「スプーン1杯」からのたんぱく補給 新アミノ酸素材「BEAA」とは何か 開発背景から読み解く
1日当たり3gでホエイプロテイン20g相当の運動による体づくりをサポートする──そんなコンセプトの新規アミノ酸素材を日本の企業が開発した。
開発したのは、サプリメントや健康食品の受託開発・製造を手がける東洋新薬(本部:佐賀県鳥栖市、服部利光社長)。海外から輸入されるホエイプロテイン原料の価格高騰や調達不安が深まっている中での発表となった。そのためだろう。同社によると、今年(2026年)1月下旬の公表以降、事業者からの問い合わせが続いているという。ホエイプロテインの代替として注目を集めているとみられる。
もっとも、開発に本格的に着手したのは約3年前だ。「当時、(ホエイプロテインの)今の状況は考えてもいなかった」と語るのは、同社で今回の新素材の開発を担当した人物。それでは、開発背景には何があったのか。開発担当者は、消費者視点でのプロテインが抱える課題への対応があったと話す。
どういうことか。それを説明する前に、新素材がどういうものかを押さえておく。
「3g」で「20g相当」の根拠
同社が開発した新規アミノ酸素材は「BEAA」という。
筋タンパク質合成を刺激するアミノ酸群である「BCAA」(バリン・ロイシン・イソロイシン)と、タンパク質合成に必要な必須アミノ酸「EAA」(BCAAに加えてリシン・メチオニン・フェニルアラニンなど9種類)を、同社独自の「バランスと技術」で配合したものだ。
開発過程では、同社が以前から取り組んでいる、身体的フレイル対策に資する機能性素材の研究開発で得られた知見が役立った。BCAAの製品における一般的な配合比率(2:1:1)を前提とせず、文献調査などから導いた仮説を細胞・動物試験で検証しながら、最適な配合割合を探索していった。その結果として得られた「Balanced Essential Amino Acid」(バランスのとれた必須アミノ酸)の頭文字を製品名とした。
ヒトを対象にしたホエイプロテインとの効果比較検証も行った。結果は論文にまとめ、食品科学・栄養学系の海外学術ジャーナル『Food & Nutrition Sciences』に投稿。昨年掲載された。
同社が行ったヒト試験は、ランダム化単盲検プラセボ対照並行群間比較試験。20歳以上40歳以下の日本人健常男性を3群に分け、①プラセボ3g、②BEAA3g、③ホエイプロテイン20gを週5日のレジスタンス運動とともに1日1回、12週間摂取。その結果、BEAA3g摂取群は、プラセボ3g摂取群と比較して、全身と下肢の筋量に関連する評価指標に有意な増加が確認され、ホエイプロテイン20g摂取群との比較で同等以上であったという。この結果を踏まえ、同社はBEAAを、「3gでホエイプロテイン20g相当の運動によるカラダづくりをサポートする次世代アミノ酸」として打ち出すことにした。

消費者視点で捉えたプロテインの課題
東洋新薬は、プロテインを主力製造品目の1つとする。1997年の設立以来、青汁を主力としてきたこともあり、形状が同じ(顆粒)であるプロテインは親和性が高かった。加えて、ここ数年でプロテインの利用目的が「筋トレ用」から「日常の栄養(たんぱく質補給)」に拡大。このため、プロテインは同社の業績を押し上げる原動力にもなっている。
「健康食品については機能性表示食品をはじめ、青汁やプロテインが好調だった。とくにプロテインは、原材料価格が高騰している中で伸びが顕著」。同社の髙垣欣也副社長は2025年9月期の業績を振り返る取材にこう語っている。そのように大事な原料であったからこそ、プロテインが抱える課題がはっきり見えていたようだ。開発担当者が指摘する。
「消費者目線で見ると、とくに高齢者にとっては、1回当たり20gなどといった大きな摂取量が負担になる。高齢者ではなくとも、摂り方によってはカロリー過多や腎機能への影響に配慮しなければならない場合もある。それに、乳糖不耐症の方は、(ホエイプロテインを摂取すると)消化できずにお腹の調子を崩すことがある」
こうしたプロテインを巡る課題の解消を図ることが、BEAAの開発背景にはあった。適切な量のたんぱく質を無理なく、継続的に取り入れるための新たな選択肢、言うなれば「賢いたんぱく補給」を提案したいと開発担当者は話す。だからこそ、1日当たり3g。「より少量が理想かもしれないが、摂取する方の日常に溶け込ませることができるよう、『スプーン1杯』の用量で設計した」という。

「日常的な運動」+「スプーン1杯」で広がる商品設計
スプーン1杯からのたんぱく質補給、あるいはスプーン1杯からのフレイル対策。BEAAの開発背景には、そうした設計思想があったと言える。そのように、少量で必要なたんぱく質摂取をサポートするという素材設計は、消費者の継続性という課題に応えるだけでなく、結果的に、足元でホエイプロテイン原料の価格高騰や調達不安に直面する事業者に対しても、新たな選択肢を提供することになる。
BEAAを活用する最終製品の設計パターンはいくつか想定される。
まず、真っ先に考えられるのはホエイプロテインとの併用だ。ホエイプロテインの一部をBEAAに置き換えることで、原料価格や調達面のリスク緩和だけでなく、容量が少なくなることに伴い、配送費・保管費の負担を減らすというメリットを出せそうだ。また、さらなる科学的検証が必要だが、開発担当者によると、併用によってプロテインによる体づくりを相乗的に引き上げられる可能性があるという。
さらに、ホエイプロテインの代替素材としても用いられるコラーゲンペプチドとの組み合わせも考えられる。プロテインのライト層から美容ニーズまで取り込む、女性向けの商品設計につながる。
当然、単体での製品化も可能。「スプーン1杯」の特徴を前面に打ち出せる。「特にシニア世代は食が細くなり、プロテインを飲み切れない問題もある。また、成長期の子どもに対しても運動をサポートする商品開発も可能だ」と開発担当者は語る。
【石川太郎】
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