法人格を渡り歩く「しげよし」 窓口混在と未回答で深まる不透明性
仕出し弁当宅配サービス「しげよし」を巡る返金問題について、編集部はこれまでの取材で浮上した事業構造や資金の流れ、現場運営の実態について確認するため、関係各社に対し書面による照会を行っていた。しかし、回答期限として設定した期日までに、㈱寿美家和久(三重県津市)、㈱ノコト(三重県四日市市)、㈱ALXUS(三重県津市)、㈱メモリードグループ(群馬県前橋市)のいずれからも回答は得られなかった。
電話対応で浮かぶ窓口の混在
こうした中、編集部は㈱寿美家和久に関する調査資料に記載された電話番号に連絡を行った。応対した担当者は「仕出し割烹『しげよし』(津店)」の店舗であると説明した一方、会社名について問われた際には㈱ノコトであると答えた。同様の応対が別の通話においても確認された。
さらに、同社ウェブサイトの会社情報ページに記載の連絡先に電話したところ、自動音声による応答システムが導入されており、入力操作を行わなければ担当者に接続されない仕組みとなっていた。通話が途中で終了する場合もあり、直接的な問い合わせ対応が困難な状態にある可能性がある。
これまでの取材では、売掛債権の処理や請求業務、資金の流れがノコトへ集約されている可能性を指摘してきたが、今回の確認により、連絡窓口についても同様の傾向が見られることが明らかとなった。
また関係者の一部からは、従業員は管理部以外は全て寿美家和久からノコトに転籍しているとの情報が寄せられている。従業員の転籍が進められた背景について、資産の所在を巡る問題との関連を指摘する声もある。
一方、登記上は複数の法人が存在しており、それぞれの役割や責任の所在については依然として明確な説明が得られていない。
法人移行の連続で主体が不明確化
問題の発端は、三重県で割烹料理・仕出し宅配サービスを展開していた「しげよし」に関する内部告発である。情報提供者によれば、この事業体は単一の企業によって運営されていたものではなく、複数の法人を経由しながら事業が継続されてきたとされる。
もともと「寿美家和久」という屋号で展開されていた割烹料理事業は、葬儀会社への宅配サービスへと業態を拡大した後、グループ会社とされる「ノコト」へ移管された。その後、さらに別法人である「ALXUS」へと移行したとされ、短期間のうちに複数の法人名義を渡り歩く格好で事業が継続してきた経緯が徐々に明らかになりつつある。
しかし、所在地や事業内容の連続性など、外形的な近接性は認められる状況にあるものの、これら法人の移転・再編の実態について、現時点で各社間の具体的な契約関係や役割分担の全容が明らかになっているわけではない。このような構造は、実質的な運営主体を見えにくくし、責任の所在を曖昧にしている。
賃金不払い疑念と制度上の限界
情報提供者の証言によれば、こうした法人移転の背景には、労働者への賃金支払いを回避する意図があるのではないかとの疑念がある。従業員に対して心理的な圧力をかけながら業務を継続させる一方で、給与の支払いが滞る状況が続いていたとされる。
「来月には間違いなく支払うから」という趣旨の言葉に釣られて今月も今月もと働いた結果、結局、給与は支払われることなく退職することになった。証言者が提示したラインのやりとりを見ると、そういう状態が確認できる。
このような状況は、いわゆる「賃金不払いに類似する構造」と指摘される事例と重なる側面もある。事業主体を変更することで債務の履行責任を曖昧にし、結果として労働者の権利行使を困難にする手法だ。現行制度においても、不法行為や法人格否認の議論の対象となり得るが、実務上は立証のハードルが高く、被害回復に至るまでには長い時間を要する。
労働・消費者問題が交錯する構図
さらに問題を複雑にしているのは、こうした事案が労働問題にとどまらず、消費者問題とも交錯している点である。仕出し宅配サービスという業態上、サービスの提供主体が不明確であることは、消費者にとってもリスクとなり得る。
取材に応じたファクタリング会社の話では、同社に請求書の売買を依頼すると同時に、消費者にも請求するという通常の取引とは異なる処理が行われていた可能性を指摘している。
消費者自身がそのような行為を認識しているとも思われないが、消費者からどれくらいの相談が消費生活センターやPIO-NETに寄せられているのだろうか。その実態を知るため、国民生活センターへの取材においても、当該事業者に関する相談件数の開示は困難であるとのことである。 相談情報は個別性が高く、外部への提供には制約があるということは前稿で詳しく書いた。結果として、消費者側の被害実態についても全体像を把握することは難しい状況にある。
こうした状況を踏まえると、同事案は単なる個別企業のトラブルではなく、法人構造のあり方、労働者保護、消費者保護といった複数の制度領域にまたがる問題として捉える必要がある。そこで記者は労働基準監督署に話を聞いた。
【田代 宏】
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