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これでいいのか?日本の健康食品制度(4) 【座談会】グローバル展開に向け、サプリの制度化は必要か?

唐木 それでは次の問題に移りましょう。製造品質管理のグローバルスタンダードに向けた取り組みに向けてですが、これは話がすでに出ましたが、GMP認証機関に対する行政が関与しないという現状はどういうふうに見るのか。GMPの義務化は必要かどうか。サプリメントの制度化は必要かどうか。いかがでしょうか?

武田 これまでと重複する部分もあるかと思いますが、まずここにあるグローバルスタンダードというのは、アメリカのようにダイエタリーサプリメントそのものを規制する法律がある国もあれば、EUのように食品のルールがあって、ヘルスクレームのルールがあって、ノベルフードのルールがあって、さらにフードサプリメントのルールがあるという、階層的に構築している国もあります。その中で、この安全性と品質と製造とが、ヘルスクレームともセットになってくると思うのですね。
そのヘルスクレームをする商品も、食事を補うといういわゆるサプリメントの位置付けのものと、日本の機能性表示食品で多いのですけれども、飲料とかヨーグルトとか、一般加工食品の中に機能性成分を添加して一般食品の形をしているものがあります。こうなると、かなり管理が難しいということになります。

サプリの定義を作り、GMPを義務化し国が担保

武田 やはりカプセル・錠剤のような過剰摂取によるリスクが高いものは、当然消費者はヘルスベネフィットを期待して摂取するわけですから、その有効成分がちゃんと表示どおりに入っているか、多過ぎてもいけないし少な過ぎてもいけない。また異物の混入がないという点も合わせてクリアしていくには、サプリメントの定義が決まってないと、GMPでどこからどこまでを見るのか分からなくなる。
アメリカの場合はDietary Supplementと表示がありますので、これはサプリメントであると判断できるのですが、ここ数年、「サプリメントの非ピル化」という現象が進んでいまして、グミのサプリメントとか、チョコレートのサプリメント、清涼飲料水のサプリメントなどが出始めています。そうなるとかなり混乱するのですが、唯一の救いが全てにおいてcGMP準拠を義務付けられているという点です。たとえチョコレートであろうとも飲料やグミであろうともcGMP準拠の工場で作らなければならないということ、ここが唯一の救いどころだと思うのです。

 一方日本ですと、カプセル・錠剤の受託製造会社さんのような品質管理をしているところであれば、町のチョコレート屋さんとは当然、品質管理体制が異なっていると思います。それで同一レベルの品質管理というのはなかなか難しいのではないか。これだけヘルスクレームのある商品が増えてきますと、そろそろサプリメントの枠組みというものがなければ規制できなくなってくるのかなと思います。
 また、海外展開を考えると、アメリカのcCMPがいろんな国で評価されるのは、FDAが遵守を義務付けて、FDAが査察をしてコンプライアンスを守らせているという部分があるからです。日本のトクホ成分の安全性は海外でも通用する場合があるのです。それはちゃんと国が審査して許可しているからです。ですから、国が審査して評価したという部分は、他国もそれを評価すると思いますので、やはり国の関与というものがないと、今後、海外展開は厳しいのではないでしょうか。保健機能食品も海外展開を目指すという構想があるみたいですけれども、もし本気で目指すのであれば、安全性とか品質管理のようなリスクマネジメントに関する部分は国の関与、国の後押しがないとなかなか通用しないという部分はあるかなと思います。
 そういう意味で、サプリメントのきちんとした定義を作り、サプリメントはGMPを義務化する。そして義務化の担保は国が行う。そうすればグローバル展開は見えてきます。そしてそのためは、法改正などの手続きが必要だと思います。

製品輸出の場合、日本のGMPは通用しない

大曲 武田さんのお話のとおりだと思います。品質・安全性というところに関しては、極論、命に影響が出るという問題なので、最後の守り神というのか、そこはある程度国に動いていただいた方がいい。もちろんグローバルということもそうですが、そもそもそれ以前の問題としても、国内での健康食品に対しての信頼性を考えても、国のバックアップというものがあった方が良いに決まっていると個人的には感じています。

