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第2回デジタル取引・特商法検討会 デジタル時代へ再設計、SNS勧誘に法の網を

 消費者庁は17日、第2回「デジタル取引・特定商取引法等検討会」(デジタル取引・特商法検討会)を開催した。インターネット取引における広告・勧誘の在り方を巡り、現行の通信販売規制の枠組みとデジタル特有の販売手法とのずれを整理した。悪質事業者の排除と善良な事業者への過度な負担回避の両立を掲げつつ、SNS・チャット勧誘の不意打ち性やダークパターンへの対応、規律の「強度」と「内容」の切り分けなど、多層的な論点を提示した。

悪質排除と事業者負担のバランス

 事務局は、デジタル取引における広告勧誘を中心に、現状認識、現行法の課題、今後の検討論点を整理して示した。前回会合の確認として、悪質な事業者を市場から退出させることは消費者と善良な事業者双方の利益につながるとの認識を共有しつつ、通常の事業者の正当な営業活動に支障を生じさせないようバランスを確保する必要があると明示した。

 悪質事業者が頻繁に行うが、善良な事業者は通常行わない行為を特定し、これを禁止していくという考え方を基本に据え、対策の設計に当たっては善良な事業者に過大なコストを課さないことを重視し、現状の自主的取り組みを基礎に検討を進める方針を示した。
 インターネット取引は、従来想定してきた訪問販売や通信販売とは相当異なる性質を有すると指摘し、別建てでの法制化の要否も視野に入れて検討する必要があるとした。最終確認画面の表示義務など現行法の執行で対応できている部分と、十分に規律が及んでいない部分を各論で精査する方針も示した。

通信販売規制の歴史的前提

 通信販売規制の沿革については、1976年にカタログ通販やテレビショッピングをモデルとして制定したもので、インターネット取引の普及以前の枠組みであると説明した。立法当時は、事業者のマス広告を見た消費者が自らの意思で注文するという構造を前提に広告規制が設けられたが、勧誘に関する禁止規定は設けなかったという制度設計を明らかにした。

 他方、インターネット取引の市場規模が直近10年間で約2倍に拡大していると説明した。消費者にとって品揃えの豊富さや利便性があることを踏まえ、オンラインモール利用時にトラブルに遭ったことがないとする消費者が約6割、インターネットで安心して取引しているとする消費者が約7割に上るとのデータを示し、通常の取引が円滑に機能している実態も踏まえる必要があると位置付けた。
 その上で、インターネット取引の特徴として、マスマーケティングからパーソナライズへの転換、多様な販売手法の登場、ダークパターンの存在を挙げた。ダークパターンは消費者の意思決定を意図的に誘導する設計であり、インターネット特有の論点だと指摘。

SNS・チャット勧誘の不意打ち性

 とりわけSNSやチャットを用いた勧誘を重要論点として取り上げ、消費者の約8割がSNSを利用している現状を示した。
 SNSのチャットによる勧誘で商品を購入した経験がある消費者は全体の1割強に上り、そのうち約3分の2が後から考えると不要だったと感じたことがあるとの調査結果も紹介した。
 チャット勧誘の具体像としては、約7割が「思いがけず突然メッセージが来た」と回答していることを挙げ、不意打ち性を確認した。「断ったり返答しなかったにもかかわらず何度も誘いが来る」、「断りづらい状況に置かれる」、「勧誘目的を告げられないままやり取りが始まる」といった事例を示し、事実と異なる説明や重要事項の不告知、不安にさせる、急かす、怖いと感じさせるといった行為も一定割合で確認していると説明した。

 相談件数の整理では、通信販売全体の相談件数が約30万件台で推移している一方、SNSが関係する相談件数はこの10年間で10倍以上に増加していると示した。
 SNSのチャット勧誘に関する相談も、サンプル調査の結果、約20倍に増加していると説明した。相談事例の分析としては、取引の入り口が約6割でSNS投稿やダイレクトメッセージ、チャットであり、約4分の1がネット広告、約4分の1が電話であったと整理した。勧誘の継続手法は約9割がネット上のチャットで、契約場面も約9割がネット上で完結していると示した。不実告知や重要事項の不告知が大多数を占め、威迫行為や執拗な勧誘も一定割合で確認できると説明し、相談者の約9割が返金、返品、契約解除等を希望している実態も示した。

