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食品臨床試験の未来を変える and to leap、「SMO活用」という第三の選択肢を提案

 ㈱and to leap(東京都足立区、鹿濱貴弘社長)は、被験者募集(PRO)の専門集団から生まれたSMO(治験施設支援機関)であり、急成長する食品臨床試験市場に特化することで独自の地位を確立している。同社は、従来の食品CRO機関への一括委託か自社実施かの二択だった業界構造に対し、SMOの活用を「第三の選択肢」として定着させることを目指している。事業の現状、喫緊の課題であるキャパシティ不足への対応策、そして医薬品業界に倣った「計画と実施の分業」を食品業界にもたらす中長期ビジョンについて 取締役COO、臨床試験支援事業部長の土居健二氏(=写真)に聞いた。

事業の現状と2026年に向けた体制、中核事業と優位性

――現在、貴社の中核となる事業、特に強みを発揮されている分野についてお聞かせください。
土居:当社の核となるのは、食品臨床試験に特化したSMO事業です。このニッチな分野に特化していることで、現在、明確な競合が存在しないブルーオーシャン市場であると認識しています。当社の最大の強みは、被験者募集(PRO)を専門とする兄弟会社(㈱ブレイクスルー)との連携基盤です。この連携により、同社が保有する約8万人の被験者パネルを活用できる体制があり、被験者募集、つまり「ヒト」の確保において絶大なアドバンテージとなっています。
 また、当社のビジネスモデルの大きな特徴として、自社で医療施設を「持たない」ことが挙げられます。これにより、特定の施設や診療科目に縛られることなく、クライアントであるメーカーや食品CRO機関の多様なニーズに対し、高い柔軟性を持って最適な協力医療機関を選定できる機動力を確保しています。これが他社にはない優位性となっています。

――現在の市場環境において、貴社の事業が直面している主な機会(チャンス)と課題(チャレンジ)は何だとお考えでしょうか。
土居:機会(チャンス)としては、食品メーカーへの知名度向上とブランディング戦略が奏功し、顧客ニーズが多様化・拡大している点です。健康志向の高まりや機能性表示食品制度の活用拡大に伴い、臨床試験の需要は今後も増加していくと見ています。
 一方、課題(チャレンジ)は、事業の急成長に対して社内リソース、特に経験豊富なCRC(治験コーディネーター)人材と、提携医療機関のキャパシティが追いついていないことです。現場の責任者となれる正社員CRCの不足は深刻なボトルネックとなっており、すでにキャパシティオーバーを理由に一部の試験依頼をお断りしている状況も発生しています。この人手不足の解消と、急増する依頼を確実に受託できる体制の構築が喫緊の課題です。

2026年の事業戦略、実施体制の強化と基盤の転換

――2026年における、最も重要な経営目標や戦略的な重点施策についてお聞かせください。
土居:2026年は、増加するプロジェクトを確実に実行するための「実施体制の強化」を最優先目標とします。具体的には「ヒト」と「場所(施設)」のキャパシティ拡大です。
 また、収益基盤の安定化を図るため、現在のクライアント構成「食品CRO機関9割:食品メーカー1割」の比率を、2026年中に「5割:5割」に転換することを目指します。特定の食品CRO機関の業績に左右されない安定した事業基盤を構築することで、雇用の安定化にも繋げたいと考えています。

――その目標を達成するために、具体的にどのような新規事業、製品開発、またはサービス改善を計画されていますか。
土居
:提携医療機関の拡充として、現在の提携施設数をさらに増やし、全体的な受託キャパシティを拡大します。特に、臨床試験の需要があるにもかかわらず開拓が困難な「歯科」「眼科」など、新規診療科を持つ医療機関の開拓にも注力し、対応可能な試験の幅を広げる計画です。

 サービス展開としては二段階で考えています。
 まず、試験計画や統計解析のノウハウを持つ大手食品メーカーを主要ターゲットとし、予備的試験や探索的試験などにおいて、これまで自社もしくは共同研究先と実施していた試験体制から、試験実施部分のみをアウトソースするという選択肢を提案し、SMOを「第三の選択肢」として定着させます。
 第二段階として、ノウハウを持たない中小企業向けに、自宅でのアンケート調査などを中心とした低コストで簡易的な「ユーステスト」のパッケージサービスを展開し、販促資料作成などのニーズに応えることも計画しています。

――特に人材採用や組織体制の強化に関して、2026年に向けた具体的な計画をお聞かせください。
土居:人材面では、実施体制強化の一環として、現場の責任者となれる経験豊富な正社員CRCの増員を最優先で強化します。
 さらに、食品臨床試験は時期によって繁閑の差が激しいため、流動的な人材ニーズに柔軟に対応するため、「CRCアルバイトパネル」制度を構築します。これは、事前に登録したアルバイト人材を、プロジェクトのピーク時に必要な時だけアサインできる仕組みであり、ノウハウが蓄積された非常勤CRCの効率的な活用を目指します。

業界標準を変革するロードマップ、SMO活用を「業界のスタンダード」に

――5年後(2031年頃)に、貴社はどのような企業へと成長していることを目指していますか。事業規模、市場でのポジション、社会への貢献といった観点からお聞かせください。
土居:5年後の目標は、食品メーカーが臨床試験を検討する際に、SMOへの委託が「業界のスタンダードな選択肢の1つ」として認識される状況を創出することです。食品CRO機関への一括委託か自社実施かの二択から、「第三の選択肢」としての地位を確立し、市場のリーダーとしてのポジションを確固たるものにしたいと考えています。

