しげよしの資金構造に新局面 売掛債権売却で資金確保の実態浮上
仕出し弁当宅配サービス「しげよし」を巡る返金問題で、資金調達手法の実態が浮かび上がった。関係者やファクタリング会社への取材から、各店舗の売掛債権を売却し資金化するスキームが運用されていたことが明らかになった。
さらに、ファクタリング会社への取材によって、請求主体の名義が法人間で移行する動きも確認され、事業構造と資金の流れが連動して変化していた可能性がある。返金問題の背景には、こうした資金運用の実態が影響している可能性がある。
債権移行で構造の実態浮上
仕出し弁当宅配サービス「しげよし」を巡る返金問題については、これまでの取材により、複数法人が関与する事業構造の下で、業務および資金の受け皿が関連会社へ段階的に移行していた可能性が示唆されてきた。
こうした中、新たにファクタリング会社への取材を通じて、資金回収を巡る局面において、㈱ノコト(三重県四日市市)から㈱ALXUS(三重県津市)への債権譲渡の可能性がより強まった。
ファクタリングとは、企業が保有する売掛債権を専門の会社(ファクタリング会社)に売却し、早期に資金化する金融手法である。資金繰りに困難を抱える中小企業にとって、銀行融資が難しい状況でも活用できる資金調達手段として普及している。
関係者の証言によれば、各店舗が所有する請求書をファクタリング会社が買い取り、手数料を差し引いた差額を運営会社に提供していたことが関係者の証言で明らかになっている。
また、関係者によれば、同サービスに関連する取引において、売掛債権がファクタリング会社に譲渡された後も、請求主体の名義が別法人へと移行する動きがあったとされる。例えば、何らかの事情でA社からB社へと請求主体が移行していたというのである。
請求主体変更が回収リスクに
今回、取材に応じたファクタリング会社は、債権譲渡後に請求主体が変更されていた点について、回収に支障を生じさせる要因となり得るとの認識を示した。同社は、いつの間にか㈱ノコト(三重県四日市市)から㈱ALXUS(三重県津市)へ請求主体が移っていたため、一時、紛争に発展したと話している。
また、同一の売掛債権を巡っては、公的機関による滞納処分との関係も生じ得るとした。同社によれば、宅配サービス事業に関係する法人において社会保険料の未納を指摘している。
これに関連し、ある年金事務所に取材したところ、一般論としつつ、個別事案については守秘義務を理由に回答を控えるとしたものの、社会保険料の滞納処分は国税徴収法・厚生年金保険法等に基づき、厚生労働省の認可のもとで実施されるものとし、滞納に対しては差押えなどの措置が講じられる場合があると説明した。
差し押さえの対象となる財産は多岐にわたる。不動産や預金口座といった典型的な財産に加え、売掛債権もその対象となりうる。売掛債権とは、企業が取引先に対して持つ代金請求権のことで、特に資金繰りが厳しい企業にとっては重要な資産である。この売掛債権を巡って、年金事務所のような公的機関とファクタリング会社のような民間企業が競合するケースが想定される。
こうした状況を踏まえると、売掛債権を巡り、ファクタリング会社と公的機関がそれぞれの立場から回収を図る構図が生じていた可能性はある。
複数法人で資金・業務が移行
本件では、㈱寿美家和久(三重県津市)、ノコト、ALXUSといった複数法人が関与していることが確認できた。これまでの取材により、コールセンター機能や注文管理、顧客からの入金といった業務および資金の受け皿が、これらの法人間を移行していた可能性が浮上している。売掛債権の帰属や請求主体の変遷が、こうした事業構造の変化と連動しているものとみられる。
さらに、関係者の証言や社内のやり取りとされる記録からは、返金対応を含む実務の調整が特定の担当者を通じて行われ、最終的な判断は社長への確認を経て決定される運用だった様子もうかがえる。組織上の役割分担と実際の運用との間に差があった可能性も指摘されている。
資金混乱が現場・労務にも波及
一方で、資金面の動きは現場の運用にも影響を及ぼしていた可能性がある。元従業員によれば、ある時期以降の給与が支払われていない状態が続いており、未払い額は約60万円に上るとされる。同店舗では他にも、複数の従業員が同時期に退職していた事実が判明した。
また、元従業員らが働いていた店舗はいま電話がつながらない状態で、本部のある津店の社員も退職した関係から、離職票の未発行や社会保険手続の遅延といった事務処理の停滞が続いており、「労働基準局や家庭裁判所などに行き相談している」状況だという。
提供されたライン通話の中には、給与の支払いを求める従業員と店長の切迫したやり取りが記録されていた。
取材を通じて確認することができた「給与明細書」では、社会保険料の控除が行われていることが確認されたが、別の店舗の元従業員の証言によると、「保険料系は未納の状態が続いていたとの認識で、差し押さえの話が頻繁に出ていた」とする声や、「社保の支払いが行われていないという噂は確かに耳にしたことがある」との声もある。
登記簿に表れた両社の関係
新たに判明した事実がある。しげよしを運営していた寿美家和久とメモリードグループの関係については、両社の代表がそれぞれの会社の取締役に就任していたことを登記簿謄本で確認することができた。寿美家和久にはメモリードグループの吉田卓史代表が2023年8月30日から役員として就任しており、またメモリード社においては、2024年8月7日から10月25日までの一時期、小清水丈久氏が取締役を務めている。なお、吉田代表は今も寿美家和久の役員に名を連ねている。
しげよしの仕出し弁当がメモリード社が運営する葬儀場に配達されているという情報はこれまでにも入手していたが、登記簿の記載からは、両社の間に一定の人的関係が存在していたことが確認された。
もっとも、メモリード社も含めた各法人間の契約関係、資金の最終的な帰属、意思決定の法的主体については、なお明確とは言えない。現時点では、いずれも関係者の証言および限られた資料に基づくものであり、引き続き関係各社への取材や資料の検証を通じて、事業構造の全体像の解明を進める必要がある。
【田代 宏】
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