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「遺伝子組み換え食品の恐怖」はウソ?ホント? FSINが文藝春秋に訂正要望

 文藝春秋社に物申す。2月11日、食品安全情報ネットワーク(FSIN)(唐木英明・小島正美共同代表)が、文藝春秋2月号「目覚めよ!日本 101の提言」に掲載された鈴木宣弘氏(東京大学大学院農学生命科学研究科教授)の寄稿文「遺伝子組み換え食品の恐怖」の内容について訂正要望を出した。FSINは同誌翌月号で訂正文の掲載を求めたものの、4月号にも掲載されることはなかった。

 FSINは、食品の安全に関する必要な情報を収集し、科学的な立場からこれを検証し、自らも科学的根拠がある情報発信をすべく日々活動している、学識経験者、消費者、食品事業者、メディア関係者などの有志による横断的なネットワーク組織(FSINホームページより)。

 FSINは、文藝春秋2月号に掲載された鈴木教授の記事には数多くの誤り、裏付け不足の事実誤認が見られる。遺伝子組み換え(GM)やゲノム編集を活用した食品の安全性や日本の食品表示制度について、読者に誤認を与える内容となっているとし、文藝春秋編集長宛てに次号(3月号)で削除、もしくは正確な情報の掲載を求めた。

 FSINは「訂正の要望」の最後に、「鈴木氏の記事は誤りが多すぎるが、訂正の要求は最小限の2つにとどめたい」とし、「日本人が食べても耐えられる基準が、なぜいきなり百倍に跳ね上がるのか」の部分は削除するか、正確な解説を載せるべき。「(ゲノム編集トマトに関して)昨年からは、障がい児童福祉施設、今年からは小学校に無償配布して・・・」の部分については、「そういう事実はなかった」と訂正記事を載せるべき、と述べている。

残留基準値をめぐる誤解

 まず、「…2017年末、日本はグローバル種子農薬企業の“ラストリゾート(最後の儲けどころ)”とされるかのように、世界の動きに逆行してグリホサートの残留基準値を極端に緩和した。小麦は6倍、蕎麦は150倍だ。日本人が食べても耐えられる基準が、なぜいきなり百倍に跳ね上がるのか。…」との記載について。

 FSINは、鈴木教授の言う「日本人が食べても耐えられる基準」というのは、ADI(1日許容摂取量=人が一生涯に渡り毎日摂り続けても健康上の悪影響がないと考えられる1日当りの摂取量の上限)のこと。また、日本で設定されているグリホサートのADIは、大人で体重1キロあたり1日1ミリグラム以下であり、EUや米国と同じ数値。全く緩和されたという事実はないとしている。
 これは、「個々の残留基準値」と混同しており読者をミスリードする内容だと反論した。残留基準値は作物や食べ物で異なり、個々の基準値は、その国の気候風土や農業事情、国際的な貿易条件、食習慣などによって決められているため、その基準値がそれぞれの国で異なることは当然のこと。個々の基準値が上がったり下がったりしても、仮に基準値いっぱいの食品を食べたとしても、ADI以下に収まるように設定されており健康への影響はない。ADIの数値を緩和すれば、確かに「食べても耐えられる基準」が緩和されたと言っても良いだろうが、そういう事実はないとの見解を述べた。

ゲノム編集食品をめぐる誤解

 次に、「ゲノム編集は生物のDNAを切り取って特定の遺伝子の機能を失わせる技術だが、これは、『遺伝子組み換えではない』として『審査も表示もするな』という米国の要請を日本は受け入れ、完全に野放しにした。血圧を抑えるGABAの含有量を高めたゲノムトマトについて、さすがに消費者の不安を考えたのか、販売企業は、まずは家庭菜園5,000件に無償で配り、昨年からは障がい児童福祉施設、今年からは小学校に無償配布して子供達に育てさせ、給食や家庭に普及させようとしている。(中略)日本のゲノムトマトの販売企業は、スムーズに普及させるために子供達を『実験台』にする食戦略を『ビジネスモデル』として、国際シンポジウムで発表までした。」との記載について。

 FSINは、消費者庁が表示などを検討し始めたのは、日本のベンチャー企業がゲノム編集技術を使ったトマトや魚のタイなどを販売する動きが出てきたためであり、米国の要請を受け入れて協議を始めたわけではない。鈴木教授が「米国の要請を受け入れて始まった」と書くからには、いつ、どこの米国政府部局から、どういう要請があったかに関する証拠を示してほしいとした。

 また、「完全に野放しにした」という記述に関しては、ゲノム編集トマトの販売企業は、自主的に「ゲノム編集技術で品種改良した」との表示をして販売しており、野放しという表現は全く事実とかけ離れている。
 「昨年から障がい児童福祉施設、今年から小学校に…」と書いているが、開発販売企業のサナテックシード社に確認したところ、少なくとも「昨年に配った」という事実はないし、今年、小学校に配る予定もないとしている。さらに、「希望する施設があればという前提で、苗を提供してもよい」と発表したに過ぎない。仮に子供たちが食べたとしても安全なトマトを食べているだけであり、実験台にしているという言い方は成り立たないとしている。

3月号での掲載は確認できず、期限までの回答もなし

 鈴木教授が2021年7月に「農業消滅」(平凡社)を出版した際に、FSINが2021年9月に訂正を求めたところ、平凡社は全面的に誤りを認め、2刷から大幅な訂正を出していると付け加え、さらに同ページのURL を記載している。

 ウェルネスデイリーニュース編集部では2月14日、文藝春秋編集部に対して、事実関係の確認、訂正文の掲載の有無、鈴木教授への対応などについて質問状を送付したが、期限までに回答はない。記事担当者への電話連絡も何度か試みたが、不在を理由に現在も回答を得ることはできていない。

 他方、FSINは記者の取材に対して、「現時点(2月27日)では返事は来ていない、なんとか回答を引き出したいと思う」とコメントした。その後、法務部に回答を催促したとしている。またウェルネスデイリーニュース編集部では、鈴木教授への取材も試みたが、現時点では連絡が取れていない。
 なお、文藝春秋3月号は2月14日午前、すでに書店の棚に並んでいた。したがって、2月11日付で送付されたFSINの訂正要望に対して、同誌が3月号で対応するのは日程的に難しかったのではないかと推測される。

4月号で新たな寄稿文、訂正はなし

 10日、文藝春秋4月号が発売された。訂正文が掲載されない中、同号の「日本の食が危ない!」に、30ページにわたり鈴木宣弘氏の新たな寄稿文が掲載されている。
 FSINは本件について16日、「訂正要望には応じない(という)対抗措置ではないかと受け止め、今後の対応をどうするか検討する」と回答している。

 他方、文藝春秋は、担当者不在を理由にその後も連絡が取れない。鈴木教授についても、現時点では連絡が取れていない。

【藤田 勇一】

(冒頭の写真:文藝春秋本社)

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