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行政は原材料事業者に何を求める 【インタビュー】3.11通知を所管する消費者庁に聞く

 機能性表示食品のサプリメントに生じた健康被害問題以降、行政はサプリの原材料をどのように捉え、その事業者に何を求めているのだろうか。食品安全に関わる食品衛生基準行政をはじめ、天然抽出物などを原材料とする錠剤やカプセル剤などの形状を持つ食品、すなわちサプリの安全性確保に向けた事業者の自主管理指針である通称「3.11通知」を所管する消費者庁食品衛生基準審査課の髙江慎一課長に聞いた。

安全性自主点検、国民に対する説明責任

──3.11通知の別添1には、サプリメントの原材料の安全性に関する自主点検の考え方と、自主点検の手順(フローチャート)が示されています。これを使う原材料事業者に何を期待していますか。

髙江 その原材料が安全であることの説明責任を国民に対して果たせるようにしていただきたいというのが別添1の趣旨です。端的に申し上げるとそういうことになります。食品ですから医薬品のように全てについてGLP(優良試験所基準)に基づく動物試験を実施して安全性を確認しなければならないという話ではありません。しかしそうは言っても口に入れるものなのですから、食経験を調べたり、文献検索を行ったり、必要に応じて試験を実施したりすることを通じて、食品として安全な原材料なのであることを確認した上で国民に届けていただく必要があります。そうした趣旨を踏まえ、原材料事業者の皆様には対応していただきたいと考えています。

──法律でも法令でもない通知に法的拘束力はありません。通知の要請を実行するかどうかは事業者の任意です。3.11通知に実効性を持たせるために取り組んでいることは?

髙江 おっしゃるとおり事業者の任意で罰則もありません。ですから行政のやれることは、通知を出すこと、そして通知に取り組む事業者が取り組みやすい環境を作ること。3.11通知では、製造管理・品質管理(GMP)に関する自己点検表であったり、Q&Aだったりを充実させています。また、周知すること。業界団体に属していない事業者も少なくないようですから、3.11通知を知らないという場合も多いと推測しています。ですから、業界団体との対話のチャネルをしっかり持って、業界に向けて説明したり、周知したりすることが重要だと考えています。

──行政が通知でやれることはそのように限定的にならざるを得ない。

髙江 通知には限界があります。ですが、機能性表示食品に取り組む事業者の皆様は、3.11通知の趣旨にのっとり、安全性の確保に取り組んでいらっしゃると理解しています。機能性表示食品のGMP基準(機能性表示食品のうち天然抽出物等を原材料とする錠剤、カプセル剤等食品の製造又は加工の基準)の骨格はそのまま3.11通知のGMP指針(別添2)ですし、別添1についても、義務化こそされていませんが、ほぼそのまま告示化されているからです。(編集部注:届出等に関する告示の様式7号「自己点検等報告」の項において「機能性表示食品のうち天然抽出物等を原材料とする錠剤、カプセル剤等食品の原材料に関する自主点検及び製品設計の基準」として告示化されている。努力規定)。

──任意とはいえ3.11通知は食品衛生法に基づく通知です。その意味で、サプリメントに関わる事業者は、機能性表示食品や特定保健用食品であるか否かに関わらず、原材料から最終製品まで3.11通知に対応しているのが当然ではありませんか?

髙江 事業者のスタンスとしてはそのとおりだと思いますし、実際、3.11通知の対象食品は機能性表示食品や特定保健用食品に限りません。錠剤、カプセル剤等食品の全てが対象になっています。ただし、通知なのです。

原材料GMP、「望ましい」とあるけれど

──3.11通知のGMP指針は、原材料の製造・品質管理に関して、「本指針に準じた製造工程管理を行うことが望ましい」と弱い書きぶりにとどめています。ですが行政の本音は、「原材料もGMP管理を行うべき」だと私は理解しています。その上で伺います。3.11通知が「平成17年通知」と呼ばれていた時代からGMP指針を踏まえた規範に基づき第三者認証を行っている民間の取り組みをどう評価しますか。

