エバーライフの障がい者サポート~取り組みと成果(後)
<社員の思いやりがバリアフリーに>
――雇用形態は契約社員と聞きましたが。
室園 本人はフルタイムの正社員雇用を希望していましたが、今のところ契約社員として雇用しています。何ぶん車いすによる出勤ですから、朝晩のラッシュ、移動と通勤に配慮し、体への負担も考えて朝9時から夕方4時までの契約から始めました。今後、様子を見て本人やご家族に負担がないようでしたら、相談の上でフルタイムの勤務も視野に入れています。
徳永 彼女は障害者枠ではなく、一般公募で入社しました。障がいを持っているから特別扱いをするのではなく、障がいを持っている彼女が健常者と同じように働き、同じようにコミュニケーションを取り、同じように評価されるようにならないと、彼女にとって一般企業に就職した意味がないのではないでしょうか。受け入れる社員たちも、身体的特徴としてできないことはフォローするものの、それ以外は健常者として彼女に接しており、過度な気を使ったりすることはなさそうに見えます。
室園 実際、日髙さんが働く上で、ほかにしてあげられることがないかと考える癖が付いたことで、他者に気を使う意識が自然と芽生え、社員が人間的に成長できているように思います。
――文字どおり、低い視線で相手に接する姿勢が養われるということですね。
徳永 障がい者の皆さんの雇用をどのように進めるのか。会社によってはバリアフリー環境を作るのが難しいという課題もありますが、投資によってそれをどこまで整えるかということだけでなく、社員の思いやりの力でカバーできることもあるなど、会社としてはかえって彼女に教えらえたこともたくさんあります。
<顧客への向き合い方を考えるきっかけに>
――今後も同じようなケースが?
徳永 採用するかどうかはそのときでないとわかりませんが、これからも障がいのあるなしに関わらず、柔軟な目線で人材の採用に当たっていきたいと考えています。今回は1人の社会人として巣立とうとする障がい者の学生を受け入れ、成長させるための環境を試行錯誤で整えているわけですが、その基盤が出来上がりつつあるのを実感します。
また、あの子がいるから頑張ろうという同期もたくさんいると思います。彼女の研修日報を見ると、受講した講師の話をどの社員よりも感受性豊かに受け止め、次の課題までこまやかに記しています。だからこそ、あの子に負けられないというより、彼女があそこまで頑張っているのだから、私たちももう少し頑張らなければならないという気になるのではないでしょうか。
――今後の期待は?
徳永 彼女の採用が会社の今後にとって大きな一石を投じる結果になったことは間違いなく、私たちが健康食品の通信販売会社として、お客様に対してどういうお付き合いをするべきなのかについても、考えるきっかけを作ってもらったと思います。採用に対しても、同様の考え方が必要であり、今回の日高さんの採用は、将来の当社の人材育成にも大きく影響するものとなるでしょう。そのなかで、社員の育成については、特にしっかり進めていくべき課題であると思っています。
――ありがとうございました。
※人事総務グループ・日髙美咲さん(20)の抱負
社員の皆さんには本当によくしていただいており、恵まれていると思っています。現在、人事総務グループのなかでも給与・労務担当を任されていますが、できることは増えてきてはいるものの、全体から見るとまだほんの一部なので、そこを増やしていって、どんどん会社に貢献できればいいなと思っています。
まだ自分で何をしたらいいのかわからない部分もありますが、ルーティンというか、そこが少しずつわかりつつあるので、そこから全体を理解できるように視野を広げていきたいと思っています。これからも会社に貢献したいという気持ちはもちろんですが、自分にできる仕事をもっと増やせるように頑張ります。
(写真:(右から)徳永義尚さん、日髙美咲さん、室園奈々さん)
【聞き手・文:田代 宏】
(了)
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