現行法の到達点と限界

 現行法との関係では、2000年改正で申込画面の明瞭表示義務、02年および08年改正で電子メールの承諾制、21年改正で最終確認画面の表示義務を導入した経緯を説明した。
 一方、SNSやチャットを用いた勧誘的手法については、特定商取引法上明確な措置を設けていない現状を紹介した。オンライン上の広告や勧誘を入り口として電話勧誘や訪問販売に移行する場合は各規制が適用されるが、オンライン上で対話が進み契約まで完結する場合は通信販売規制のみが適用されるという制度構造を説明し、電話勧誘販売や訪問販売と実質的に同様の行為があっても勧誘規制が及ばない場合がある点を課題として明示した。

 検討事項として事務局は、第一に、インターネット取引一般における広告勧誘の性質をどう捉えるかを提示した。
 第一に、広告と勧誘を概念的に区別するのではなく、現行法の広告規制と勧誘規制の内容を比較し、その差のうちインターネット取引一般にどこまで必要かを検討する枠組みを示し、特に勧誘的要素の強い部分にどこまで適用するかを具体的に検討するとした。

 第二に、不意打ち性、誘引性、複雑性の高い広告勧誘への対応を検討対象に据えた。チャットを用いた勧誘は電話勧誘販売と同様の不意打ち性があるとして、強い勧誘規制やクーリングオフ、取消権をベースに検討する方向性を示した。「勧誘目的を隠す」、「虚偽を述べる」、「著しく有利な条件で誘い出す」、「オンラインセミナーに誘導する」といった販売形態については、訪問販売と同等の規制を課す必要性を論点として提示した。契約内容が過度に複雑な販売形態についても、特定継続的役務や連鎖販売取引と比較しながら同様の規律を検討する方針を示した。

規律の強度と規律の内容をどう整理するか

 各委員からは、インターネット取引を通信販売として扱うことに賛同する意見と、勧誘か否かの線引きの困難さを指摘する意見が出された。
 「規律の強度」と「規律の内容」を区別して議論すべきとの問題提起がされた。インターネット取引全体に対し、直ちに電話勧誘販売と同水準の強い規制――すなわちクーリングオフや取消権といった制度的効果まで及ぼすべきかどうかについては、慎重な検討が必要であるとの意見が示された。
 一方、デジタル環境に特有の広告・勧誘手法が広がる中、従来の通信販売とは異なる性質を正面から捉え、規律の「内容」そのものについては見直しを検討すべきではないかとの認識も共有された。すなわち、「どの程度強く規制するのか」という問題と、「どのような義務を課すのか」という問題は分けて整理すべきであるという視点である。

「通常」と「悪質」の二分法は妥当か

 検討事項では、インターネット取引一般と、悪質性の強い類型とを分ける構成が示されている。しかし委員からは、この二分法自体の妥当性に疑問が呈された。
 悪質でない勧誘と悪質な勧誘の間には相当のグラデーションが存在し、今後も多様な勧誘手法が登場することが想定される。その中で、一定の類型のみを切り出して特別に強い規律を設けるという設計が適切に機能するのかについては、慎重な議論が必要であるとの指摘である。単純な線引きではなく、実態に即した評価軸の構築が求められている。

通信販売を基準とする整理

 事務局は、インターネット取引は隔地者間取引という点で通信販売と共通するとの整理を示している。これに対しては、大枠として異論はなかった。
すなわち、まずは通信販売を基準に規律の在り方を検討するという方向性だ。ただし、その上で、従来の通信販売とは異なるデジタル特有の要素をどのように評価するかが、今後の検討課題となる。

