HABセミナー「健康食品を食べたら健康になるの?」に300人
<科学的根拠があるのは保健機能食品>
特定非営利活動法人HAB研究機構(深尾立理事長)は13日、市民公開シンポジウム「健康食品を食べたら健康になるの?」を都内で開催した。300人を超える一般消費者や業界関係者が参加。(公財)食の安全・安心財団の唐木英明理事長、国立医薬品食品衛生研究所の畝山智香子安全情報部長、食生活ジャーナリストの会の小島正美会長の3人が登壇した。
唐木氏は健康食品とは何か、消費者はなぜ健康食品に頼るのか、健康食品には効果があるのか、といった各課題について講演した。健康食品には、安全性の科学的根拠がある「保健機能食品」と、科学的根拠がない「いわゆる健康食品」の2種類があるとし、「根拠のある方を買ってほしい」と呼びかけた。
また、30年前から朝鮮人参・にんにく・すっぽん・まむし・クマザサ・クロレラなどのいわゆる健康食品があるが、このうち根拠があると認められているのは、辛うじて乳酸菌、ビタミンC、魚油(DHA・EPA)くらいとの見解を示した。
唐木氏は、薬には「薬理作用」と「プラセボ効果」があるとし、薬理作用からプラセボ効果を引いたものが、真の薬の効果であると説明。「飲んだ人の実感は、プラセボ効果と薬理作用を足した効果と感じるだろうが、専門家は製品の薬理作用からプラセボ効果を差し引いたものを本当の効果とみる」と述べた。
民間医療で用いられた食材が現代でも使用される理由について、プラセボ効果の影響が考えられると指摘。健康食品のプラセボ効果について、「骨折や肝機能障害、血糖値の抑制などには効きようがないが、痛みや睡眠、気分の落ち込みなどには有効」と述べた。
健康食品を賢く選ぶ方法として、唐木氏は「本当に必要かよく考える」、「薬のように使わない」、「薬と併用しない」などを挙げた。利用する場合は科学的根拠のある保健機能食品を選び、いわゆる健康食品を買わないように呼びかけた。
<食経験は人類の壮大な人体実験>
畝山氏は「食品の安全性」「食品と医薬品の違い」をテーマに講演。食品の安全性はこれまで食経験で担保されてきたが、昔と今では状況が違うとし、「あらゆる食品にはリスクが存在する」と話した。例えば、透析を行いながら普通の食生活を送っている人にとって、その食品が安全かどうかは、これまでの食経験からではわからないとし、「人類は壮大な人体実験を行っている」との見方を示した。
畝山氏は「意図された用途で作ったり食べたりした場合に、その食品が消費者へ害を与えないという保証のこと」という、食品の安全に関するコーデックスの定義を紹介。食品のリスクはハザード(有害性)×暴露量(摂取量)で測定し、いわゆる健康食品の危険性は、暴露量が圧倒的に多くなる可能性がある点だと指摘した。食経験についても「ゆでた食材の食経験があっても、そこから抽出・濃縮した成分については必ずしも食経験はない」と警鐘を鳴らした。
機能性表示食品についても言及し、「医薬品は日本薬局方で定められた規格により、含有成分とその分析法が100%わかっているが、機能性表示食品は届け出された成分を足しても100%にならない」とし、抽出物に含まれるその他の成分の量が報告されていない点を問題視。「大切な情報が届かないのが一番の問題。『たくさん食べれば健康になる』といったメッセージは、食品安全の基本に反するもの」と批判した。
<情報を得るための労力を>
小島氏は、健康食品広告やメディア報道の課題をテーマに講演した。広告表現で用いられる体験談やテレビの健康番組などによって、「自分にも効果があるかもしれない」と、科学的根拠のない健康食品を購入するケースが多いことに懸念を示した。
対応策として、「企業側の広告手法を知っておくこと」、「さまざまな媒体を比較して検討すること」などを挙げた。小島氏は、「信頼できる情報を得るためには時間と労力とコストがかかるが、健やかに長く過ごすためにはその労力を惜しんではならない」と話した。
(写真:300人超の消費者や関係者が参加)
【堂上 昌幸】