THC残留基準値、設定・公表の可能性 CBD製品、事業者責任で基準適合担保の仕組み構築か
厚労省、大麻規制検討小委員会で考え提示
大麻取締法等の改正に向けた議論を先月から開始した、厚生労働省の「大麻規制検討小委員会」(座長:合田幸広・国立医薬食品衛生研究所長)は29日、2回目の会合を開き、同省監視指導・麻薬対策課が前回会合で提示していた4つの論点のうち、大麻の適切な利用の推進、適切な栽培及び管理の徹底の2つを議題にした。
大麻の適切な利用の推進に関して同課は、CBDオイルなど大麻由来製品中のTHC残留基準値(限度値)を定め公表すること、その上で、事業者責任で基準適合性を「自己担保」するための試験方法を統一的に示す仕組みを構築する、といった方向性で今後の議論を進めることを委員会に提案した。
幻覚作用のあるTHCの残留限度値については、THCが毒性を発現する量よりも「一層の安全性を見込んだ量」を前提条件に検討する方向性を提示。産業用大麻(ヘンプ)の栽培、それを原料として抽出するCBDの利用が拡大しているヨーロッパでは、栽培および最終製品ともに、許容されるTHC濃度を各国ごとに規定しており、それらを参考にしながら検討する方向性も提案した。例えばドイツでは、栽培で許容されるTHC濃度について0.2%、最終製品中に関しては、飲料について1キログラムあたり0.005ミリグラム、オイルの場合は同じく1キログラムあたり5ミリグラム──などとする基準値を示している(2018年時点)。
大麻草の栽培目的、範囲規定を拡大か CBD製品等の原料としても
一方、大麻草の適切な栽培及び管理の徹底に関しては、大麻草の栽培目的や用途として、バイオプラスチックなど大麻草の新たな産業利用や、CBD製品などの原料としての生産を念頭に置いた目的を追加すべきかどうかを論点の1つとする方向性を示した。また、医薬品用途原料としての栽培についても「どう考えるか」として、委員会に議論を促した。現行法では、大麻草の栽培目的を、繊維や種子の採取に限定している。
また、海外の事例を踏まえ、栽培についてもTHC含有量基準を設定すべきかどうか、THC含有量が多い品種をどう取り扱うか、などといった論点を挙げた。同省の調べによると、国内の大麻草栽培者は1954年に全国で約3万7,000人も存在、栽培面積も1952年時点で約4万9,000ヘクタールに達していた。しかし現在は約30人、7ヘクタールまで激減。このため、神事などに使う大麻草から得られる繊維などの国内需要の大半が、海外からの輸入に頼っているのが現状だという。
大麻規制、部位から成分へ 抜本改正踏まえた論点示す
厚労省では、大麻取締法等の改正法案を、来年の通常国会に提出したい考え。若年層を中心にした大麻事犯の増加、諸外国で広がる大麻草由来医薬品の医療用途での活用などといった新たな動きを踏まえたもので、規制のあり方を、現行の「部位規制」から「成分規制」に大転換させる方針を示している。
昨年開催した「大麻等の薬物対策のあり方検討会」に続いて立ち上げた今回の小委員会では、9月まで集中的に議論し報告書を取りまとめる。それを小委員会の親委員会にあたる医薬品医療機器制度部会でさらに議論。部会としての報告書は年内にも取りまとめる計画だ。
一連の議論において、CBD製品中のTHC限度基準値や試験方法などといった技術的な検討が具体性をもって行われるかどうかは不明。基準値や試験方法等の検討、設定まで議論が進んだとしても、「(基準値などを事業者責任で自己担保するための)品質管理をどうしていくのか。そここそが大きな課題だ」と関係者は指摘する。
加えて、この日の会合では、CBDは一定の加工条件下で、一部がTHCに変化するとの知見のあることが厚労省から伝えられており、慎重な議論、検討を求められる事項がまた1つ増えた格好になった。法改正によって、海外で利用されている医療用CBD製剤が日本でも使われるようになる可能性が高まっている中、食薬区分においてCBDをどう取り扱うのかといった課題も手付かずのまま残されている。
【石川 太郎】
(冒頭の画像:都内で開催された第2回大麻規制検討小委員会の冒頭の様子)