SNS型勧誘の特殊性

 後半では、SNS・チャット勧誘を電話勧誘販売に準じた規制対象とすべきかどうかが議論された。どこまでを規制対象とし、どのようなケースを除外すべきか、さらに類型ごとに整理するのか、それとも禁止行為を軸に設計するのかといった立法技術上の選択も論点となった。
 デジタル環境では広告と勧誘の区別が従来より曖昧になっているとの指摘があった。アルゴリズムやターゲティング広告の活用により、形式上は広告であっても、実質的には個別的・誘導的な効果を持つ場合がある。従来の「広告=一方向」「勧誘=個別接触」という整理がそのまま妥当するのかは、再検討が必要であるとの認識が示された。

今後の検討の方向性

 事務局は、今回の議論は方向性の整理段階であり、今後の会合で具体的制度設計を深める方針を示した。検討会では「インターネット取引全体は通信販売を基準に検討するが、問題性の高い類型については一段強い規律も視野に入れる」という枠組みが提示されている。もっとも、その前提となる「規律の強度の意味」、「線引きの妥当性」、「デジタル特有性の評価」といった論点については、なお精緻な整理が求められている段階だ。

 次回以降、インターネット取引における消費者を意図的に誘導するパターン(定期購入トラブル含む)の分析を行い、広告勧誘・契約締結・解約場面を含めた全体的な規律についてどうすべきかを2回にわたり議論する。次回開催は3月上中旬を予定している。

各委員の主な発言は以下のとおり(続きは会員専用記事閲覧ページへ)

 片岡康子委員は、インターネット取引は基本的にマス広告がメインであり、検索履歴などを基にしたパーソナライズド広告も完全に個別化されていないとして通信販売として扱うことに賛同した。
佐藤一郎委員は、ターゲティング広告はクラスタに分けて配信されているものの効果としては個別広告に近く、勧誘か否かの線引きに無理があると指摘し、SNSなどのリーチ過程の個別化も含めて見る必要性を強調した。さらに、コンテンツが動的でクラスタリングされていることから通信販売の類推適用には慎重な議論が必要であり、取引の動的性質により事後確認ができない特異性も指摘した。

 SNS・チャット勧誘の実態に関しては、川野玲子委員が、SNSのダイレクトメッセージを利用した副業勧誘の事例を紹介した。SNSでフォローしている人からダイレクトメッセージで副業を勧められ、メッセージアプリでやり取りを開始し、その後ウェブ会議に誘導されて約40万円の契約に至ったケースで、クーリングオフに応じない実情を説明した。
 また、2023年8月の消費者委員会ワーキンググループ報告書に言及し、「チャットが双方向性と即時性を有し、既読機能が時間的切迫感を増すため電話に近い特徴を持つと指摘されていること」などを紹介し、報告書から3年が経過した現在でも同様の勧誘が行われ、消費生活センターに同様の相談が多数寄せられている実態を示した。

 インターネット取引の特性とダークパターンを巡っては、島薗佐紀委員が、届いた商品が表示と異なる事例や、初回限定のつもりが定期購入だった事例などを紹介し、遠隔取引や表示の偏りの問題を指摘した。アンケート、ポップアップ、カウントダウンなどで個別に意思決定へ働きかけることから広告と勧誘の区別が困難であるとの指摘も行った。その上で、EUや韓国など諸外国の規制を参照しつつ行政規制や民事規定を検討すべきと提案した。

 広告と勧誘の区別、規律の強度については、殿村桂司委員が、広告と勧誘の区別が曖昧になり不特定多数を対象に一気に勧誘することも技術的に可能であるとして、形式的な区別に拘泥しないアプローチに賛成した。
 一方、「規律の強度」とは具体的に何を指すのかとの問題を提起した。例えば、クーリングオフの可否のような制度的な違いを意味するのであれば理解しやすい。しかし実際には、悪質でない勧誘と悪質な勧誘の間には連続的な“グラデーション”がある。今後も多様な勧誘手法が登場すると考えられる中で、「通常」と「悪質」の二分法で区切り、特定の類型だけに強い規律を課すという考え方が妥当かどうか、慎重に議論すべきではないかとした。

