しげよし問題、国民生活センターの壁 相談件数は情報提供対象外、国セン規程8条4項により非開示
消費者トラブルの拡大が指摘される仕出し弁当宅配サービス「しげよし」を巡り、ウェルネスデイリーニュース編集部は、(独)国民生活センター(国セン、村井正親理事長)に対し、同事業者に関する相談件数などの情報提供の可否について取材を行った。その結果、同センターが定める「情報提供規程」に基づき、現時点では一切の情報提供が行われない判断であることが明らかになった。判断は被害の広がりではなく規程上の該当性によって決まる構造となっており、制度運用の在り方が問われる状況が浮かび上がった。
情報提供は規程第8条で限定判断
国センによれば、報道機関からの照会に対する回答の可否は、「情報提供規程」第8条第4項に基づいて判断される。この規定では、特定の事業者について相談件数などの情報を提供できる場合が限定的に列挙されており、いずれかに該当しない場合には回答できない仕組みとなっている。
今回の取材では、同項第2号および第4号の該当性が検討された。第2号は「破産または倒産等による消費者トラブル」が発生している場合を想定した規定だが、同センターは、返金遅延や直前キャンセルなどの問題が報道されている事実は把握しているとしつつも、「破産または倒産等による状態にあるとは判断できない」として該当性を否定した。
また、第4号は「国の行政機関、地方公共団体その他の公的機関による公表」または「当該事業者による通知若しくは社告等」により、消費者トラブルの発生またはそのおそれが明らかになっている場合を対象とする。しかし同センターは、事業者がブログで行っている返金対応に関する情報発信について、「行政機関による公表と同等のレベル感には達していない」として、同号にも該当しないとの判断を示した。
「レベル感」基準が判断の分水嶺
この判断において国センが用いたのが、「レベル感」という概念である。すなわち、第4号にいう「通知または社告」は、国や地方公共団体による公表と同等の社会的影響力を有するものである必要があるとの解釈であり、事業者のウェブサイト上の告知はこれに該当しないとされた。記者が、新聞広告などによる社告であればどうかと確認したところ、「内容によっては改めて内部で検討する」としつつも、現時点での基準は明示されなかった。
一方で同センターは、同規程第3条において「消費者利益の擁護増進を図るため、積極的な情報提供に努める」と定めている。しかし同条には同時に、「事業者の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある情報」は提供対象から除外するとの規定も置かれている。これについて同センターは、第3条はあくまで総則的な規定であり、個別の情報提供の可否は第8条第4項の各号への該当性によって判断されると説明した。
すなわち、消費者保護の観点からの情報提供という理念は存在するものの、実務上は各号の要件を満たすか否かが判断の決定要因となっており、被害の有無や広がりそのものは直接的な判断基準とはなっていない構造である。
被害拡大でも非開示の構造浮き彫り
取材に対し同センターは、給与未払い、店舗閉鎖、社会保険料の滞納などの情報についても、「当該事業者に関する情報に該当するため回答できない」とし、相談件数の有無を含めて言及を避けた。また、消費生活センターとの連携や内部対応の状況についても同様に非開示とした。
ただし同センターは、「現時点では回答できない」との立場であり、今後、行政処分や強制捜査、公的機関による公表、あるいは事業者による社告などが行われるなど、同規程第8条第4項の各号に該当する事実が新たに生じた場合には、改めて判断し回答する可能性があると説明した。
今回の取材からは、消費者トラブルが拡大している段階であっても、制度上の要件を満たさない限り、相談件数などの情報は開示しないという運用実態が浮かび上がった。情報提供の可否は被害の実態ではなく、規程上の該当性によって判断される構造となっており、結果として、問題の深刻化が一定程度進行した後でなければ情報が外部に提供されない可能性がある。
第5報で指摘した資金構造、第6報で明らかになった現場運営の不安定化に加え、第7報では制度上の情報開示の枠組みが確認された。しげよしを巡る問題は、事業運営、資金管理、労務環境にとどまらず、消費者保護制度の運用の在り方とも交差する事案となっている。
国民生活センターとの一問一答は以下のとおり(続きは会員専用記事閲覧ページへ)
【田代 宏】
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