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対象論文32報中18報が『薬理と治療』 その原因は? 消費者庁の対応は?

 9日放送のNHKスペシャル「追跡・“紅麹サプリ”健康志向の死角に迫る」では、「死角」の1つとして、臨床試験や研究論文のあり方が問題として取り上げられた。

 同番組でも報じられたとおり、元・国保旭中央病院医長の染小英弘氏らのグループが、国内の食品CRO機関5社がUMIN登録した機能性表示食品に関する論文32報と、それらの論文を利用した8社11件の広告およびプレスリリースについて調査を進めたところ、論文の抄録の結果に72%、同結論81%、論文の結果に44%、同結論84%に誇張表示(スピン)が見られた。また、その論文を引用した6社8件の広告やプレスリリースにもスピンが認められた。このことは、ウェルネスデイリーニュース(WDN)でも既報のとおりである。

 編集部では、32件のうち18件の論文を掲載していた学術誌『薬理と治療』を発行するライフサイエンス出版㈱(東京都世田谷区、須永光美社長)に対して、「査読期間」、「論文受理の割合」、「スピンを指摘されたことに対する受け止め」などについて質問を行った。
 また、容易に改善されない誇大表示に対する考え、事後チェック体制や食品CRO機関に対する指導体制などについて消費者庁にもその対応を聞いた。

ライフサイエンス出版との一問一答

Q:貴誌の査読制度について、平均の査読期間は?
A:約2週間。

Q:小改定で受理する割合、追加実験など大改定で受理する割合、リジェクトの割合は?
A:直近1年間の採択率は73%。なお、小改定と大改定の明確な定義付けをしていないため、それぞれの採択率は検討していないが、不採択以外の場合でも、修正・再検討をお願いするケースがほとんど。

Q:論文の採否を決定するのは編集委員会、編集委員長、事務局のいずれか?
A:編集委員会だ。

Q:貴誌の論文で多くのSpinが指摘されたことについてどのようにお考えか?また、指摘に対して対策は?
A:今回のJournal of Clinical Epidemiologyの論文で調査対象とされた32のRCT論文のうち、「薬理と治療」誌掲載論文は18件だった。
 「考察」、「結論」で指摘されているとおり、機能性表示食品の問題点を改善するには、企業、食品研究者、試験登録システム、行政などさまざまな角度からの検討が必要と思われるが、その中にあって食品関連論文を多く掲載している小誌としても、今回の指摘を真摯に受けとめ、「レフリーの人数を増やす(編集委員と編集委員から委託された専門家2名または3名のレフリーで査読)」、「RCT論文の投稿に際しては、CONSORTチェックリストを添付してもらう」など、投稿規程の改訂も含め逐次検討・改善を行っている。

Q:貴誌の論文で多くのSpinが指摘されたことについて、編集委員会でこの問題を検討したことがあるか。
A:ある。

Q:査読者の決め方について、編集協力者が査読をすることがあるか。
A:ある。

Q:「Spin」があるとして批判された論文の多くが「薬理と治療」に掲載されたもだが、これは査読制度の問題であり、編集委員会の問題であるという指摘がある。この点について、寺本民生編集委員代表の見解と対策は?
A:編集委員会の見解として回答する。Spinについては、どのような一流誌でも一定程度指摘されているし、そもそもの責任は著者にあると考えている。
 もちろん査読を厳密にすれば多少は減らすことはできると思われるが、査読にも限界があることも事実。
 ただ、現実にSpinがあるとして批判された論文が 「薬理と治療」に多く掲載されているという指摘については真摯に受け止めており、本誌ではレフリーの人数を増やし、CONSORTチェックリストを添付していただくなど、投稿規程の改訂も含め、逐次検討・改善を行っている。
以上

消費者庁との一問一答

Q:消費者庁はこれまで、機能性表示食品の表示に対して措置命令や事後チェックによる一斉監視、その後の改善指導を行ったことがあるが、それでもまだ行き過ぎと思われる広告表示が散見される。現状についての考えは?
A:(表示対策課 担当課長)発覚した問題表示事案に対して、都度、粛々と対応する。

Q:事後チェックを行う場合の体制について、臨床試験や統計といった疫学的専門知識を持った人員が関与しているのか?
A:(食品表示課)監視体制についての回答は差し控える。

Q:染小医師による「『有意差保証プラン』の衝撃」にもあるが、食品の臨床試験を受け負う一部の食品CRO事業者の体質に対して以前から指摘する声があった。こうした事業者に対する監視・指導体制は?
A-1:機能性の科学的根拠として、臨床試験(ヒト試験)を実施する場合は、原則として特定保健用食品の試験方法(※)に準拠することしている。また、安全性の臨床試験を実施する場合にも特定保健用食品の試験方法を参照し、過剰摂取時及び長期摂取時における安全性を確認することとしている。
※「特定保健用食品の表示許可等について」(平成26年10月30日消食表第259号)の別添2「特定保健用食品申請に係る申請書作成上の留意事項」に示された試験方法
※臨床試験については、同通知にて「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」に従い、臨床検査指針に基づくものとして留意事項を定めている。

A-2:科学的根拠として提出される臨床試験については、当該指針に基づき試験計画書の作成、試験の実施、その結果を踏まえ、機能性について届出されているところであるが、食品の臨床試験を受け負う一部の不適切な事業者については、消費者庁としても課題と考えている。

Q:一部の不適切な事業者の存在は把握し監視しているが、現時点では特に指導までは行っていないということか? そうだとすれば、今後、こうした事業者をどうするのか? 
A:(食品表示課)機能性の科学的根拠がないと判断される場合にあっては、機能性表示食品としての要件を欠き、食品表示基準違反の恐れがある。
以上

 この先改善が進むかどうか、WDN編集部では継続的に調査していく予定である。

 【藤田 勇一】

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