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サプリメントは食品なのか 日本学術会議「サプリ提言」の内在的論理、取りまとめ責任者に聞く(前)

 日本学術会議が今年2月末に公表した「サプリメント法」の制定を基軸とする提言「我が国の機能性食品制度に関わる課題とその対応」。その取りまとめ責任者の堀正敏・東京大学大学院農学生命科学研究科教授(獣医薬理学教室=写真)がウェルネスデイリーニュースの取材に応じた。「サプリメントは食品なのか」。提言の出発点にあったのはそんな問いだったと明かす。前後編の2回で掲載する。

 提言を巡りウェルネスデイリーニュースは3月3日付で初報。そして提言の受け止めに関する消費者庁長官のコメントを同6日付で報じた後、日本学術会議の元副会長でもある唐木英明・東京大学名誉教授寄稿の検証記事を同12日付で掲載した。定員210人の日本学術会議会員である堀教授への取材は同12日午後、東京大学弥生キャンパス農学部3号館内で行った。

 「サプリメント法」の制定を軸に、機能性表示食品の届出制から個別許可制への移行など保健機能食品制度の改訂(見直し)、食品安全委員会によるサプリメントの安全性評価の導入、さらに、機能性食品(食品の三次機能=生体調節機能を持つ食品)全般やサプリメントに関する国民の正確な情報獲得プロセスの支援(消費者教育の推進)といった、法律上の定義のない「健康食品」を巡る抜本的な改革案を打ち出した提言は、日本学術会議の連携会員を多く含む75人の科学者による約2年間の審議を経てまとめられたものだ。

 堀教授はこの75人の科学者について、「機能性食品をポジティブに捉え、機能性研究を推進している研究者から、食品の機能性や安全性に関して非常に慎重であったり、厳格であったりする研究者までが集まりました」と説明。そのため、「全員から一応のコンセンサスを得られる内容とするのに時間がかかり、公表がこのタイミングになってしまいました。もしかしたら見方によっては、非常に歯切れの悪い表現になっている部分もあるかもしれません」

 提言を審議したのは、日本学術会議で生命科学系分野を担当する「第二部」のうち、食の安全、獣医学、農芸化学、毒性学、さらにパブリックヘルス(公衆衛生)を専門とする各分科会だ。ざっくり言えば、機能性食品に対して農芸化学は「推進」、毒性学やパブリックヘルスは「慎重・厳格」の立場といえる。獣医学に関しては、「食の安全に近い(ことから慎重・厳格寄り)ですが、機能(薬理作用)を研究している方もいらっしゃるので、どちらかといえば中間でしょうか」(堀教授)。そうした中で、獣医薬理学を専門とする堀教授が取りまとめ責任者を務めた背景には、食の安全および獣医学の分科会委員長のほか、第二部の副部会長を務めていることがあった。

健康食品に対する「意思」表出の理由

 日本学術会議が政府や社会に対し、科学的な事柄に関する意思や意見などを表明(=意思の表出)することはままある。だが、健康食品に関してそれを行うのは今回が初だ。提言は、日本学術会議として政府や関係行政機関、そして広く社会に対して提案するもので、「意思の表出としては、一番上くらい(の重み)に値します」(堀教授)。

 しかし、科学的な事柄に関する政府からの諮問に答える「答申」、あるいは政府に対して実現を強く勧める「勧告」のような重みを伴うものではない。では、今回の提言は何を目的に取りまとめ、公表したのだろうか。堀教授はこう説明する。

 「日本学術会議として提言を出すことが目的なのではなく、この提言を基にして話し合いの場を作っていくことが我々の目的です。(健康食品全般に)関係する行政、企業、アカデミアを含めた話し合いの場を作っていきたいと思っています。

 日本学術会議は行政に制度を求める機関ではありません。あくまでも科学的な見地から、偏りのない意見を述べる。それに徹しています。ですから今回の提言も、現行の法や制度を批判するのではなく、それが運用されてきた経緯も十分考慮に入れながら、科学的に何が言えるのかという立場で書き、まとめています。ただ、そのようにすると、ある立場の方からは『物足りない』という意見が上がりますし、それとは異なる立場の方は、真逆の見方をなさる。そういうことを承知の上で取りまとめました」

 提言の内容を是が非でも実現させたい目的や考えは、ない。それは「偏った考え」(堀教授)という。「あくまでも科学者集団として一つの道標を案として示すのが提言です。ですから、提言の中に、例えばAタイプ、Bタイプ、Cタイプと複数の案が書かれていたとしても本来構わない。どれをチョイスするのか(しないのか)というのは、行政や企業の問題です」

 ただ、提言がなされたタイミングを考えると、穿った見方をしてしまう。2024年に生じた機能性表示食品のサプリメントに生じた健康被害問題を受け、厚生労働省と消費者庁が連携して「サプリメント規制の在り方検討」を進めている最中でこの提言はなされた。検討に影響を与えたい考えはあるのか、ないのか。

 「もちろん、審議の場に呼んでいただくのであれば、我々の提言について説明する準備はしていますし、厚生労働省や消費者庁、あるいは食品安全委員会に対して積極的に意見交換の場を求めていくというのが我々の今後のプランです」(堀教授)。

(後編に続く)

【石川太郎】

【プロフィール】堀 正敏(ほり・まさとし)=博士(獣医学)。2018年より東京大学大学院農学生命科学研究科教授。日本学術連携会員を経て2023年より日本学術会議第26期会員第二部副部長。全国大学獣医学関係代表者協議会会長、日本薬理学会理事、日本神経消化器病学会理事、日本平滑筋学会理事も務める。専門は薬理学。研究テーマは消化管免疫―運動連関、臓器線維症と間葉系幹細胞、平滑筋の細胞生物学、食品成分や漢方成分ならびに海産毒など天然有機化合物の生理活性作用の探索。

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