追い風 【コラーゲン特集】課題に高付加価値製品の普及

 国内コラーゲンペプチド原材料市場シェアトップの㈱ニッピ(伊藤裕子社長)。2022年3月期のコラーゲンペプチドを含むゼラチン関連事業は、健康志向の高まりも背景に増収増益で着地。売上高は前期比13.9%増の103億8,500万円、営業利益は同107.1%増の5億6,600万円を計上した。22年3月期に増してコスト高が深刻化した23年3月期の状況はどうか。3月、ゼラチン事業部ゼラチン・コラーゲンペプチド営業部に取材した。

利益面は苦戦も、増える販売量

 「コラーゲンペプチドの需要は世界的に伸張している」。そう話すのは同部の長谷川勉部長。それを追い風にして23年3月期も販売量は国内外で順調に推移したと言い、「数量としては前期並みを見込んでいる」と話す。ただ、原料費やエネルギーなどユーティリティコストの大幅な上昇を吸収できず、利益面では苦戦。「販売価格の調整を実施しているものの、思うように浸透しない」(同)という。コラーゲンペプチドは1製品当たりの配合量が5~10グラムと多い事情もある。

 ニッピは1907年設立。36年にゼラチン製造事業に参入した後、76年にコラーゲンペプチドを事業化した。コラーゲンペプチド事業では、牛皮・豚皮・天然海水魚のうろこや皮を原料にした、分子量などが異なる各種製品を取り揃える「ニッピペプタイド」シリーズを長年、販売。近年では、成長途上にあるアジアや北米など海外市場でもシェア獲得を図るため、海水魚由来の「マリンコラーゲンペプチド」の製造販売に力を入れている。19年、静岡県富士宮市にコラーゲンペプチド製造専用施設(CQT棟)を竣工させ、メイド・イン・ジャパンの魚由来製品を国内外へ出荷するようになった。

 23年3月期のトピックスの1つは、マリンコラーゲンペプチドを機能性表示食品対応素材に進化させたこと。22年5月、同社で実施した研究レビューに基づき、次のヘルスクレームを届け出た。

 「魚由来コラーゲンペプチドには、肌弾力性を維持し、肌の健康に役立つ機能性があることが報告されています。また、紫外線により肌が赤くなりやすい方の肌を紫外線刺激から保護するのを助ける機能性があることが報告されています」。

 この届出を受け、競合他社に遅れたものの、コラーゲンペプチド配合食品を機能性表示食品として展開したい顧客らのニーズに応えられるようになった。届け出た研究レビューでは、同社製マリンコラーゲンペプチドの有効性を検証した査読付き臨床試験論文2報を最終的に採択。ヘルスクレームに新規性もあり、紫外線刺激から肌を保護する働きを表示できるようにしたのはコラーゲンペプチド単体として初だった。

 一方、届出サポートを開始してから日が浅いこともあり、機能性表示食品が販売量拡大を後押しするのはこれから。

 足元の需要について同社では、「一般的な美容食品向けのニーズに底堅いものがある。それに、ここにきてタンパク補給用途での需要が大きく伸びている。また、(国内で製造した)最終商品の海外輸出も盛んであることが、国内販売量が好調に推移している主な理由だろう」(同)と見る。認知度の高いコラーゲンペプチドは、ヘルスクレームを行わずとも安定した消費が見込める、ということでもある。

生理活性ジペプチド高含有の独自製品

 そうだからと言って、機能性に関する科学的根拠の検証を行う必要がない、ということでは全くない。「海外でもエビデンスが必ず求められる」(同)からだ。茨城県取手市を拠点とする同社のバイオマトリックス研究所が中心となり、エビデンスの積み上げを含めた研究開発の手を緩めていない。

 同社では、コラーゲンペプチドの「スペシャリティ」(高付加価値製品)も用意している。コラーゲンペプチドに含まれる生理活性を持つ特定のジペプチドやトリペプチドを高含有させるかたちで規格化した「Collagenomics(コラゲノミクス)」シリーズだ。

 コラゲノミクスシリーズも富士宮のコラーゲンペプチド専用製造施設で生産しており、メイド・イン・ジャパンの「次世代コラーゲンペプチド」として国内外に普及させたい考え。「我われの啓発活動が弱い面もあり、まだまだ普及に至っていないが、コラゲノミクスは肌以外の広い部位への有効性が期待できる。基礎研究からヒト試験まで、引き続きエビデンスを積み上げていく」(同)という。

【石川太郎】

(下の画像:2019年、ニッピが静岡県富士宮市に竣工したコラーゲンペプチド製造専用施設「CQT棟」。主に魚由来製品を製造する。同社提供)

<COMPANY INFORMATION>
所在地:東京都足立区千住緑町1-1-1(本社)
TEL:03-3888-5111(代表)
URL: https://www.nippi-inc.co.jp/
事業内容:コラーゲンケーシング・ゼラチン関連・化粧品関連・皮革関連事業など

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