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どうなる?2023年の健康食品業界 【記者座談会】激動の22年をふり返りながら記者が展望する(中)

健食広告の苦情激減 背景に商材のシフト?

A 興味深いと感じたことの1つに、健康食品に関する消費者からの苦情相談件数が大幅に減って、逆に化粧品は大幅に増えたことがある。国民生活センターが8月に公表した「PIO-NETにみる2021年度の消費生活相談の概要」でそう紹介されていたな。

B それは僕も興味深いと感じた。JARO(日本広告審査機構)に寄せられる苦情件数も全く同じ傾向を示していて、化粧品や医薬部外品が大幅に増加した一方で、健康食品は激減。21年度の下半期からそうした傾向が見られ始めたとJAROでは言っている。広告が改善された面もあるのかもしれないけど、ネット広告の出稿件数が減ったのが最大の理由ではないかな。苦情が最も多い媒体はネット。ネット通販のメイン商材が健康食品から化粧品や医薬部外品にシフトしたということ。健康食品市場の伸びが鈍化した理由にもなっている気がする。まあ、JAROの最新報告によれば、化粧品、医薬部外品も苦情件数が減少傾向だったけどね。

C ネット広告の世界では今、機能性表示食品以外の健康食品の広告出稿が難しくなっている、という話を関係者から聞いた。媒体側が受け付けないらしい。健康食品のネット広告が減ったのだとすれば、それが理由になっているのかも知れない。

B 確かに、JAROは保健機能食品の広告に対する苦情の増加を指摘している。苦情が増えているのが機能性表示食品の広告だとは明言していない。でも、トクホの広告ってどれだけ見かける? 機能性表示食品に関して増えていると見て間違いないだろうね。特にSNSの広告に対して苦情が増えているのかもしれない。Twitterを眺めていると、「これ大丈夫?」と不安になる広告が出てくることがあるよ。

C SNSの広告は危うい。化粧品や医薬部外品の広告の苦情件数が増加した背景には、SNSやYouTubeの広告の影響もあると思う。特に動画は、使った後の変化を表現しやすいため訴求力を高められる特性がある。

 僕の知り合いが、YouTubeの動画広告の制作を請け負っている。主に化粧品やエステティックサロンの広告を作っているのだけど、表現がかなり危うい。そう指摘したら、知り合いは「今のところは大丈夫だ」と。つまり「今後ダメになるかもしれない」という認識を持ちながら仕事を請け負っているわけだ。ステマ(ステルスマーケティング)広告に対する法規制が23年秋にも施行される見通しになっている。今後、健康食品だけでなく、化粧品や医薬部外品の広告に関する行政処分が増える可能性があるぞ。

ハードカプセル問題、どこで間違えたか

C 22年は健康食品業界にとって本当に大変な年になった。夏ごろ、ハードカプセルに関する問題が勃発したのも忘れられない。食品添加物の目的外使用を行っていたとは想像すらできなかった。

 流動パラフィンと二酸化チタンね。どちらも国が安全性を確認した食品添加物だけど、健康食品用ハードカプセルの製造目的で使用することは食品添加物の基準から外れていた。空のハードカプセルを製造販売する国内大手2社がほぼ同時に出荷を止めることになったから、この問題をめぐっては業界が大混乱したね。特に、受託メーカーは本当に苦しかったと思う。カプセルが無くて製造できない商品も出たから、その商品を愛用していた消費者にも影響を与えたことになるね。

 その2社は空カプセルの自主回収も行うことになった。充填済みのカプセルを自主回収しなかったのはなぜだ?

 その2社を管轄する保健所がそう指導したってこと。ただ、別の保健所では、安全性に関する懸念がないのだとしても「違反は違反」ってことで、充填済みのカプセルも含めて自主回収する必要があるとの見解を示したところもある。それが混乱を大きく助長させたよね。最終的に、厚労省が見解(充填済みカプセルの自主回収等は不要)を自治体などに通知することで混乱を収めることになったけど、通知を出すまでに時間がかかった。もっと早く出せなかったものかね。

C この問題について食品衛生法の専門家に意見を求めたところ、厚労省は「超法規的措置」を行ったと語っていた。食品添加物の目的外使用は食衛法違反である一方で、行政処分を行っていないのであるから超法規的措置だと。国民の身体・生命上のリスクは考えられないこと、国として食品ロスの削減を推進していることなどがそう判断した理由ではないか。ただ、この専門家も指摘していたが、日本は法治国家。違反を行っていた以上、数日間だけだとしても業務停止命令など行政処分を行うべきではなかったかと思う。

A こんなに大きな問題になってしまった理由はどこにあるのだろう。どこで何を間違ってしまったのだろうか。

B この問題はまだ終わっていない。回復しつつあるけれど、クオリカプスなど2社のハードカプセル供給体制が元に戻ったわけではないからね。ハードカプセルから錠剤に剤型を見直す必要に迫られる場合も出ている。どこで間違ったかと言えば、そもそもその食品添加物をハードカプセルの製造目的に使っていたことが間違いであって、使っていた理由を説明する責任がクオリカプスなど2社にはあると思うけれど、間違いは初動にあった気がするよ。問題が明らかになった後すぐにクオリカプスが業界団体に相談して、業界団体と一緒になって、その食品添加物の使用基準を変更して健康食品用ハードカプセルの製造にも使用できるよう厚労省などに働きかければ、ここまで大きな問題にならなかったのではないか、と思うな。今後の教訓にすべきだよね。

(つづく)

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