事故調、HIFU施術事故調査報告 年々増加110件に、法規制見直しも
消費者庁の消費者安全調査委員会(消費者事故調)は26日、エステサロンなどでのHIFU(ハイフ)による事故調査の経過報告を行った。
同調査については、調査を開始した日(2021年7月30日)から1年以内に事故等原因調査を完了することが困難であると見込まれる状況にあることから、消費者安全法第31条第3項に基づき、今回、経過を報告することになった。
HIFU施術事故、15年以降110件に
調査は、HIFU技術と医療事故分野の専門委員2人を担当として指名し実施された。事故情報の収集、分析は事故情報データバンクに寄せられた事故情報の分析や業界団体が把握する情報に基づき行った。それによると、HIFU施術による事故は、15年11月から今年5月までの間に110件寄せられている。事故件数は、施術場所別に傷病内容を見ると、エステサロンでの事故件数が76件と最も多いが、利用者自らがHIFU機器を操作するセルフエステにおいても8件の事故が報告されている。
また、医療機関である美容医療クリニックにおいても26件の事故が報告されており、医師ではないスタッフが施術したと思われる事故も見られた。
1カ月以上の傷病は21件
傷病の程度については、1カ月以上のものは110件のうち21件で、施術場所がエステサロンは76件中15件(19.7%)、セルフエステは8件中4件(50%)、美容医療クリニックは26件中2件(7.7%)だった。傷病の内容別では、「神経、間隔の障害」が13件中8件(61.5%)と割合が最も多かった。また、性別・年代別では、事故の97%を女性が占めており、特に30歳代に多かった。
エステサロン、セルフエステでのHIFU施術について、施術者と利用者へのアンケートによる実態調査を実施。それによると、施術者が施術内容や注意事項に関する利用者への説明を十分にしていないこと、利用者が、HIFU施術のリスクを認識した上で施術を受けていないことが分かったという。
また、エステサロン、セルフエステ、美容医療クリニックの協力を得て、施術現場に測定機器を持ち込み、実際に使用されているHIFU機器による照射実験を行った。測定したデータを分析した結果、エステサロンやセルフエステで使用されているHIFU機器と、美容医療クリニックで使用されている機器との間で、照射した箇所の温度を上げる能力に明確な差はみられないことが分かった。
法令による規制のあり方、見直しも
消費者事故調では、エステサロンなどで行われているHIFU機器を用いた施術について、法令による規制のあり方(例えば「医師法」による規制、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」による規制)をさらに検討する必要があるとしている。また、HIFU機器をエステサロンなどが入手する物流の実態、(独)国民生活センターやエステティック業界団体が注意喚起などを行っているにもかかわらず事故につながる施術が行われている業界に実態について、さらに調査を進める必要があるとしている。
引き続き同調査で実施した事故情報分析、アンケート、照射実験などで得られた情報から、事故原因を明らかにして、消費者に提供されるエステティックサービスの安全が確保されるよう再発防止策の検討を進めるという。
【藤田 勇一】