GMPめぐる混乱~顛末は?(後) 義務化へ進む議論、GMP認証制度は今後・・・
24日、「機能性表示食品を巡る検討会」の2回目が終わった。2度目の検討会では、業界団体、消費者団体双方から健康食品GMPに対して国の関与を求める意見が出た。景品表示法の改正でまとめ役を果たした法律家の中川丈久座長(神戸大学大学院法学研究科教授)は初回から、機能性表示食品を規定する法律の分かりにくさを指摘していたが、今回、通知行政ではなくしっかりとした法律の枠組みを作る必要性を示した。GMPに国が関与しやすい法整備を行おうということだ。あれよあれよという間に、検討会は急ピッチでGMPの義務化へ向けて動き始めたようである。
そもそも本稿を書き始めた動機は、GMP認証制度を立ち上げた国の関与にちぐはぐな側面が見られたことに端を発している。「6・6プレスリリース」によるJCAHFの乱以降、それが顕著になった。しかしここに来て、GMPを取り巻く業界環境が大きく変わり始めている。「法とは暴を禁ずるものなり」という古言がある。善きにつけ悪しきにつけ、ここまで業界を追い詰めた責任を関係者めいめいが自ら取る時が来た。
こうなると、本稿を書き進める理由がほぼなくなったとも言える。後はGMPの義務化に実効性を与えるための法の建付けが問題となる。GMPの義務化や健康被害情報の報告義務化などの先にあるサプリメント法の制定まではいまだ長い道のりが続くにしても、GMPを国の制度にするために、今活動を続けているJHNFAとJIHFSの2機関のポジション、そして認証制度協議会のあり方をどう整理するかという問題に絞られてくるのではないか。
閑話休題。これまでの背景については、「6・6プレスリリースの怪」シリーズを振り返っていただければそれで足りる。JCAHFの乱以降は、GMP認証2機関とJCAHFの間では食い違いのやりとりが続く。2022年7月4日、厚生労働省が仲介に入って4者会談が開かれたものの、話はまとまらず、23年5月8日を迎えることになった。そして9日以降、JCAHFをめぐり何がどうなったのか――。
年表に記載があるとおり、JHNFAは23年5月8日付でJCAHFの請求に応じて22年度分の認定料を支払っている。JIHFSは指定期限が同6月だったために、それまでの料金を請求に従って支払っている。しかし支払われたのは、JCAHFがプレスリリースで主張した値上げ分ではなく、旧料金にとどまっている。JCAHFがそれで納得したのだとすれば、何とも人騒がせなプレスリリースだった。
両機関ともにそれ以降、今日まで、JCAHFからのコンタクトはないと話している。約1年、JCAHF抜きのGMP認証制度が何事もなかったかのように回り続けている。言い換えれば、前回述べたとおり、「健康食品の安全性確保に関する検討会」報告書で決められた「消費者がより安全性の高い製品を選択できるよう」に、「設立後の同協議会の運営においても、行政当局を含めた関係者間において十分な情報交換、連携が図られることにより、直面する課題解決に努める」ような運営は放棄されていることになる。
今後、宙に浮いた状態にあるJCAHFはどうなるのか? GMP認証制度はどうなるのか? 今年3月12日、記者は当時の厚生労働省食品基準審査課の担当官に話を聞いた。
厚労省は記者の質問に対し、「健康食品GMP認証はあくまで民間の取り組み。報告書で書いている第三者認証にはいくつかの形がある。協議会を置く形も第三者認証の1つ。単純に、自分たちでGMPをやっている人以外のところに見てもらうというのが第三者認証なので、JHNFAやJIHFSがやっている仕組み自体も第三者認証の1つではないか。報告書を出した当時は、第三者認証を行うところもレベル感を揃えるといった理由で認証協議会がある方が望ましいというような当時の背景を元に記載した」などと何とも苦しい答弁を行っている。GMP認証では過去に、審査基準のダブルスタンダードなどさまざまな問題が問われ続けてきた。それを放置してきたのも厚労省である。このようなあいまいな姿勢が今回の大事故を生んだのではないことを祈るばかりである。
厚労省担当官と記者の一問一答は以下のとおり。(⇒つづきは会員専用記事閲覧ページへ)
(了)【田代 宏】