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エビデンス入門(53) 臨床試験の種類

関西福祉科学大学 健康福祉学部 福祉栄養学科 准教授 竹田 竜嗣

 機能性表示食品をはじめとした食品の臨床試験では、それほど多くない症例数での試験結果がそのまま科学的根拠になる場合が多い。しかし、本来の臨床試験においては、エビデンスの研究状況に応じて、探索的試験と検証的試験を使い分けるなど、複数のヒト試験の段階を経てエビデンスの根拠とする場合が多い。今回は、探索的試験と検証的試験の使い分けについて解説する。

 まず、薬の承認を得るために実施する治験を例にすると、治験では第1相試験と呼ばれる健常成人のみを対象とした臨床薬理試験と呼ばれる試験を実施する。この段階では、薬の候補となる物質を極少量から健康な成人に投与をして、徐々に投与量を増やしながら、体内における薬の濃度の変化や、尿などへの排出までの時間、身体に起きる不調や血液検査を通して確認する身体への影響について確認する。この段階では主として安全性の確認を兼ねて実施することが多い。

 この第1相が終わると、次が第2相と呼ばれる少数の患者を対象とした探索的試験の段階になる。第2相では、薬の候補の物質が効果を発揮すると考えられる疾病に罹患している患者に対して、薬候補の物質を投与して薬の効果や副作用の発現など安全性を確認する。また、第2相では、薬候補の物質の投与量は複数濃度が設定され、プラセボも設定して実施し、用量による違いや、プラセボと比較した際に効果があるかなども確認されることが多い。 

 この段階ではさまざまなアウトカムを設定して、より詳細に確認する。第2相試験で効果が認められた場合は、最終段階である第3相試験に移行する。第3相では、検証的試験とも呼ばれ、多数の患者を対象に薬の候補の物質を投与し、効果を確認する。第3相は、すでに同様の効果がある標準的な薬がある場合は、対照としてその薬を設定し、標準的な薬が無い場合は、プラセボを対照として設定する。

 この各段階の結果が、国による審査資料となり、国が認可すれば薬として認められる。特定保健用食品の許可においては、用量設定試験は、第2相試験と類似し、効果確認試験は、第3相試験と類似する。過剰摂取試験は、第1相試験と若干異なるが、安全性を確認する上では似ている。探索的試験で、効果の程度や用量反応を見極めてから、検証的試験でしっかりとエビデンスを確認することが強固な科学的根拠になる。機能性表示食品では、試験の実施に例数のしばりはないが、過去の事例も踏まえて検証的試験に近づけるよう試験デザインを組む必要がある。

(つづく)

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