サプリメントの定義と規制の行方 「機能性食品」提唱から40年、問われる日本の選択
日本の健康食品業界にとって大きな画期になるだろう。国が昨年10月から開始した「サプリメント」の規制の在り方を巡る検討のことだ。機能性表示食品のサプリに生じた健康被害問題を背景に始まった検討の結果は、今年中に取りまとめられる見通し。定義はどうなるのか、GMP(適正製造規範)や健康被害情報の報告は義務化されるのか──検討結果は健康食品やサプリに関わる事業者全体に影響を及ぼすことになる。
紅麹サプリ事件後の規制強化、そして残された課題
日本の食品安全に負の歴史を刻むことになった小林製薬「紅麹サプリ」健康被害問題。2024年3月22日に明らかになり、複数の死亡事例も報告されたこの問題を受けて政府は、当該サプリの属性であった機能性表示食品に加え、特定保健用食品に対する規制を強化した。具体的には、国が定めた制度に基づく両食品に対し、消費者等から寄せられた健康被害情報を行政に報告することの他、両食品のうち錠剤やカプセル剤など、いわゆるサプリメント形状の加工食品の製造・品質管理にGMP基準の遵守を事業者に義務付けた。
「今回の事案を踏まえたさらなる検討課題」。健康被害問題の対応に当たった政府の関係閣僚会合は、24年5月末までに取りまとめた対応方針の中で、そのように積み残し検討課題があることを示しつつ、次の方針を掲げていた。
「食品業界の実態を踏まえつつ、サプリメントに関する規制の在り方、許可業種や営業許可施設の基準の在り方などについて、必要に応じて検討を進める」。その上で、「平成30年の改正食品衛生法において施行後5年(令和7年6月)を目途とした検討規定が設けられている」としていた。
この方針を踏まえ、昨年10月から開始されたのが、サプリ規制のあり方検討だ。2018年に改正、2020年に施行された改正食品衛生法の施行状況を踏まえた見直し検討と合わせて進められている。現状では法的拘束力の伴う規制がない健康食品(サプリ)、その中でも機能性表示食品や特定保健用食品の範囲外にあるものをどう規制し、安全性(品質)を確保するか。それが最大の論点だ。
検討の舞台は、食品衛生行政を所管する厚生労働省と消費者庁にそれぞれ設置されている審議会。具体的には、食品衛生行政のうち監視行政を担う厚生労働省の厚生科学審議会食品衛生監視部会、また、24年の組織再編で食品衛生行政のうち基準行政を新たに所管することになった消費者庁の食品衛生基準審議会新開発食品調査部会である。
検討事項としては、①サプリの定義、②製造管理(GMP)のあり方、③事業者による健康被害情報の報告、④営業の許可・届出──の大きく4点が挙げられており、両省庁で密接に連携しつつ、①と②は消費者庁、③と④は厚生労働省がそれぞれ所掌する検討体制が敷かれた。検討結果を取りまとめる時期については現在、2026年4月「以降」とされている。
サプリとは何か──定義を巡る議論
4つの検討事項の中で最も重要なのが定義だ。通常の食品とは異なる形状や内容物(化学的合成品や濃縮物など)を特徴とし、消費者からは健康の維持・増進が期待されるサプリの「役割」や「意義」、さらには「リスク」といった本質的な議論を経た上での定義付けが求められるが、いずれにせよその結果がサプリの規制のあり方を決めると言っても過言ではない。
行政用語上では「いわゆる健康食品」として一括りにされている機能性表示食品などの保健機能食品から、それ以外の「その他のいわゆる健康食品」まで、まさに横串を刺すようなかたちでサプリを定義し、「これはサプリ、これはサプリではない」と誰もが迷いなく選別できるようにする。それができなければ、そもそもの目的である規制の実効性が失われることになる。
もっとも、定義の検討、策定は一筋縄とはいかない。定義とGMPのあり方を所掌する消費者庁の新開発食品調査部会が昨年11月27日に開いたキックオフ会合では、サプリの製造やGMPに関係する業界5団体からヒアリングを実施した。そのうち定義について、業界や部会委員の意見を受けた部会長の見解を同庁食品衛生基準審査課長は次のように要約、整理している。
「形状だけではない。含量、風味、安全性、有効性、品質など各要素を勘案した上で、科学的、法律的、そして消費者目線の視点から総合的に検討する必要がある」。(25年12月19日開催の内閣府・消費者委員会の本会議で同課長がサプリ規制のあり方検討の検討状況を説明した際、部会長の発言をこう要約、整理した)。
錠剤やカプセル剤など、医薬品的な形状をもってサプリを定義付けるのは簡単だろうが、部会長は「形状だけではない」と指摘した。これは部会委員全体の総意ともいえる。そのため、少なくとも現時点では、機能性の発現を意図し、生理活性を持つ成分やそれを含む原材料を配合した「サプリ的」なグミなど菓子類もサプリに包含させる定義が設けられる可能性を排除することは困難だ。また、「各要素を勘案した上で総合的に検討する必要がある」との指摘も重い。健康食品との関連が疑われる健康被害情報を検証する医学者でもある部会長は、熟議なき検討・議論に終わらせない姿勢を明らかにしたと言える。
40年前の厚生白書が示した「機能性食品」の概念
サプリメントとは何だろうか。規制のあり方検討に直接関与できないにせよ、健康食品に関わるすべての事業者が考えるべき大きな命題だ。サプリにせよ、健康食品にせよ、日本には法律上の定義が存在しないが、今から40年近く前、国がその概念を1980年代に提示していたことを忘れないでおきたい。厚生省(現・厚生労働省)が取りまとめた昭和62年(1987年)版の厚生白書には、「機能性食品」という名称を使いながら以下の概念が示されている。

「生体防御、体調リズムの調整等に係る機能を、生体に対して十分に発現できるように設計された日常的に摂取される食品」──要するに、3つある食品機能のうち三次機能(生体調節機能)の発現を意図して開発・製造された食品であるという整理であり、白書では、そうした食品(機能性食品)は、「日常の食生活を通じての、より積極的な健康の増進に寄与するものと考えられる」としつつ、「十分な評価を受けることなく商品として流通することは保健衛生上の問題がある」と指摘している。
こうした期待と懸念が、食品の三次機能に着目し、その機能の表示を、安全性も含めた科学的根拠に基づき認める特定保健用食品制度の創設(1991年)につながった。そして世界に目を転じると、1994年に米国で世界初のサプリ法(ダイエタリーサプリメント健康教育法=DSHEA)が制定され、それを追うように欧州等の諸外国がサプリの法制度を構築していった。
しかし日本は、「パイオニア」の立場であるにもかかわらず、本質的には機能性食品であるサプリや健康食品に法的な定義さえ与えぬまま現在に至る。今年から審議が本格化するサプリの規制のあり方検討の出口に、独立した法律を制定するような一足飛びの結論はないのだとしても、「機能性食品」の概念を打ち出した厚生白書にまで立ち返った議論を期待したい……
(続きをお読みいただけるのはWNG会員のみです。残り約900文字。全文の閲覧は「会員ページ」の「月刊誌閲覧」内「Wellness Monthly Report」2026年1月号(第91号)12~13頁から)
【石川太郎】
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:消費者委員会、検討の行方注視
:取りまとめは2026年4月以降に
:業界・消費者団体からヒアリング