 GMPの義務化に関しては、お二人からも話が出ているとおりで、現場の声としても上がってくるのは、製品を輸出する場合、日本のGMPというものが通用しないという、その一言に尽きています。日本だとどうしても日本だけのビジネスに関して限界があるので、グローバル展開ということを考え合わせると、その法的な部分というところも、ある程度そこに合わせた内容を作っていかないと、どうやったって世界で勝負はできない。消費者庁もそこは認識していただいているのかなと思っています。そこに向かってそれぞれの立場でいろいろ検討していくことも必要ですが、GMPの義務化に関していうと、特に固形製剤に関しては浸透しているところがあるので、今さら業界の反発というのは大して起きないのではないか、個人的にはそう考えています。

市場を守るため制度化の前向きな検討は必要

原 実際、グローバルスタンダードに向けた取り組みというところでは、やはり業界団体やアカデミアの先生方、または行政を通じて、ゴールの策定が非常に大事だと思います。これはゴールのレベル感ですとか、そのタイムスケジュールは当然、議論の中で変わっていくとは思うのですけれども、業界団体として現時点から見える最終的なゴールをどこに想定するかということを考えていく、また考え続けることは大事だと思います。
 具体的な取り組みの中では、どの程度から始めて、どれぐらいの段階を経てゴールまでいくかということをまず事業者側で策定することが必要だと思います。いきなり行政に直接的に関与してください、認証してください、というのはなかなかハードルが高いところもあるでしょうから、例えば、今の民間GMP認証機関が国、所管する行政に自主的な届出を行うなど、最初は緩やかな届出制度から始めるなど。行政が認めるか認めないかは別として、自主的にGMP管理をやってますという明確な意思を業界側からしっかりと示す必要があると思います。

 今は行政からの一方通行で、行政通知・ガイドラインに準じて我々業界は製造・品質管理に関する運用を行っています。しかし、業界側から、または消費者を背負っている事業者側から行政に対してこういう運用を行っています、こういう考えに基づいてやります、というものを表現していくといった双方向性が大事だと思います。
 GMPの義務化に関してというところは、先ほども指摘がありましたが、企業各社のリソースの問題があります。将来的に義務化を目指したいと言いたいところですが、なかなかデリケートな問題を含んでいますので、実際問題として可能かということもあります。
そういう中で、1つの考え方としては、例えば製品として錠剤・カプセル状のような、比較的簡単に過剰摂取ができてしまうような製剤から対象を検討するというかたちで、入口を検討するというやり方。もしくは昨今、課題となっている輸出品について、ある程度対象となる品目の枠を出口で決めていくというやり方。サプリメント自体に定義がない以上は、そういうところで少しずつ段階的にやってみて不具合を修正していきながら全体の検討を進めていくということが大事ではないかと考えます。

 そういったものを踏まえても、サプリメントの法制化というのは必須で、先ほど来お話が出ていたアガリクスの問題とか、最近話題となったCBDの問題なども、法令を作ることによって、我々としても風評被害を未然に防止し、市場の健全な発展を守り促すことが大事と思います。一方で、その枠組から外れる事業者や商品というのはどうしても出てきてしまいますけれども、やはりしっかり市場を守るためにも制度化の前向きな検討は必要だと思います。

HACCPの原則義務化、業界への影響は?

唐木 一般の加工食品は食品衛生法に基づきHACCPが原則義務化された。この問題とGMPの問題について健康食品ではどうなるのか? その辺も一言ずつご意見をいただきたいと思います。

武田 HACCPも事業者の規模によってはジャパニーズHACCPがあり、グローバルに通じるHACCPだけじゃなく、中小企業を救済する意味でジャパニーズHACCPがあると思うのですね。一方、HACCPとGMPでは当然、主たる役割が違います。
 ですから、有効成分が表示どおりにきちんと入っている。それと異物が混入していないという部分、両方クリアする必要がある。また、誰がいつ作っても同じものが出来上がるという部分に関してはGMPは必須になると思います。実際に機能性表示食品の届出ガイドラインでも「サプリメント形状の加工食品はGMP準拠工場での製造が強く望まれる」と言っています。実際は義務化に近いようなことだと思うのですが、そこから始めていけば徐々に義務化していってもそんなに抵抗がないのかなと思います。

唐木 両方やるとなると負担がどうなるでしょうか。

武田 着目点が違いますので負担はもちろん増します。衛生部分はかぶるところもあるでしょうが、それぞれ目的が違うというという点はあるかと思います。

唐木 両方やらなくてはいけなくなるわけですね?

