エビデンス入門(66) 作用機序の説明に必要な根拠
関西福祉科学大学 健康福祉学部 福祉栄養学科 准教授 竹田 竜嗣
機能性表示食品や特定保健用食品(トクホ)において、機能性に関与する成分がどのような作用原理によって表示する機能を発揮するかについて、作用機序の説明が必要だ。作用機序の説明は、機能性表示食品では、機能性表示文言に作用機序が入る場合はヒトでの結果が必要である。また、ヒトでの臨床試験については、プラセボ対照試験による比較が必要であり、プラセボとの群間差が必要となっている点は、機能性表示食品のガイドラインのとおりだ。
一方、機能性表示文言に作用機序を含まない場合は、細胞、酵素活性や動物レベルのin vitro、in vivoレベルで良い。その作用機序の出展についても、論文などの出版物だけでなく、自社内の試験結果でも良い。作用機序の説明に当たっては、機能性表示文言が主観的表現だけの場合は、in vitroやin vivoレベルでの説明だけでは難しいため、ヒト試験の結果を含んで説明する方が分かりやすい。一方、血糖値やLDLコレステロールの低下など、血液検査で得られる指標の場合は、臨床的、薬理的作用が医学分野でかなり解明が進んでいるので、酵素活性や細胞、動物レベルでの説明だけで可能だ。
機能性表示食品の届出に関してデータベースを確認すると、同じ機能性関与成分、表示文言でも説明の程度は届出する企業によって差がある。特にこれまで作用機序の説明で大きく問題となったケースはないので、ガイドラインに書かれているとおり、機能性表示文言の作用機序が説明できれば問題ないとのことで、各社対応が分かれていると考えられる。
参考までに、医薬品の承認審査でも作用機序の説明は必要だが、作用機序の説明に当たってはいくつかポイントがある。一般には、薬理効果試験と呼ばれる試験が作用機序を含めた薬効を評価するのに用いられており、有効性を確認する試験では、作用機序を含めた評価を含んでいることが多い。
また、医薬品では、副作用の確認も必要となり、評価対象となることから副作用の起こる作用機序の確認も実施されることがある。また、動物とヒトでは薬理作用が異なるという考え方から、動物や細胞レベルでの作用機序確認だけでなく、ヒトでの確認は必ず行われている。薬物候補成分の血中への移行や代謝などの物質の変化まで追い、副作用の懸念について調べ尽くしておく必要がある。このように、ヒトにおける作用機序の確認は、非常に重要視されるべきで、機能性表示食品の届出についても、しっかりと確認する必要がある。
(つづく)
「エビデンス入門」全編はこちら
<著者プロフィール>
2000年、近畿大学農学部農芸化学科卒。
2005年、近畿大学大学院農学研究科応用生命化学専攻、博士後期課程満期退学。
2005年、博士(農学)取得。近畿大学農学部研究員、化粧品評価会社勤務、食品CRO勤務を経て、2016年から関西福祉科学大学健康福祉学部福祉栄養学科。
専門は、農芸化学分野を中心に分析化学、食品科学、生物統計学と物質の研究から、細胞、動物試験、ヒト臨床試験まで多岐に渡る研究歴がある。特に食品・医薬品の臨床研究は、大学院在籍時より携わった。機能性表示食品制度発足時から、研究レビューの作成およびヒト臨床試験など多くの食品の機能性研究・開発に関わる。
2023年1月、WNGが発信する会員向けメルマガ『ウェルネス・ウィークリー・レポート』やニュースサイト『ウェルネスデイリーニュース』で連載した「エビデンスの基礎知識」が100号に達したのを記念し、内容を改めて編集し直し、「開発担当者のための『機能性表示食品』届出ガイド」を執筆・刊行。