――そのビジョンを実現するための、具体的な施策についてお聞かせください。また、食品CRO機関との関係はどのように変化するとお考えですか。
土居:サービスの存在と価値を広く知っていただくため、メディア露出や営業活動によるブランディングを継続します。メーカー側が自らSMO活用を望むようになれば、業界構造が大きく変わると見ています。
 食品CRO機関との関係においては、探索的試験や予備試験といった初期段階の試験をSMOが担うことで、その後の大規模かつ本格的な試験が食品CRO機関へスムーズに繋がるという、業界全体でメリットがある補完的な関係を築けると見込んでいます。これにより、業界全体の効率化に貢献できるはずです。

10年後の展望とは。医薬品業界に倣い分業体制を確立

――10年後(2036年頃)の貴社が描く、より長期的な未来像と、社会貢献についてお聞かせください。
土居:最終的な目標は、医薬品業界で標準となっている「CRO(計画・解析)とSMO(実施)の分業体制」を、食品臨床試験の業界にも確立することです。
 この分業体制が実現すれば、試験プロセスの透明性が格段に向上し、データの信頼性を高めることができます。食品CRO機関が一気通貫で実施することによる「ブラックボックス化」の問題を解消し、業界全体の品質向上と透明性の向上に貢献することが、当社の果たすべき社会的な役割だと考えています。

――その実現に向けたアプローチ、特に食品メーカー側の意識改革について、具体的な考えをお聞かせください。
土居:この変革を実現するためには、発注者である食品メーカー側の意識改革が不可欠です。食品メーカーが「第三者機関による試験実施」の客観的かつ専門的な価値を理解し、食品CRO機関への発注時にSMOの活用を指定するような流れを作ることが重要です。当社は、分業体制のメリットと、それによって得られる信頼性の高さを積極的に訴求し、業界標準を変革していくアプローチを考えています。

競争優位性と企業文化、他社にはない「決定的な価値」

――貴社が競合他社と比較して、最も優位性を持つ独自のビジネスモデルは何だとお考えでしょうか。
土居:当社の優位性は、前述の「PROを持つSMO」という強みに加え、自社で医療施設を「持たない」ことによる高い機動力です。この独自のビジネスモデルにより、特定の施設にリソースを縛られずに済みます。また、計画立案や統計解析といった食品CRO業務には一切手を出さず、「試験実施」に徹することで、主要顧客である食品CRO機関との競合を避け、強固な信頼関係を維持していることも、事業を進める上での重要な戦略です。

――貴社が顧客に対して提供できる、他社にはない「決定的な価値」は何でしょうか。具体的な事例やエピソードを交えてお聞かせください。
土居:他社には真似できない「決定的な価値」は、「できないことは、できるようにする」という方針に基づく驚異的な営業力と開拓力です。新たなニーズが発生した場合、それに応えるための環境(提携先)を自ら作り出す行動力があります。 
 例えば、過去に要介護者を対象とした特殊な試験の依頼があった際、当初は提携する医療機関や介護施設が全くない状況でした。しかし、当社は「不可能を可能にする」という使命感のもと、1年をかけて介護施設網を一から開拓し、試験の実施を成功させました。このフロンティア精神と、クライアントの多様なニーズに柔軟に対応する「開拓力」こそが、他社にはない決定的な価値となっています。

「おもてなしの心」精神と人材育成

――貴社の企業文化、あるいは組織として大切にしている価値観は、どのように事業の競争優位性に結びついているとお考えでしょうか。
土居:企業文化として全従業員に徹底しているのが「おもてなしの心」です。単に依頼主に対して丁寧であるだけでなく、被験者に対して快適でストレスのない試験環境を提供することを最優先しています。これは、被験者の離脱率の低下やコンプライアンスの向上に直結し、結果としてデータ品質の向上に繋がります。これが、依頼主である食品メーカーのブランドイメージ向上にも繋がると考えており、当社の事業における重要な競争優位性となっています。

――貴社の成長を支える「人」の育成やモチベーション向上に関して、特に工夫されている点は何でしょうか。
土居:会社の利益と個人の報酬が連動していることを明確に示し、モチベーション向上を図っています。具体的には、プロジェクトの予算や実績、個人の貢献度を可視化して共有し、期末利益を特別賞与として社員へ還元する仕組みを導入しています。社員1人ひとりが、自分の働きが会社の成長に直結していることを実感できる環境を整えることで、主体性を引き出し、プロフェッショナルとしての成長を促しています。

――今後の事業展開において、最も重要視されていることは何でしょうか。
土居:繰り返しになりますが、クライアント構成の安定化です。食品CRO機関への依存度を減らし、2026年中に食品メーカーとの取引を増やし「5割:5割」の比率にすることを目指します。これにより、事業の安定性を確保し、長期的な視点で安心して人材投資や新規事業開拓を進められる強固な経営基盤を確立してまいります。

――ありがとうございました。

【聞き手・文:藤田勇一、取材日:2025年12月11日】

<COMPANY INFORMATION>
所在地:東京都足立区千住宮元町13-13(本社)
URL:https://at-leap.com/index.php
事業内容:臨床試験支援事業、医療施設支援事業

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