大曲 もともとGMPの中でも衛生管理というものは存在していたのですが、おそらくHACCPというのが後から出てきたので、今回の改正通知ではGMPの中に衛生管理という文言はあまり出て来ない。改正通知の最後に、関係図みたいなのがあって、そこでワーキンググループの先生方もHACCPとGMPの関係性みたいなものはもう少し明快に図示した方が良いのではないか、みたいなことをおっしゃいました。それは本当にそのとおりで、現場はやっているのだけど、改めて整理するという意味でもそこは必要ではないかと思います。健康食品のHACCPというのは、人によっては求めるものがちょっと独特になってしまうのかなというところは感じたところでした。

原 HACCP対応に関して言うところは、先ほど来お話がありましたとおり、GMPの中でも品質管理に関しては、多くの点で内包している部分があるかと思います。基本的には今の健康食品GMP認証に準拠していけば、当然HACCPは合致していくかなと思いますけれども、いわゆるGMPに準拠していながらGMPの認証を持っていないところに関しては、日健栄協が出している「健康食品製造におけるHACCP導入の手引書」というものがありますので、こういったところを事業者としてはしっかり対応していく必要があると思います。

CRN JAPANがHACCP手引書公開

原 ただ、この手引書は、固形製剤や最終製品の製造を念頭に書かれた手引書であって、そういった意味でいわゆる原材料に特化したHACCP手引書みたいなものは厚労省のホームページの方では掲載がありません。
 ですが、業界団体の自主的な取り組みとしてCRNでは「健康食品原材料の製造におけるHACCP導入手引書」ホームページ上で公開していて、いわゆる「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の位置付けとして中小零細企業のようにマンパワーが少ない事業者でもしっかりと健康食品の原材料に資するHACCP対応をしていこう、というような手引書の周知を団体活動として行っています。なので、そういった品質管理の延長線上で、健康食品の原材料製造HACCP、製品製造HACCP、それからGMP準拠から健康食品GMPへというかたちで明確なステップアップ指針を団体として事業者に提供していく。この趣旨に沿ってレベルを上げていきましょう、という組み立てを推進していくことが将来的なGMP義務化の検討においても非常に大事なことだと考えます。

GMPの義務化、国の関与は必要

唐木 GMPの義務化は必要だが、そのためにもサプリメントの定義をきちんとやらないとどこまでGMPをやらなくてはならないのかよく分からないということですね。しかも国の関与が必要ということについては意見が一致しているようです。
 それでは、そもそもなぜGMPが必要なのかに戻って、輸出のために必要だという理由はよく分かります。それではGMPをやったら本当に製品が安全になるのだろうか、その検証があるのかというと、あまり目にしない。これはGMPだけでなくHACCPもそうですが、あらゆる規制が厳しくなってきている理由は何なのか。GAP(Good Agricultural Practices:農業生産工程管理)、HACCPあるいはGMPがなくたって俺たちは安全な食品を作っているよというベテラン気質があって、経験で安全を守っていた。ところが今は、ベテランがいなくなってパートが主力になった。昨日まで違うことをやってきた人が急に食品業界に入ってくる。するとマニュアルが必要にあり、GMPやHACCPが必要という流れなのかと考えています。その辺どうでしょうか。

武田 おっしゃるとおりですね。日本人は元々、教育レベルも高かったですからGMPやHACCPがなくても、きちんとした食品が作れたと思うのですね。一方、アメリカでサプリのcGMPが義務化になったのは、あまりにも粗悪品がたくさん出てきたためにその対策としてcGMP準拠を義務化した。悪い人がいるのでそれを取り締まりましょうという性悪説の発想です。
 日本はもともと、食品業界のレベルも高かったのでそんなものはなくてもきっちり表示どおりに成分が入ってましたという違いだと思います。ただ、これまではそれで良かったと思うのですが、いざ海外に行こうとすればその海外のルールに従わなければならないというところが、現在、技術的には問題ないのだけれどもお金かけてという部分が出てきたのかと思います。

(つづく)
【文・構成:田代 宏】

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