イッパーツ(一発)合格? 受験生を狙う『リポビタンD』(前)
<「受験には、集中力」のキャッチコピー>
現在、受験シーズン真っただ中。ウェブ上では、受験対策をうたう怪しげなサプリメントの広告が散見される。そうしたなか、今度は大手製薬企業が、受験生をターゲットにした栄養ドリンク剤の広告を開始した。受験生に栄養ドリンク剤を推奨するというなりふり構わずの販売方法に、非難の声が上がっている。
“ファイト・一発!”のフレーズでお馴染みの『リポビタンD』。栄養ドリンク剤(指定医薬部外品)の代表的な商品だ。大正製薬(株)が製造販売元となっている。主な成分はタウリン、イノシトール、ニコチン酸アミド、無水カフェイン、ビタミンB群。疲労の回復・予防などの効果があるとされる。
『リポビタンD』と言えば、かつては、タレントが崖をよじ登ったり、川を下ったりしながら、「ファイト・一発!」と叫ぶテレビCMが印象的だった。現在はラグビー日本代表を応援するCMなどを見かける。昔も今も、体力的に疲れたときに1本――というアプローチだ。
ところが、受験シーズン本番を迎えた1月中旬頃から、従来の路線と全く異なる広告が目立つようになった。受験生をターゲットにした広告である。「集中力の維持・改善に」、「受験には、集中力が必要だ」といったキャッチコピーとともに、『受験生応援セット』を紹介。桜の花のデザインを施した箱に、『リポビタンD』と『一発合格鉛筆』が入っている。10本セットと30本セットがある。『一発合格鉛筆』は、クイズプレイヤーの水上颯さんが合格祈願した品という。
御利益があるかどうか不明の『一発合格鉛筆』はご愛敬。だが、広告の「リポビタンDで目指せ、一発合格!」のキャッチコピーは、あまりにも悪乗りしているようだ。
受験に悩む子供たちにとって、「集中力の維持・改善」の訴求は魅力的。広告に飛び付く人も多いことだろう。受験生が『リポビタンD』を毎日飲みながら、『一発合格鉛筆』を手に受験勉強に励む姿が目に浮かんできそうだ。
広告には「1日1回1本(100mL)を服用してください」、「15才未満は服用しないでください」の記載もある。だが、キャッチコピーと比べると、かなり小さな文字で目立たない。一方、受験対策を前面に打ち出した広告は、大学受験に限らず、高校受験や中学受験を控えた15才未満の子供たちにも同様の訴求力を持つ。10代の子どもたちが“栄養ドリンク漬け”になる日も、そう遠くないのかもしれない。
(つづく)