ASCON、社会による評価を公表 キリンホールディングスの機能性表示食品「届出番号F184」を評価
機能性表示食品のエビデンス評価を行っているASCON科学者委員会(鈴木勝士委員長)は28日、新たに社会的評価を導入した届出番号E1~G1102の商品に対し、匿名による評価が投稿されたとしてその内容を公表した。
公表したのは、キリンホールディングス㈱が免疫機能の維持をうたって販売している『キリン iMUSE professional(イミューズ プロフェッショナル)プラズマ乳酸菌サプリメント』(届出番号F184)に対するもの。
匿名氏は、責任試験統計家を含む複数の統計解析専門家に確認した結果、免疫体調に関する全身の自覚症状への影響を報告したRCTの複数の論文に関する統計解析方法が不適切だと指摘している。
指摘に対するキリンホールディングスの回答に対してASCONは、「この指摘を極めて重大なものと考え、具体的に回答すべきと信じる。これに対して全く回答をしないことは極めて残念」とコメントしている。一方、科学的根拠の強さを評価するASCON総合評価判定(届出者の根拠情報要約による自動判定成績)は、「有効性について十分な科学的根拠がある」とする最高クラスの「A」判定だった。
統計の誤用については8月、技術系のネットメディア『日経クロステック』が「機能性表示食品の瑕疵」と題して、機能性表示食品制度を批判したばかり。それに対して、ウェルネスニュースグループでは、機能性表示食品制度のウィークポイントを考えるセミナーを開催している。
<匿名での社会による評価>
免疫体調に関する全身の自覚症状への影響を報告したRCTの複数の論文において累積発症日数を評価し、摂取群と非摂取群で有意な差を報告しているが、この累積発症日数は、個人の発症日数を群で合算して群間を評価しており、統計解析方法が不適切なものである。具体的に説明すると、群で合算した累積発症日数は個人のバラつきが考慮されておらず、それで統計学的に有意な差が出ても、個人のバラつきの結果偶然出現した結果の可能性がある(つまり、一部の極端な人が、片方の群に片寄っていた可能性がある)。個人ごとの発症日数を分散分析するのが適切な統計解析方法である。論文で報告している群で合算した累積発症日数の統計解析が不適切な統計解析方法であることは複数人の統計解析専門家に確認した際も同様の意見であった(その内一人は、日本計量生物学会の試験統計家認定制度で、「責任試験統計家」(日本で30名しか存在しない)の認定者である)。
<届出者(キリンホールディングス)からの回答>
この度は、弊社研究レビューの採用論文に関するご指摘をありがとうございました。頂いたご意見を参考として、今後もより一層研究レベルの向上に努めたいと考えております。よろしくお願い致します。(以上、原文ママ)
【田代 宏】
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