HMPAって何? 新・機能性関与成分
腸内代謝に着目した新機軸のポリフェノール素材
今月7日に消費者庁が行った機能性表示食品の届出データベース情報更新。新たに公開された届出の中に、「3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロピオン酸」を名称とする機能性関与成分があった。英名は「3-(4-Hydroxy-3-Methoxyphenyl)Propionic Acid」で、略称「HMPA」。新規の機能性関与成分である。届出者は原材料メーカー。「(届出公開後、事業者からの)問い合わせが相次いでいる」と話す。どのような成分なのか。
丸善製薬が開発 届出サポート開始
「本品には3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロピオン酸(HMPA)が含まれます。3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロピオン酸(HMPA)は、BMIが高めの方の腹部の脂肪を減らす機能が報告されています」。
届出表示(ヘルスクレーム)の全文はこう。新型コロナ禍での外出自粛を受けてニーズが高まった、肥満ケアに関連する機能性関与成分が新たに登場した格好だ。
届出資料によれば、この機能性関与性成分(以下、HMPAと記載)を含む原材料は米ぬか発酵物とされており、化学的に合成されるなどした成分ではない。それもそのはずで、届出者は主に植物を原料にした健康食品・化粧品原材料の製造販売を手掛ける丸善製薬㈱(広島県尾道市、日暮泰広社長)。『アクティボディ(=同社登録商標)顆粒』を製品名とするサプリメントを届け出た。
HMPAとは何か。届出資料では「植物に含まれるポリフェノールに分類される」(作用機序に関する説明資料)と説明している。これだけだとよく分からないが、同社が昨秋までに開発、上市した新たな機能性食品素材の概要を知ることでHMPAとは何かがより見えてくる。
『アクティボディRB』。同社が昨秋上市、提案を始めた植物由来機能性食品素材の製品名だ。ポリフェノールの「活性本体」(コアポリフェノール=同社登録商標)を独自の発酵技術で初めて規格した新素材との触れ込みで市場投入したもので、その規格成分がHMPAである。
ポリフェノールの「活性本体」を規格化
ポリフェノールの「活性本体」とはどういうことか。
同社の研究開発担当者らによれば、数多くの種類が存在するポリフェノールには、抗酸化作用を始めさまざまな生理活性や機能性のあることが報告されている一方で、体内に吸収されにくい化合物であることが知られる。「ポリフェノールパラドックス」とも呼ばれる矛盾だが、同社はその矛盾の答えをポリフェノールの腸内代謝と腸内細菌叢(フローラ)の個人差に求め、食事などから摂取したポリフェノールが腸内細菌によって代謝されることで生産され、また、体内に吸収される物質に着目した。
その1つがHMPAだという。植物由来乳酸菌(スマート乳酸菌=同社登録商標)の研究開発で培った発酵技術を応用することで、米ぬか発酵物中にHMPAを規格させることに成功した。「あらかじめHMPAの形で摂取することで、腸内環境の個人差にかかわらず、ポリフェノールが持つ機能が発揮される可能性がある」という。
1日あたり必要摂取量 23mgと少なく
以上がHMPAの概略だが、特長は他にもある。摂取量だ。同社が届け出た機能性表示食品の資料によれば、RCT(ランダム化比較試験)で有効性が確認されたHMPAの1日あたり必要摂取量は、わずか23mg(アクティボディRBとして100mg)とされている。
また、HMPAはポリフェノールに特有の苦味や渋味がほとんどないといい、「どんな風味の商品にも配合できる」と同社。さらに、溶解性や安定性の高さもHMPAの特長で、サプリメントはもとよりドリンク・ゼリー類を始め、スーパーなどの店頭に陳列される食品などさまざまな加工食品に応用できるという。
HMPAの届出公開後、同社は最終商品販売会社らへの届出サポート活動を本格化させた。「反響は予想以上。問い合わせが非常に多い。やはり新規(機能性関与)成分が待たれていたのだと思う」と話す。
今後、ヘルスクレームを段階的に拡充していくことも検討するという。HMPAの機能性を巡っては、同社で実施したこれまでの基礎研究やヒト試験などで、体脂肪減少機能以外にも有効性のあることが示唆されている。
【石川太郎】
(冒頭の画像:丸善製薬が独自に製作したアクティボディRBの発売予告動画の1シーン)