インデナ社、植物エキスのDNA鑑定に成功
インデナ社(イタリア)はこのほど、ビルベリーエキスのDNA鑑定に成功した。これまでも植物からのDNA鑑定は可能だったが、抽出工程などでDNAが壊れてしまうため、エキスでの鑑定はほぼ不可能だった。他社と共同で独自のポータブルキットを開発、約1時間で解析が可能になった。原材料の偽装やすり替えなどが絶えない業界にとって朗報だ。日本法人であるインデナ・ジャパン(東京都千代田区)の吉木拓セールスマネージャーに話を聞いた。
――植物エキスのDNA鑑定が可能に?
吉木??? 植物性原料の真正性を検証するための有効手段は遺伝情報の同定です。もともとインデナでは2010年にこのテーマに関する研究を開始し、薬用植物のトレーサビリティーを確保するためのDNAシークエンシングに基づく検査(DNAバーコーディング)をいくつも開発してきました。
――ある意味、自己防衛のためでもあるのですね。
吉木 実際には、インデナの顧客が購入、使用しているのは植物本体ではなく、植物エキスです。そのため、エキスのDNA解析を行うことが、品質と安全性を保証するカギとなります。ただ、植物エキスは抽出工程などでDNAが壊れてしまうため、これまでは鑑定がほぼ不可能でした。
――ビルベリーエキス『ミルトセレクト』でDNA解析に成功しました。
吉木 最も重要なことは、ビルベリーエキスが要求される化学成分を満たしているかどうかだけではなく、純粋なVaccinium myrtillus(バクシナム ミルティルス)という学名を持つ植物種からのみ製造されているかどうかという点です。
――DNA解析のメカニズムは?
吉木 遺伝情報を解析する方法は、精製と増幅という2つの重要なステップで構成されています。まず市販のキットを用いて、ビルベリーエキスのDNAを精製します。次のステップが増幅で、リアルタイムPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)プローブを用いてDNA断片を測定可能な量にまで増幅します。そのDNA配列を解析することにより、エキスに用いられた植物が本当にビルベリー(Vaccinium myrtillus)であるかどうかを正確に判断できます。
――解析にかかる時間は?
吉木 リアルタイムPCRプローブを用いた方法により、1時間ほどで解析できます。ビルベリーエキスの20ロットを別々に三重盲検で試験したところ、DNA精製の結果が非常に変動しやすいことを踏まえても、解析結果は非常に安定的で信頼に足るものでした。
――解析キットは市販されているのでしょうか?
吉木 はい。当社のパートナーであるハイリス社(イギリス)の手のひらサイズのポータブルな解析機と試薬セットで簡単に解析できます。解析機のDNAデータは、スマートフォンの専用アプリ経由でクラウドにあるDNAデータベースと照合されるので、野外でも鑑定結果を即座に知ることができます。
――ほかの植物エキスへの対応は?
吉木 順次開発する予定です。最近の研究によると、世界37カ国の約6,000種類の市販されている植物ベースの製品の品質を調査したところ、約3分の1が偽物だったという結果が発表されています。
――活用方法は?
吉木?? 欧米ではDNA鑑定が普及しつつあります。健康食品の販社には、消費者に対して、「自社の製品はDNA鑑定を受けた真正の原料から製造された安全な製品」というようなマーケティングやプロモーションのツールとしてお使いいただければと考えています。近い将来、製造バッチごとに発行している試験成績書に、DNAの確認試験結果も追加記載する予定です。
――ありがとうございました。
(写真:吉木拓セールスマネージャー)
【聞き手・文:田代 宏】