髙江 国の立場から強制的に民間認証の取得を推奨するようなことはありません。ただ、組織を作る、文書を作る、それに従って製造管理と品質管理を行うなどといったGMPの基本の「キ」ができていないにもかかわらず認証が与えられるはずはない。その意味で、認証の取得はレベルアップに必ずつながると思います。今後、サプリメントのGMPについて議論を進めていく中で、そうした話も俎上に載せられると良いのかもしれません。

 民間の自主的な取り組みが実際に実効性を持ってまわっていき、それが制度につながっていくということは、どの分野にもあることだと思います。第三者認証を制度化することも不可能ではありません。最近では、医薬品医療機器等法に基づく医療機器に第三者認証制度が導入されました。ただ、第三者認証の制度化は、法改正であったり、基準の策定であったりが必要です。とても壮大な作業になります。

──小林製薬が起こした健康被害問題を受け、サプリメントの規制の在り方が検討されることになりました。検討事項としては、その定義、製造管理等の在り方、事業者による健康被害情報の報告、営業の許可・届出の検討が示されています。厚生労働省と消費者庁、それぞれの審議会で検討を進めるわけですが、3.11通知全体を法的拘束力のある法令に引き上げ、全てのサプリメントに対してGMPなどを義務付ける可能性はありますか?

髙江 まずは現状をきちんと把握しなければなりません。その中でどのような意見が出てくるか。さまざまな意見が出てくるはずですが、それ次第です。私自身は熟議が非常に大事だと考えていて、拙速に決める話では全くないと思っています。ですから現時点では義務化するとも、しないとも言えないのですが、その可能性はあると思います。

 法律や法令で新たな義務を課すという時、問われるのは立法事実です。小林製薬の紅麹関連製品に事案は実際に起こったことです。一方で、同様の事案が他にも起きているのかといえば、あまり聞いたことがありません。他方で、生じた事案は小林製薬に固有の問題であったのかといえば、そうではない。異物の混入であったり、原材料を取り違えたりなど、規格どおりの製造に失敗したときに起こり得る問題です。だからサプリメントは製造管理、品質管理が非常に重要で、そのためにはGMPで管理する必要があるとされているわけです。そうしたことを考えれば、機能性表示食品や特定保健用食品以外に対しても、という可能性はあり得るということになります。

熟議なき規制は消費者の選択肢減らす

──髙江課長はサプリメントの定義をどんなふうに考えていますか? 私は、食の三次機能(生体調節機能)を意図して開発、製造された口に入れるものがサプリなのではないかと思っているのですが。

髙江 概念的にはそういうことだろうと思います。ただ、そういうことを誰もが理解できる表現形でどう表現するか、かつ、法令としての言いぶりをどうするか。そこがかなり難しい。とはいえ、これはサプリ、これはサプリではないときっちり仕分けることのできる定義が必要だと考えています。そうしないと行政も事業者も混乱してしまいます。

──サプリの安全性など品質を確保するためにはまず、原材料の品質を確保する必要があると思います。昨年の健康被害問題の原因も、原材料にあったはずです。原材料の製造・品質管理にGMPを義務付けることに対してどのような考えをお持ちですか。

髙江 先ほど申し上げた立法事実と密接に関係してくると思います。また、繰り返しになりますが、まずは実態を押さえる必要があります。輸入原材料が多いと聞いていますが、規制を厳しくしすぎると、海外の良い原材料が日本に入って来なくなるおそれがあります。そうしたことからも規制というものは、実態を押さえた上で適切な形で導入しないとならないのです。

 消費者庁は産業を考える立場ではありませんが、多くのステークホルダーの意見を吸い上げながら、熟議していく必要があると私個人は考えています。去年の事案を受け、自主努力の機運が業界で高まっている中で、規制を不適切に導入してしまうと産業がシュリンク(縮小)する。その結果、消費者の選択肢が減ってしまう。そうならないよう、皆で議論し、さまざまな意見を上手くまとめていきたいと思っています。

──ありがとうございました。

【聞き手・文:石川太郎、取材日:2025年11月14日】

【プロフィール】髙江慎一(たかえ しんいち):1994年厚生省入省。2015年医薬品医療機器総合機構(PMDA)医療機器審査第一部長、2020年大臣官房厚生科学課研究企画官、2024年厚生労働省医薬局医療機器審査管理課長を経て、2025年7月から現職。

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