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アフターコロナの市場に期待 【九州・沖縄】急がれる沖縄ブランドの認知度向上

 コロナ直前、日本全国の観光地が外国人観光客でにぎわう中、沖縄には、アジア圏を中心とした外国人観光客が数多く訪れていた。日本国内からのリピート訪問と相まって、過去最高の年間約1,000万人の県内訪問者数を記録。戻りつつある観光需要を取り込む動きと、観光需要に頼らない新たなビジネスモデルの構築が急がれる。長引くコロナ禍の影響を受ける沖縄のヘルスケア産業界の現状と、今後の展望をレポートする。

来沖観光客数に回復の兆し
3年ぶりに増加に転じる

 
 沖縄県内に本社を置く約60社が加盟する(一社)沖縄県健康産業協議会は昨年7月8日~26日の期間、会員企業を対象に、「沖縄健康産業実態調査アンケート」を行った。それによると、県内健康食品出荷額は、直近10年間で2018年度が138億2,688万円で最も多く、19年度が対前年比96.9%で133億9,142万円、20年度は同90.2%の120億7,740万円だった。18年度が最も多くなった背景には、一因として、沖縄を訪れる観光客数もあると考えられる。実際、沖縄県発表の「沖縄県入域観光客統計」を見ると、18年度は、年々来沖観光客数が増加する中、過去最高の1,000万4,300人を記録している。19年度は、コロナの影響が出始め、前年比53万5,100人減の946万9,200人だった。20年度は、過去最大の減少で同688万5,600人減の258万3,600人となっているが、21年度が同69万700人増と3年ぶりに増加に転じ327万4,300人となったことが下支えとなるか、今後に着目したい。

 コロナによる売上の状況はどうか。同調査によると、10%が「上がった」と回答。「変わらない」が21%となる一方で、「減った」は69%に及んだ。観光客減による需要の減少が大きく影響している。売上が上がった商品はどうか。免疫系の商品や除菌関連商品が売上を伸ばす中、「桑果実飲料」や、「フコイダン商品」などが伸びたとする回答があったとしている。国民のセルフメディケーションに対する意識の向上で、健康に良いとされる沖縄食品に着目する消費者も少なからずいたと想像できる。

販路とコストは永遠の課題
エビデンス研究に活路

 同協議会では、健康食品・化粧品業界として、今後取り組むべき項目についても調査した。それによると、「販路の強化」が最も多く、次いで「低コスト流通の確立」と続いた。地理的要因から、沖縄の産業界には、販路拡大と流通コストの問題は常に付きまとう。展示会への出展や通販市場への参入など、企業努力での取り組みは十分とは言えないまでも行われている。

 「県産素材のエビデンス研究」、「地域ブランドの取得」も上位を占めた。沖縄には、すでに市場に出ている食品だけでなく、伝統的に健康に良いとされる食品が、まだ豊富にある。また、すでに市場に出ている食品でも、まだ気付づいていない機能性や確立されていないエビデンスが埋もれているという。「県産素材のエビデンス研究」に基づいた、「地域ブランド」に対して期待する声も多いようだ。

機能性表示食品市場への期待
沖縄素材との組み合わせで差別化

 市場が拡大する機能性表示食品に期待する声も聞かれた。そこに沖縄色を組み合わせることで、本土にはない商品展開を図る。ソムノクエスト㈱(沖縄県那覇市の江口直美社長)は、睡眠評価や睡眠環境評価試験の受託などを行う一方で、睡眠・メンタルヘルスケアに関連した機能性素材の調査研究を行う。現在、機能性表示食品の届出を視野に入れ、同社主力素材の研究を進める。江口社長は、機能性表示食品の睡眠関連商品が増えていることに大いに期待を寄せ、「沖縄にある企業として、確かな機能性に沖縄らしさを織り交ぜた商品展開で、他社との差別化を図りたい」と話す。

 沖縄の主要マスメディアである沖縄テレビ放送㈱(同、船越龍二社長)の100%子会社で、同社の放送番組の企画・制作や不動産事業などを行う㈱沖縄テレビ開発(同、大田直也社長)は、ヘルスケア事業として2016年から研究・開発を手掛けてきた「トゲドコロ(クーガ芋))を使ったサプリメントの発売を今秋に予定している。立命館大学の研究チームとの共同研究による臨床試験を行うなど、確かなエビデンスの構築を図っている。担当者は、「展示会などを通じ認知度を向上させると同時に、機能性表示食品として展開できるように、さらなる研究を進める」と話す。

沖縄らしさを消費者に訴求
受託製造から直販へシフトチェンジ

 ㈱沖縄美健販売(沖縄県浦添市、宮國良和社長)は、これまで健康食品や化粧品の通販事業や店頭販売などを行うグループ企業の商品企画・製造を手掛けてきた。グループからの独立を機に、これまでの経験を生かし、自社製品の企画・製造にシフトチェンジ。沖縄のウコンを素材としたサプリメントの通販を開始する。数年以内には機能性表示食品としての展開も視野に入れている」と意気込む。

 琉球伝統調理、発酵技術を応用した沖縄スーパーフード素材の研究開発・製造・販売を行う㈱カタリスト琉球(沖縄県うるま市、稲福幸子社長)は、「モノグルコシルヘスペリジン」を機能性関与成分としたサプリメント『シンジムンの力 発酵シークヮーサー』を展開している。同社はこれまで、原料の研究開発に注力してきた。同社の稲福直専務は、「独自の製法によるOEM受託製造にも注力すると同時に、これらを武器にした差別化商品を自社商品として製造し、通販で展開する」と話す。製造から販売まで、できる限り内製化することで、大手や県外企業との差別化を図る。

アフターコロナを見据えた海外展開
市場は動き始める

 久米島で化粧品OEMを行う㈱ポイントピュール(沖縄県久米島町、大道敦社長)は、久米島海洋深層水を使用した化粧品のOEM・ODMを行う。コロナ禍で止まっていた海外案件が、今夏には台湾案件を筆頭に動き始める見込みだ。国内は、県内のホテル向けに提案してきたアメニティは、コロナ禍でいったんストップを余儀なくされたが、県外企業からの沖縄の地域性やストーリー性をコンセプトにした化粧品「リゾートコスメ」に対するニーズが高まっているとして、業績は順調に推移している。
 

 健康食品の製造・販売を行う金秀バイオ㈱(沖縄県糸満市、宮城幹夫社長)は、沖縄モズクから抽出するフコイダンを中心に、沖縄ならではの素材を使用した商品の提案を行う。東京都内で開催される展示会で、国内企業に向けた商品開発に関する提案を行うと同時に、アジア圏だけでなく、EU、米国市場も主要マーケットと位置付け、海外の展示会にも取り組む。

WOJに県外からの参加も
「沖縄らしさ」を維持して全国へ

 
 沖縄県健康産業協議会は2018年4月、認証制度「WELLNESS OKINAWA JAPAN(WOJ)」をスタートした。詳細は後段(6~11P)の座談会に譲るが、同認証の認知度の低さ、参画企業の少なさが課題とされている。
今後、県内外に広く認知され、認証制度の魅力度向上とともに参画企業の増加が求められる。
 
 引き続き、企業の動向を紹介する。

 
【藤田 勇一】

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