 これを受けて事務局が説明した。分かりやすく要約すると、おおよそ以下のとおりである。
 検討事項1(インターネット取引一般)として、まず、インターネット取引全体の広告・勧誘について、従来の通信販売と何が共通し、何が異なるのかを整理し、その特徴に応じた対応を考える。この場合、「規律の強さ」については、通信販売と同様に、いきなり電話勧誘販売のような強い規制(クーリングオフや取消権など)を全面的に広げることまでは想定していない。
ただし、内容面では、従来の通販とは異なる性質(デジタル特有の勧誘手法など)を踏まえ、必要な見直しを検討する。
 その上で、検討事項2(特に問題の大きい類型)として、不意打ち性や誘引性が強いSNSチャット等の勧誘については、一般的なインターネット取引と同じ扱いでよいのか、それとも一段強い規律を設けるべきかを検討する。要するに、インターネット取引全体には、基本的に通信販売に近い考え方で検討する。ただし、特に問題の大きい勧誘手法については、より強い規制も視野に入れて議論するという整理である。

 現行法の執行をめぐっては、正木義久委員が電話番号に限らず電子メールアドレスなど通話以外の連絡手段も認めるべきと提案し、不意打ち的勧誘の手前段階で現行法でも違法なものが多いのではないかと提案。広告規制の段階で現行法違反のものが多数あるため、法改正を待たずに執行を強化すべきと要望した。

 一方、事業者側からは、インターネット取引全般に勧誘規制を適用することへの懸念が示された。竹廣克委員は、勧誘者の氏名や勧誘であることの告知を広告全般に適用する場合の具体像が見えず負担が大きくなる可能性を指摘し、再勧誘禁止について技術的に可能か疑問を呈した。
 万場徹委員も、一般的なネット取引は通常の通販であり、悪質事例と明確に区分して議論すべきとの要望を示した。

 消費者保護と市場の健全性の観点では、郷野智砂子委員が、SNSを中心に悪質な広告や勧誘が多発し、著名人になりすました偽広告、投資詐欺、フィッシングサイトへの誘導などが問題となっていると指摘した。期間限定お試し価格の強調と複雑な定期購入契約の条件付けなど、誤認を招く表示が目立つとの指摘もあり、承諾していないSNSやチャット、広告勧誘の禁止の検討も必要とした。
 河村真紀子委員は、自身の長年のオンラインショッピング経験から、自分が好んで入れた情報や購入履歴に基づく広告と、どこで取られたかわからない様々な情報が組み合わさって表示される広告とでは、明確に性質が異なると指摘。前者は通常の通信販売の延長として理解できるが、後者は検索履歴など様々な情報が組み合わさって表示されるものであり、悪質であるかどうかとは関係なく、通常の通信販売とは異なるデジタルならではのルールが必要だと主張した。

 高芝利仁委員は、広告と勧誘の分類のいずれかに引き寄せていくことは難しく、誘引性を有する行為としてその実態に着目して検討することが一考に値すると提案する。つまり、形式的に広告か勧誘かを区別するのではなく、消費者の意思決定にどの程度影響を与える行為なのかという実質的な観点から評価し、それに応じた規制を考えるべきだという考え方である。

 土井和雄委員は遷移がどこからでも可能であることを踏まえ、広告規制の要素をどこに表示するかなど特性に応じた検討が必要と述べた。個人情報保護とターゲティング広告をめぐっては、個人情報保護法で一定程度カバーされているものの上乗せ規制の議論が必要か確認すべきとの意見、プロファイリングやサードパーティクッキーが直接的に規制されていないとの説明、情報取得の問題を見ずに議論する難しさの指摘があり、必要に応じて検討してもよいのではないかとの意見が示された。

以上

【田代 宏】

配布資料はこちら(消費者庁HPより)

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