アフィリエイト広告検討会を総括!(4)
26条「適正管理措置」はソフト・ローの措置(後)
「管理上の措置」中身が肝に
――自主規制を行政が支援するのですね。
池本 そうです。業界側が法規制の強化に反対と主張するのは、実は誤解です。平行線や認識の違いなどが多少はありましたが、議論を重ねていく中でそれは何とか受け入れていただくことができました。大事なことは、今後、自主ルールあるいは未然防止の措置として何を入れていくかというところです。
――報告書の52ページ以下に「不当表示の未然防止策」とあります。
池本 「景表法第26条に基づく事業者が講ずべき表示の管理上の措置」としていくつかの指摘があります。私はこれが非常に大事なところだし、その中身をきちんと作っていただくことが今後の肝になるところだと考えています。
26条に基づく現在の「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」(2014年)では、不当表示を防止するための措置について①「景品表示法の考え方の周知・啓発」、②「法令遵守の方針等の明確化」、③「表示等に関する情報の確認」、④「表示等に関する情報の共有」、⑤「表示等を管理するための担当者等を定めること」、⑥「表示等の根拠となる情報を事後的に確認するために必要な措置を採ること」、⑦「不当な表示等が明らかになった場合における迅速かつ適切な対応」が示されています。苦情が寄せられたとき、社内でいつでも確認できるように情報共有をすべきとか、表示について営業部門や仕入れ部門の担当者が分からなければ、誰か責任者に問い合わせができるように表示の管理責任者を置くというものです。今回は、委託先や、その先のアフィリエイト広告の適正管理の問題なので、自社広告に関するガイドラインでは触れてない課題が出てくるわけです。
――例えば?
池本 特に重要なのは、現在の指針(第四の7)に対応するのですが、報告書56ページに「不当な表示等が明らかになった場合における迅速かつ適切な対応」で、「広告主(広告代理店等を通じて取引する場合も含む。)とASPやアフィリエイターとの間で取り決められるべき契約事項についても、業界の標準的な基準となるような様式を整理・検討を行うことが必要」とあります。つまり、自社広告なら社内での確認だけで済むけれど、ASPやアフィリエイターとの間の契約条項の中で、どういう広告かを入手して確認しないことには判断がつかないので、そのあたりもきちんと取り決めが必要、ということです。
それから57ページの(イ)の「問題があるアフィリエイト広告の是正・削除及び委託契約解除」、この辺が大事になってきます。これは、従来の自社広告とは違った措置になるわけです。委託先の再委託先の広告は第三者がやったことだから広告主は関係ないではなくて、そこも責任を負わなければいけないのだから、不当表示があれば是正を求めるか、削除しなさいということです。
委託契約の中に、あらかじめどのような契約条項を入れておくかが大事なのです。是正を依頼をして、応じなければ広告主との委託契約を解除する。委託契約の中にそういう条項を入れるべきであるという話です。あるいは不当表示によって報酬が発生した場合に、報酬の支払い停止や、すでに支払った報酬の返還を求めることもあらかじめ規定することが必要でしょう。
広告である旨を表示すべき
――広告である旨の表示についてはいかがでしょうか。
池本 冒頭お話したとおり、今回の検討会の提言の中で、実効性を持つ是正につながるかどうかはここにあると思っています。そして、それを検証する上で大事になるのが、委託を受けた広告である旨の表示をきちんとさせる。これがないことには、(消費者被害が)増えたのだか減ったのだか全く見えないし、一般消費者も判断がつきません。
――法規制についてはどうでしょう。
池本 私は、業界の自主規制に向けた努力が報われるためにこそ、その業界で新たに作るルールを視野に入れ、外側のアウトサイダーを規制できる法規制を入れた方が自主規制に取り組む業界にとってもプラスではないかという発言をしました。その部分については一歩先の話になりますが、何らかの法規制を加えた方が良いのではないかと思います。
もちろんそうならずに、自主規制によって悪質業者も改善してくれれば一番いいのですが、なかなかそうはいかないのでは。ここはしばらくは注視するところです。
――協議会の設立については。
池本 各事業者、業界団体も含めて横断的に、しかも行政も関与した協議会を作るべきだという発言は業界側から出たのです。ただ、検討会の最終回まで話を聞いていて、その協議会が何をするのかというのが今ひとつはっきりしなかった。
私は2つあると思います。1つは、広告主とASPの契約条項、ASPとアフィリエイターとの契約条項などを、いきなりモデル条項案とまではいかなくても、各事業者がこういう条項で縛りをかけるようにしたらどうかという案を協議会の中で互いに出し合う。それを各団体のモデル条項か、ガイドラインかに整理する。それを会員事業者が自分のところの契約条項として活用するという取り組みです。
もう1つは、最初にASPやアフィリエイターに委託する時点で、どこまでチェックするのかのルール化です。広告主が全部を毎回チェックというのは現実には難しい。そこでASPの役割が重要となるのです。広告主がきちんと対応してくれるASPを選ぶことができれば、その方が効率的です。そこでASPがどういうルールで、どおkまでやりますというルールを見える化していく。そうすると、広告主はそういうところを選ぶことができる。そういうふうに誘導していけば、アウトサイダーが淘汰されて、ちゃんとしたところを選んでもらえるようになるのではないかと思います。
――企業、団体、行政に対して一言。
池本 検討会の報告書で出された自主的なガイドラインを速やかに作り、それを受け止めて業界内で協議会を立ち上げて早く運営をスタートしてほしい。そして、アフィリエイターあるいはASPのそれぞれの契約条項や取り組みを速やかに始めてほしいというところです。
――ありがとうございました。
(了)
【聞き手・文:田代 宏】
<池本弁護士プロフィール>
1982年4月 弁護士登録(埼玉弁護士会所属)
(以下、現職)
日本弁護士連合会消費者問題対策委員会委員、明治大学兼任講師 法学部・法科大学院(消費者法)、国民生活センター 客員講師、適格消費者団体埼玉消費者被害をなくす会 理事長、消費者庁アフィリエイト広告に関する検討会委員、消費者庁特定商取引法等の契約書面等の電子化に関する検討会委
<主な著書>
日弁連消費者問題対策委員会編「消費者法講義(第5版)」(2018年日本評論社)、齋藤・石戸谷・池本「特定商取引法ハンドブック(第6版)」(2019年日本評論社)、後藤・池本「割賦販売法」(2011年勁草書房)、後藤・齋藤・池本「条解・消費者三法(第2版)」(2021年弘文堂)