1. HOME
  2. 健康食品
  3. エクオール訴訟、専門家はどう見るか 創成国際特許事務所・松井茂弁理士がポイントを解説

エクオール訴訟、専門家はどう見るか 
創成国際特許事務所・松井茂弁理士がポイントを解説

 更年期女性向けの機能性食品成分「エクオール」の製法をめぐる特許侵害訴訟。需要の拡大が見込まれる成分であること、加えて、大塚製薬㈱(東京都千代田区)と㈱ダイセル(大阪市北区)という大手企業同士の争いであること、さらに、原材料供給を受けている先にも影響が及ぶ可能性があることを背景に、サプリメント業界の耳目を集めた。この訴訟のポイントを専門家はどう見るのか。ベテラン弁理士が解説する。

特許分割出願戦略に注目

 大塚製薬は、2014年4月より、『エクエル』という商品名で大豆由来エクオール含有サプリメントを販売している。一方、ダイセルは、13年頃より『フラボセル』という商品名で、エクオールを含有する大豆胚芽抽出発酵物を販売している。大塚製薬は外部への販売は行っておらず、ダイセルがその役割をほぼ一手に担っている。
 
 大塚製薬は、エクオールに関するいくつかの特許出願をし、複数の特許を成立させて、その特許権に基づいて、㈱ダイセルから原料を購入してエクオール含有サプリメントを販売している㈱アドバンスト・メディカル・ケア及びダイセルに対して特許侵害訴訟を起こしている。

 そのうちの1つは、特許第5946489号に基づいてなされた裁判であり、東京地方裁判所の原審(平成29年(ワ)第35663号)でも、知的財産高等裁判所の控訴審(平成31年(ネ)第10015号)でも、大塚製薬㈱側の請求が棄却されている。
 
 上記特許の請求項1は、「オルニチン及びエクオールを含有する大豆胚軸発酵物」という発明であった。

 この裁判では、特許発明の「大豆胚軸発酵物」に、被告製品の「大豆胚軸抽出物の発酵物」が含まれるかどうかが1つの争点となったが、知財高裁の控訴審では、非侵害と認定している。本件明細書では、「大豆胚軸発酵物」の発酵原料として「大豆胚軸抽出物」と「大豆胚軸」とを明確に区別した上で、コストが高く、エクオール産生菌による発酵のために別途栄養素が必要になる「大豆胚軸抽出物」は、発酵原料に適さないことの開示があることに照らすと、かかる「大豆胚軸抽出物」を発酵原料とする発酵物は、本件発明1の「大豆胚軸発酵物」に該当しないものと解するのが相当であるとされた。
 
 しかし、大塚製薬は、上記敗訴に屈することなく、特許第6275313号に基づいて、アドバンスト・メディカル・ケア及びダイセルに対してさらなる特許侵害訴訟を起こしている。
 
 この裁判では、東京地方裁判所の原審(平成30年(ワ)第18555号)では、非侵害と認定されたが、知的財産高等裁判所の控訴審(令和2年(ネ)第10059号)では、原判決が取り消され、アドバンスト・メディカル・ケアの製品及びダイセルの原料は上記特許の侵害であると認定された。それらを生産し、譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸し渡しの申出をし、又は輸出してはならないこと、製品や原料を廃棄することが命じられている。
 
 上記特許は、ダイセルから無効審判を2回請求されたが、大塚製薬は、その都度訂正請求をして、特許を維持する審決を得ている。それぞれの審決に対して、ダイセルは、知財高裁に審決取消訴訟を提起したが、いずれも請求が棄却されている(令和元年(行ケ)第10112号、令和2年(行ケ)第10150号)。

 上記特許の請求項1は、2度目の訂正請求によって「ダイゼイン配糖体、ダイゼイン及びジヒドロダイゼインよりなる群から選択される少なくとも1種のダイゼイン類にアルギニンを添加すること、及び、前記ダイゼイン類と前記アルギニンを含む発酵原料をオルニチン産生能力及びエクオール産生能力を有する微生物で発酵処理することを含む、オルニチン及びエクオールを含有する粉末状の発酵物の製造方法であって、前記発酵処理により、前記発酵物の乾燥重量1g当たり、8mg以上のオルニチン及び1mg以上のエクオールを生成し、及び、前記発酵物が食品素材として用いられるものである、前記製造方法」となっている。
 
 このように、この特許では、「大豆胚軸発酵物」に限定せず、「前記ダイゼイン類と前記アルギニンを含む発酵原料をオルニチン産生能力及びエクオール産生能力を有する微生物で発酵処理する」という構成要件にして、再度の侵害訴訟を行い、勝訴している。
 
 ところで、特許侵害訴訟に使われた2つの特許は、いずれも分割出願によって成立したものである。分割出願とは、2つ以上の発明を包含する特許出願の一部の発明について、新たな特許出願をすることをいい、所定の要件を満たすことにより、原出願を出願した日に出願されたものとみなす遡及効が得られる出願である。分割出願は、最初の出願からだけでなく、分割出願をさらに分割出願することも可能であり、特許戦略の1つとして活用されている。
 
 大塚製薬の特許第6275313号は、08年6月13日に出願されたPCT出願から国内移行した特願2009-519326を原出願として、分割出願を繰り返し、第3世代の分割出願として成立している・・・
 
 続きは「Wellness Monthly Report第47号」で詳説(WNG会員は新しいパスワードでオンライン購読が可能)。松井弁理士が大塚製薬の特許分割戦略について考察、今後の成り行きを推測している。

松井茂弁理士プロフィール:千葉大学園芸学部農芸化学科卒。1980年12月弁理士登録、82年4月松井特許事務所開設、2019年7月特許業務法人創成国際特許事務所と合併。現在、同事務所のパートナー弁理士として勤務中。

【関連記事】
エクオール製法特許侵害訴訟、大塚製薬が勝訴を宣言 製造販売が禁じられることになる?

TOPに戻る

INFORMATION

お知らせ

LINK

掲載企業